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領民0人スタートの辺境領主様  作者: ふーろう/風楼
第十七章 大きな変化

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使者のご褒美


 白ギーの出産は無事に終わった。


 今回は1頭……あと2頭が妊娠しているが、どうやら出産はまだまだ先になるらしい。


 まぁー……今までの出産が運が良すぎただけであって、早々同時出産なんてことは起きないので、こんなものなのだろう。


 アルナーが言うにはどうも犬人族は魔力で出産を制御している節があるとかで、それで同時出産となっているらしいが、そんな芸当が出来るのは犬人族達くらいのものなのだろう。


 カニスが言うには大型種にはそんなことは出来ないというか、そんな発想も無かったらしく……小型種だけの特別な力なのかもしれないなぁ。


 なんてことを考えながら一旦ユルトに戻って、アルナーが用意してくれた湯で汚れを落としながらの着替えを行う。


 メーアモドキはこれから神の使者として扱うということになっていて……以前のような態度は取れないと言うか、少なくとも出産で汚れたまま会うようなことは出来ない相手で、しっかりと身支度をしてから、メーアモドキが現れたという神殿へと向かう。


 メーアモドキもちゃんとその辺りのことを分かっているのか、神殿の前に神々しいまでの光を放ちながら現れたんだそうで……随分とまぁ、手の込んだことをしてくれるものだなぁ。


 なんてことを考えながら神殿へと到着すると……神殿前の門の左右に鎮座するメーア像の間でふんぞり返るメーアモドキの姿があり、一体何があったのか、メーアモドキの前に跪く、ソマギリとソマギリの従者……老齢の男と、スーリオ達の姿がある。


 猪人族のグリンに至っては、頭を地面にこすりつけての平伏までしていて……いや、本当に何があったんだ。


 そんなソマギリ達の周囲にはソマギリ達を真似しているのか、跪いている犬人族の子供達の姿もあるが、跪いたまま微動だにしないソマギリ達とは違って犬人族達はふざけ半分というか、どこかこの状況を楽しんでいるようにも見える。


 まぁ、実際楽しいのだろう……子供達にとってはこの状況も、新しくやってきた仲間と一緒にやっているお遊び感覚であるらしい。


「あー……待たせたようだな?」


 この状況に割り込んで良いものか悩みながらそう声をかけるとメーアモドキが、ふんすと鼻息を吹き出してから言葉を返してくる。


「本当に待たされました。

 ……とは言え、事が出産ということなら仕方ないとは思いますので、気にしなくて良いですよ。

 ……これだけ立派な神殿でもって敬われるのなら悪い気はしないというものです。

 あなた達の言う大メーア様も、この神殿のことは大変お喜びです、これからも我が子らとこの神殿を大切にするように。

 ……で、今日やってきた理由は分かっていますね? 先日のドラゴン退治の褒美なのです……が、倒しすぎです、いくらなんでも倒しすぎです。

 どんな褒美を下賜してやったら良いのか、困ってしまうではないですか」


「……えぇっと、倒し過ぎず大メーア様のために残しておいた方が良かったのか?」


 そんなことを言われても困ってしまうというか、どう返したら良いか分からなって、とりあえずそんな言葉を返すと、メーアモドキはため息を吐き出し、呆れ混じりの声を返してくる。


「いいえ、あの方の力を温存出来たことは喜ばしいことで、神殿の件も合わせて相応の褒美をやりたいのですが……ここまでされてしまうとねぇ。

 ……逆に聞きますが、何か欲しいものはないのですか? 多少の欲深も今なら許してあげますよ」


「そう言われても……なぁ。

 ……うーん……そういうことならあの白い草をたくさん生やして欲しい、とかになるかな?

