ついにやってきた……
登場キャラクター紹介
・ジュウハ
人間族、男、マーハティ領の軍師。かつて王城に仕えていた文官、戦争が始まるとディアスの片腕として活躍、戦後はマーハティ領に。色々振り回されつつも活躍中
数日が経って……エリーとジュウハがイルク村にやってきた。
ジュウハはマーハティのバナーを下げた立派な馬車と3台の荷馬車でもってやってきていて……その3台には獣人国に贈る詫びの品などが入っているらしい。
更には獣人国に帰還したいと望む何人かも同行しているようで……この何人かを探すのには結構な苦労をしたようだ。
ジュウハはこの計画を発表した当初、誘拐されて奴隷にされて……その被害者であれば国に帰れるとなったら大喜びで声を上げてくれると思っていたらしいが、実際は0人だったそうだ。
内乱でエルダンが勝利し、奴隷から解放され、その詫びというか補償として店や畑、それなりの金銭が与えられて……店や畑を維持するための知識や道具も与えられた。
それからしばらくは不安定だったが、今では何もかもが安定して景気も良いとなって……それなりに乱れている獣人国にわざわざ帰りたいとは思わなかったとかなんとか……。
故郷かもしれないが、それはそれとしてこちらでの暮らしがあるし……奴隷にされた人間を獣人国がどう迎えてくれるかも分からない中で、全てを捨ててまでの帰還は望んでいないようだ。
結局今回同行した面々は、ただの里帰り……一時的に帰国し、両親や親戚に顔を見せるだけのつもりで同行したようで……ジュウハにしては珍しい誤算となったようだ。
それだけジュウハが上手くやった結果というか、皆がマーハティ領に残りたいと思う程、上手く治めた結果なのだろうから、なんとも皮肉な話ではあるなぁ。
「は~……草原の風は爽やかだとは聞いていたが、こいつは良いなぁ。
夏の間はずっとこっちに来ても良いくらいだ……マーハティは良いとこなんだが、あの暑さだけはどうにもならんからなぁ」
クラウス達に護衛されながらやってきて、イルク村の広場へと到着するなり馬車から降りて背伸びをし……腰をひねりながらこちらにやってきたジュウハが、そんな声をかけてくる。
メーアバダルの夏はとにかく爽やかな風が吹いてくれるので、夏らしく暑くはあるが十分耐えられるもので……夜にはよく冷えるものだから寝苦しいとかもなかったりする。
「その代わりにイルク村には遊べるような場所はないぞ。
せいぜい酒場くらいのものだが……その酒場も静かに楽しむための場所だ、ジュウハ向きではないだろうな」
ジュウハを出迎えながらそう返すと、ジュウハはやれやれと首を左右に振ってから近付いてきて、握手を求めてくる。
何か狙いがありそうな表情をしているジュウハに訝しがりながらも応じるとグイッと腕を引っ張ったジュウハが小声を投げかけてくる。
(マーハティでもそうだったように、こっちでも仲良しアピールはしておかないとな。
随分と人数が増えたようだし、これも外交だと思って笑顔を浮かべやがれ)
そういうことならと懸命に笑顔を作っていると、ジュウハは大きなため息を吐き出して……それから握手をほどき、私の肩をポンポンと叩いてくる。
それからジュウハは、
「イルク村の皆さん、マーハティ領からやってきたジュウハという者だ!
