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領民0人スタートの辺境領主様  作者: ふーろう/風楼
第十八章 華麗なる交易卿

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冒険と運命

ペイジン商会についてのざっくり解説


獣人国で活躍している商会

紆余曲折を経てディアス達に対し非常に友好的な態度を示すようになり、ディアスに賭けたことで儲けを積み上げている。


商会長はフロッグマンのペイジン・オクタド


その子供に

ペイジン・ド

ペイジン・レ

ペイジン・ミ

など


このまま何もなければペイジン・ドが次期商会長

その後はペイジン・ドの嫡男、ペイジン・ドシラドが継ぐ予定


 

――――ディアスに指示されたことを紙に書き込みながら エリー


 

(お父様も心配性ねぇ……メーアバダルにお馬鹿なことをする子なんていないのに……。

 やってきたばかりのニャーヂェン達への不安も、結局は杞憂だったものねぇ。

 アルハルちゃんや族長がいてくれるからか問題らしい問題が起こることはなくて、環境が変わったことで数人が体調を崩したくらいのもの。

 他の子達は問題を起こすなんて考えられないくらいにお父様に忠実で……きっと何もしなくても問題ないのにねぇ)


 なんてことを考えながらもエリーは、紙に領民達を満たすための、数々の食材の名を書き記していく。


 メーアバダルが犯罪行為と無縁なのはディアスの統率力のおかげもあるが、何よりも犬人族達を早い段階で領民に出来たことが大きいだろう。


 ディアスに極めて忠実で、犯罪どころか指示や命令に逆らったり嫌がったりするような様子すらなく、そんな犬人族達が絶えず見回りをしているのだから、犯罪など発生しようがない。


 何度か盗賊がやってくるなんてことはあったが、それもすべて撃退されていて……海や隣国からの来訪者も至って温和で友好的。


 ……普通であれば多少の喧嘩騒動くらいはあるものなのだけど、それもほとんどない。


 あって子供達の喧嘩くらいのもので……それもセナイとアイハンが落ち着き始めたことにより減り始めている。


 姉妹喧嘩もしなくなった、小さな子達の面倒をよく見るようになった……結果子供の喧嘩さえもが減っていて……平和にも程があった。


(少しくらい何かあった方が安心すると言うか、何もなさすぎて不気味と言うか……。

 まぁー、生活苦なんてことはないし、困ったことがあっても相談さえしたらすぐに解決してくれるしで、騒動を起こす理由がないっていうのは納得は出来るんだけどねぇ。

 酒の席の喧嘩とかもないのは……うぅん、お父様の威圧感のおかげなのかしら?)


 更にそんなことを考えるエリーは、どこか満足げに周囲を見回しているディアスへと視線をやる。


 ただディアスを前にしただけなら何も問題はないが、いざ叱られたりすると身がすくむ。


 子供の頃どうしようもなくイライラした時期があって思わず……八つ当たりのような形でディアスに拳を振るおうとしたことがあったが、あの時の恐怖と言ったら。


 ディアスが怒っている訳ではないのに、恐ろしく体が動かなくなり……自分の体が石になってしまったのかと思う程だった。


 あれを一度でも経験したなら、逆らおうなんて気にはならないだろう。


 逆に言うとそれだけ頼りになる存在であり、側にいるだけで安心出来る存在である訳なのだけども……。


 逆らうのではなく、側にいるとかディアスのために働くとか、そういったことをしていると心が満たされて……なんとも言えない温かい気分になることが出来るのがディアスという人間だった。


(多分だけどセナイちゃん達もそれを感じ始めている。

 落ち着いたからか慣れてきたからか、お父様との距離が縮まっているように見える。

 村の中でふと出会った時に、お父様の腕にぶら下がってみたり、肩の上に立ってみたり……あまりしなかったことをするようになってきたもの。

 時が経ったことで家族として距離が縮まったのもあるのだろうけど、心のどこかであの安心感を求めているのもあるのでしょうねぇ)


 そして恐らく犬人族は、その安心感を誰よりも強く感じ取っている。


 それが忠実さに繋がっている、ディアス以外の命令をあまり聞かないことにも繋がっている……犬人族はきっとディアスが放つ何かを感じ取る能力が他種族より優れているのだろう。


(……そう言えばお父様だけじゃなくてベン伯父様にも同じ態度だったわねぇ。

 そうすると神官としての技術なのかしら? お父様が孤児をまとめられたのもそのおかげなのでしょうねぇ)