 あれはメーアにも馬にも他の家畜にも喜ばれるし、鬼人族の皆にも喜ばれるしで、増えたなら増えただけありがたいのだが……」


「ああ、あれね、別に構いませんよ。

 ……ただ、今回は数が数ですから、それだけで終わりという訳にもいきません。

 他に何か無いのですか? とりあえず何でも言ってみてください……と、言いますか何か要望を出してくださらないと、こちらも困ってしまいますのでお願いしますよ」


「と、言われてもなぁ……。

 困っていることも特に無いし……そちらにどんな品があるのかも良く分からないからなぁ。

 サンジーバニーのようなとんでもない存在が山程あったとして、私はそれを知らないし、私の想像力ではどんなものがあるのか予想することも出来ないしなぁ……」


 と、私がそう言った所で、犬人族のカーリッツが両手でチャイを抱えながらこちらに駆けてくる。


 どうやらカーリッツはただチャイをここに運んだだけのようで……それをカーリッツに頼んだであろうチャイが恭しく頭を下げてからクチバシを開く。


「はじめまして、使者しゃま、鷹人族のチャイと言いましゅ。

 ドラゴン退治のご褒美の件……どうか知識を頂戴できないでしょうか。

 この世界の成り立ちや法則のついての知識があればとっても助かりましゅ」


 チャイは少しずつ達者になってきた喋りでもってそう言う……が、メーアモドキは首を左右に振って淡々とした言葉を返す。


「それは駄目です。

 そういった知識を求めたくば聖地に至ること……これは誰にも、大メーア様にも覆せない世界の理なのです。

 どうしても知識を求めるのであれば聖地に至り、聖典を手に……と、言いたい所ですが、小さき雛よ、あなたにはその資格がありません。

 資格がない以上は求めすぎないことです……求めずに自ら掴むのがあなたにとっての最良なのですから。

 ……ですが、その姿勢は褒めましょう、幼い身でありながら真実を求める姿はとても好ましいものですよ」


 それを受けてチャイはしょんぼりと項垂れる。


 余程にそれを知りたかったのだろう、そして知れる機会を得たと喜んでいたのだろう……それはとても痛々しく見えて、私は口を開く。


「そういうことなら、何か美味しい木の実でもくれないか? チャイは木の実が好物なんだよ。

 クルミとかをセナイ達と一緒に食べている時なんか嬉しそうな顔をしていてな……チャイ好みの木の実をいくつかくれないか?」


 そんな私の言葉は皆を驚かせたようだ。


 チャイも驚いているし、ソマギリ達も驚いているし、いつの間にか駆けつけて来たらしいゴブリン達は大口を開けてその牙を光らせていて、パトリックやフェンディア達は喜んでいるのか驚いているのか、悲鳴のようななんとも言えない声を上げている。


 そしてメーアモドキも驚いていて……顔を上に向け、左右に向け、何か考えるような仕草をしてから、口を開く。


「……草と木の実ですか。

 無欲なことは時に褒められることではありますが、この場合は無欲に過ぎると呆れてしまいますね……。

 しかしサンジーバニーなどなど、既に十分な物を与えていることもまた事実、そのような状況で更に求めろというのも確かに酷ではありましたね。

 ……分かりました、では今回のドラゴン討伐の褒美として、まず白い草を。

 そして木の実を……それだけでは足りないので小川にも豊かさを与えてあげましょう。

 ……あなた達が最近手を伸ばしている荒野と海、どちらも手が届かない場所ではありますが、あの小川を通じて間接的に豊かにしてあげることは出来ますので、そちらを。

 ……それとあなたにはこれを下賜してあげましょう、こんなにも振る舞ってあげるだなんてこと、過去にもないことなのですから、深く深く感謝するように」


 そう言ってからメーアモドキは毛の中に自らの口を突っ込み……そして以前そうしたように、そこから小さな革袋を取り出し、私の足元に投げてくる。


 その直後メーアモドキの毛が光を放ち、メーアモドキの周囲が真っ白な光に包まれ……そうしてメーアモドキはいつものようにその姿を消して、何処かへと去っていってしまう。


 それから私は足元の革袋を拾い上げ……色々と言いたげな顔で駆け寄ってきた皆の視線が集まる中、その革袋を開封してみるのだった。


お読み頂きありがとうございました。


次回はこの続き、ご褒美関連となります。



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― 新着の感想 ―
無欲というか、手に余る物を与えられても困るよねぇ。 必要なものはおいおい自分たちで作り出したりできそうだし。
玉無しとベンおじさんの共通点。 プラスチャイとの違い。 異性と縁のない、もしくは無くなったこととかかな。 神に仕える条件で多いのってその辺だけど。
要約すると…『馬鹿野郎、ちょっとは自重しろ!』ってぇー、事ですかな? 自重しろって言っても襲ってきたのは向こうだしなぁ…酷い言いようだとしか…。 @聖地に至ればこの世の理を垣間見れる…ベンおじさんが…
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