少しの滞在となるがよろしく頼む! とりあえずは腹が減ったな! 何か食うもんはないか!」
と、そんな声を上げてから両手を広げ……ジュウハの出迎えのために広場に集まった皆に笑顔を向けて……華麗かつ丁寧な一礼を皆に披露していく。
その途中、ピゲル爺を前にしてジュウハは、ジュウハにしては珍しくビクリと肩を震わせ硬直し……それでもなんとか立て直し、しっかりと一礼をして見せる。
それから広場に集まった面々の中から、事前に知っていたのか何らかの方法で察知したのか、代表者や各種族の族長と言葉を交わしていく。
ジュウハがそうこうするうちに、ジュウハに同行した面々もまた挨拶を始めて……同時にアルナー達が歓迎のための場を整えていく。
広場に絨毯を敷いて机やクッションを並べて……机の上に料理を並べて、ワイン樽を持ってきて。
エリーが隣領から色々買い付けてきてくれたこともあって、歓迎の宴はかなりの規模になるようで……結構な人数のニャーヂェン達が手伝いのために奔走してくれている。
犬人族もゴブリン族も、ペイジン達も子供達も婆さん達も……何なら鷹人族までがクッションの配置なんかを手伝ってくれる。
そんな光景をジュウハに同行した獣人の面々が楽しそうに見つめていて……獣人達にとっては心が弾む光景なのだろうなぁ。
客人がそうやって楽しんでくれていることは私達にとっても嬉しいことで、私もまた笑顔になりながら手伝おうとする―――が、そこで誰かが私の腕をグッと掴んで制止してくる。
「お父様……お父様には領主の仕事があるから、こっちに来てちょうだいな」
その声はエリーのもので、正装姿のエリーが私のことをグイグイと竈場へと引っ張っていく。
「お、おぉ……料理の手伝いをした方が良いのか?」
「いえ、料理の切り分けを皆にして頂戴な、領主として皆にごちそうを振る舞う……そうやって立場を明確化するの。
料理が豪華な程、権威が高まるっていうか、お父様とメーアバダルの力を見せつけられるから、ここはしっかりやるわよ。
イービリスさん達に頼んで、捕まえるのが難しいらしい、おっきな魚とおっきなエビ、それとマーハティで買い付けて氷で冷やして持ってきた牛肉を用意したから、それをこれから皆の前で切り分けて頂戴な。
どの料理をどう切り分けるのか……どの部位が美味しいのか、美味しい部位を誰に振る舞ったら良いのか、大事なことをしっかり覚えた上でお願いね」
私の問いにそう返したエリーは、竈場の中へと案内してくれて……そこでは婦人会の面々が懸命に調理を進めていた。
大きな魚というのは本当に大きな魚で、リンゴ魚なんて目ではないくらいに大きく太っていた。
既に頭は切り落とされているようで、切断面は真っ赤……それこそ牛肉のような色をしている。
エビは……大きなエビだった、少しだけ以前戦ったザリガニに少し似ている気もする。
そして牛肉は相当質が良いのだろう、濁りのない真っ赤な肉が肉汁を滴らせている。
魚は香辛料揚げ、エビは煮込みスープ、牛肉は岩塩焼きにされていて……うん、確かに良い料理ばかりだ。
エリーは帰ってきたばかり、だというのにそれらの料理を知っているのは、事前に打ち合わせしていたか、鷹人族に手伝ってもらって連絡を取り合っていたか……その両方なのかもしれないな。
「予想していなかった流れではあるけど、これは良い機会……メーアバダルの外交官として気合入れて頑張るから、お父様も手伝ってちょうだいな。
料理を振る舞ったら食事を始めるための挨拶、その後は獣人国に行く面々を労って……帰国する子達にはお父様なりの慰撫の言葉をかけてあげてちょうだい。
……今回の件に関してお父様が詫びる必要はないと言うか、下手に詫びてしまってはいけないから、精一杯慰撫する……これに留めておきましょう。
獣人国に行ってもメーアバダルとしての詫びをするつもりはないから、お父様もそのつもりで。
まぁその辺りはペイジンさん達が上手くやってくれるでしょ……あ、ペイジンさん達にはたっぷりお礼の言葉をかけておいてね、今回はかなりの骨折りをして頂くことになるんだから」
……と、そう言われて私は、いきなりそんなに一度に言われてもと怯みつつ、まずは料理のことを覚えるために、それぞれの料理の前へと足を進めるのだった。
お読みいただきありがとうございました
次回はディアスとジュウハのあれこれです
そしてお知らせです
まずコミカライズ最新13巻が発売となりました!
書店などで見かけた際にはチェックしてください
そして今月の7月19日にアース・スターノベルの10周年イベントが秋葉原で開催されるのですが
そこでイベント衣装のアルナーのグッズが販売されることになりました!
アクリルスタンドや缶バッジなどがあるそうです
物販は無料で入場出来るようなので、興味ある方はチェックしてみてください
またアース・スターノベルの他作品のグッズなども販売されるようなので、気になる方はアース・スターノベルのXアカウントをチェックしてみてください!