 孤児をまとめあげるというのは、相応の大変なもので、普通はそれ相応の問題に直面するものだが……ディアスがまとめた孤児達にそういった問題はなかった。


 真面目に働き、悪の誘惑に負けることなく、街の人々に好かれて……ギルド設立の際には、多くの大人達が協力してくれた程だ。


 本当に不思議な力があるものだ……と、そんなことを考えていると、エリーの隣にイービリスがやってきて声をかけてくる。


「エリー嬢、相談があるのだが、少し良いだろうか?」


「えぇ、もちろん構いませんよ、何かご注文ですか?」


 と、エリーが返すとイービリスは、どこか申し訳なさそうにしながらエリーを見上げて、しっかりと口を開く。


「いや、そうではなくて……実はな、また冒険をしたいと思っているのだ。

 あの樹液玉が有益なものだと聞いて、もしかしたら世界にはまだまだ有益なものがあるのではないかと思い始めた。

 我らがなんでもないと思っていたものも、陸上の生活ではそうではない可能性があり、また洞人族のような職人の手に渡れば驚く程の変化をするかもしれない。

 ……それはとても心が弾むことだ、我らが世界を変える礎となれるかもしれないのだ、未知を開拓し、歴史に名を残すことが出来るかもしれない……そんな冒険こそが海に住まうゴブリンの本懐だ!

 メーアバダル公と出会った時のような感動をまた味わいたいと思っている……!!」


「それはとても素敵なお話ですね……それで私にどんな頼み事を?」


「うむ……冒険には時間がかかるものだ、未知の海域や島々を冒険するのだから相応の危険もある。

 しかし今の我らにはメーアバダル公のおかげで稼ぎの良い仕事があり……恥ずかしい話だが、冒険を選びたがる若者が少ないのだ。

 我は別に稼ぎがなくとも構わない……自分1人で生きていける身で、既に過分な名誉を手に入れているからな。

 だからと言って後に続く者達にも同じ道を強いることは出来ない……誰もが我のように前向きで無謀で、夢に焦がれてはいないからだ。

 それでもと後に続く勇気がある者を待つのが正解なのか、後に続く者達を支援してやるのが正解なのか……先程の甘味への反応を見て確信したが、後者が正解なのだろう。

 そこでエリー嬢に、なんらかの形で冒険の支援をしてはくれないかと、甘味のような報酬の都合をつけてはもらえないかと、そんな相談をしに来たという訳だ。

 もちろん無償という訳ではなく、その見返りは冒険で見つけた宝物の一部……ではどうだろうか?」


 そう言われてエリーは、即座にイービリスが言いたいこと望んでいることを理解し……同時にこの話がどれだけの利益になるかという勘定をし始める。


 相手を待たせることなく素早くかつ正確な計算をし……そして目を輝かせ、イービリスへと言葉を返す。


「それはとても素敵なお話ね!

 海の開拓が始まれば新たな海路が見つかるかもしれない、多くの海図が手に入るかもしれない……そして樹液玉のようなお宝が手に入るかもしれない。

 賭け事のようなお話にはなるけども、それに乗りたいと思う商売人は多いはず……自分が冒険に出る勇気はなくとも、その夢を誰かに託すことは出来るから。

 自分の資産を勇者に預けるという、投資という名の冒険は出来る……というか、それこそが商人の本懐。

 ……きっと私以外の商人もそのお話に乗ると思うわ……いえ、私以外の商人を強引にでも巻き込むべきなのよ。

 そうやって皆で投資をすることでリスクを分散して、お宝の収益も分散……その収益が大きければ、冒険への投資という新しいお金の流れが出来上がるかもしれない……!

 冒険の出発地となるこの荒野にも多くのお金や人、物資や船が集まるかもしれない……かもしれないばかりのお話だけども、だからこそ夢がある……!

 うっふっふ、とりあえずエルダンさんとペイジンさんは確定ね……あとはギルドを巻き込めば、とりあえずの初期資金は確保出来ると思うわ。

 冒険に必要な費用と、冒険の間のお賃金……それらを私達が保証し、イービリスさん達が冒険をする……これは必ず成功する……いえ、絶対に成功させてみせるわ……!!」


 と、そう言って拳を握るエリーを見上げてイービリスは、まさかここまで乗り気になってくれるとはと驚き目を丸くし……それからすぐに表情を切り替えて「うっふっふ」と笑い続けるエリーの隣で「ギャッハッハ!」と大きな笑い声を上げる。


 それを受けてまたエリーも笑い……しばらくの間、2人で笑い声を上げ続けるのだった。



――――一方その頃、獣人国の木製屋敷で ペイジン・ド



 この日は休日、久しぶりに朝から自宅でゆっくり出来るとあって、ペイジン・ドはご機嫌だった。


 朝からしとしと静かな雨が降り、肌が潤い空気が美味しく……庭を見ることが出来る書斎で何も考えず何も持たず、ただただ濡れる庭の光景を見ているのがたまらなく楽しい。


 商売は順調、ディアスに賭けたことでペイジン商会は勝ち続け……少し勝ち過ぎたからと自重を始める程に順調だ。


 他の商会に気を使い、いくらかの商機を譲ってやり……それでも唸る程の儲けが転がり込んでくる。


 ゲッコゲコゲコと潤った喉でもって笑い声を上げていると……そこに愛する我が子がやってきて、ちょこんと顔を出して声をかけてくる。


「おとん、聞きたいことがあるんだけど良イ?」


 練習のつもりなのか王国語でそう言ってくるドシラドに、ペイジンは「よかよか」と笑いかけて手招きをする。


「えっとね、思ったんだヨ、色々考えてて気付いたんだヨ。

 セナイちゃんとアイハンちゃん、故郷では災厄の子って言われてたんでしょ? デモデモ、メーアバダル公のとこには災厄来てないなっテ。

 だけど森人族の視点でみるとやっぱり災厄の子だったと思うんだけどどう思ウ?」


 そう言われてペイジン・ドは目を丸くし……顎に手を当ててから唸り声を上げる。


「……むぅん、確かに、ドシラドの言う通りかもしれんでん。

 誰が災厄どうこうと言い出したことかは知らんだっどん、あの子達がいるからと森人族達は余計な手だしをメーバダル公にしてしまい、そしてあの子達の手でもって敗北を喫することになったでん。

 ……今の凋落っぷりを見ていると災厄の子と言われるのも納得だでん」


「ね? ね? ね? そうでショ?

 とっても不思議なお話なんだけド、きっとそれがセナイちゃん達の運命だったんだヨ。

 ……凄い力を持って生まれたから、その力を活かすために活かせる場に行くための、村を追い出された事も全部が全部、運命だったんだと思うヨ。

 そしてそのおかげでうちの商会は儲けを得られていて……凄い力と運命を持ったセナイちゃん達にお礼しなきゃいけないかなって思うんだけどどうかナ?

 それにおとんは前に、災厄とかを気にしてあの子達に辛く当たってしまってごめんなさいって思ってるって言ってたから……ちゃんとごめんなさいした方が良いと思うヨ」


「……こりゃ驚かされたでん、まさかまだまだオタマジャクシが抜けないドシラドに諭されるとは……驚くやら嬉しくなるやら、おとんは幸せもんだでん。

 ……運命とかをさておいても、あの2人はこれからメーアバダル領で重要な地位につくお方……あの時のしこりを早いうちに取り払っておくか、少なくともそういった態度を示す必要があるでん……。

 その上にドシラドの言う運命とかを信じるのなら森人族の二の舞いにならないためにも、出来る限りのことはやっておくべきだでん。

 ……よし、おじい様に相談した上で、たっぷりお礼とお詫びの品を用意するでん……もちろん言い出しっぺのドシラドにも来てもらうでん、旅の支度を進めておくでん」


「わーい! また遊びにいけるの嬉しいヨ!」


 と、そう言ってドシラドはペタペタと廊下を駆けていき……それを見送ったペイジン・ドは、天井を見上げながら我が子の成長を心から喜び、幸福感を堪能する。


 たっぷりじっくりそうしたなら、膝をペシンと叩いて立ち上がり……おじい様ことペイジン・オクタドに今の話をするために、ゆっくりペタペタ廊下に出て、オクタドの下へと足を向けるのだった。


 


お読みいただきありがとうございました。


次回はディアス視点に戻ってのあれこれの予定です



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― 新着の感想 ―
ドラゴンの大量襲来とか、この世界の一般的な基準では充分災厄なんじゃないかな? この村の戦力がおかしい故に跳ね返しているだけで。
少なくとも海を冒険するだけならゴブリン族にとってはなんのリスクも無さそうだからなぁ。 基本的に海の向こうの陸地とか新大陸とか、そういう物を発見するのがまずは狙いになるのかな?
難破や食料・水不足などの制約がないゴブリン族主導の海洋探査は、おそらくこちらの世界の大航海時代以上の躍進をする可能性が大きいなぁ(^_^;)。<もちろん外敵や風土病や異種族問題にも気をつけてだけ
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