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領民0人スタートの辺境領主様  作者: ふーろう/風楼
第十五章 雪原を駆ける

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何者か

・名前が出てくる獣人国キャラ解説


・ヤテン・ライセイ

 獣人国参議、テン人族の男性、冷酷かつ冷静、傲慢でもある外交担当、失脚しつつあったがオクタドのおかげで(それとディアスのおかげで)復権。

 二人の子がいてオクタドの下に派遣中


・ペイジン・オクタド

 獣人国商人、フロッグマンの男性、ペイジン家の家長で人情家かつ善人の商人で、時には儲けよりも人情などを優先することも

 子供にド、レ、ミ、など、孫にドシラド


(※獣人国は名字が先)

(※ヤテン家の子は3人でしたが諸般の事情で2人に)




――――獣人国のある街道で ヤテン兄弟、弟



「やばいやばい、やばいって、どうするんですか、この状況!?」


 そう声を上げながら両手両足を懸命に振って街道を駆けているのはテン人族、ヤテン家の子の一人であった。


 父ライセイの命令でペイジン・オクタドの下に家宝を運ぶことになり、獣人国東方へと足を進め……そこでふとあることが気になり、とある森へと足を運び……そこで見たくはなかったものを見てしまった。


「絶対あいつらなんかやらかしちゃってるでしょーー!?」


 そう声を上げながら駆け続ける彼が向かう先は、兄が今滞在しているオクタドの屋敷だった。


 兄は今、オクタドの屋敷にてオクタドと面会をしている。


 そこで家宝をオクタドに渡し、オクタドの手である男に……今回獣人国のために尽くしてくれたらしい、隣国のある男に家宝を渡すよう依頼しているところだ。


 兄がそうする間、彼は父や兄が気にかけていた……何かやらかすのではないかと不安視していた一族が住まう森へと足を運んでいたのだが、そこで彼は本当にヤバい光景を見てしまっていた。


 よほどのことがなければ森を出ない森人が、森にいなかったのだ。


 いや、女性や老人や子供など、何人かがいるにはいたが、数が少なく……ほとんどの大人、男の狩人達が姿を消していた。


 森人達は以前から何か企んでいたようで、ライセイから目を付けられ、警戒対象として監視されていたのだが……それがライセイの立場が揺らぎ、監視の目が緩んだ途端に森を出て動き出し、何かをやらかそうとしている。


 ……獣人国内でやらかす分にはまだなんとかなるが、監視の目からの最後の報告によると森人達は、隣国へと目を向けている節があるそうで……今この時期時勢に、獣人国に住まう者達が隣国で何かをやらかすというのはとてもまずい。


 しかもその相手がこれから家宝を渡す、恩人とも言えるディアスとなると、国家間の大問題になってしまう可能性があり……その辺りのことを理解していた彼は、毎日手入れを欠かさず、美しく保っていた体毛が乱れることも構わず、配下の者達と共に街道を全力疾走で駆け抜けていた。


「あ、兄上、兄上! どうしたら良いんだよ~~~!!」


 息が切れて喉が焼け、胸や腹が傷んでもそんな声を上げ続け……そうして街道を駆け抜けた彼は、街の中へとなだれ込み……足を止めることなく兄のいるオクタドの屋敷へと駆け込むのだった。



――――避難所で セナイとアイハン



 今メーアバダル草原で行われている、野生のメーアのための取り組みは二つある。


 一つは冬の間の宿、厳しい冬の間だけ、宿としてユルトを貸し、食事などの世話をしてあげる代わりに体毛での支払いをしてもらうというヒューバートが提案した取り組みだ。


 もう一つが避難所、野生のメーアがモンスターなどに襲われた際に逃げ込める場所を用意し、そこで脅威が去るまでの間過ごしてもらうというディアスが提案した取り組みだ。


 宿の方は去年に引き続き好調で、多くのメーアが利用してくれているが……避難所の方の利用率は今ひとつで、野生のメーアが避難所を利用している所を目にしたという者は1人もいない。


 しかしそれはある意味当然のことで……モンスターはディアス達が徹底駆除しているし、セナイ達がメーアバダル防衛隊として活動をしているし、最近では狼までがメーアを襲わなくなってきてもいて……避難所を利用する必要がなかったのだ。


 では利用者が皆無かというとそうでもなく、飢えたメーアや疲れ切ったメーアが入り込んで、食事をしたり一晩を過ごしたりすることはあるようで……そんな風に極々稀に利用される避難所を見回り、掃除をしたり餌である干草チーズを補充するのも、セナイ達の……メーアバダル防衛隊の仕事となっていた。


「あ、今回はちゃんと毛がある」

「ほんとだ……ちゃんとおれいしてくれた」


 イルク村から西にある神殿から更に西にいった一帯の地下避難所の、ちょっとした仕掛けのある木製扉を開けたセナイとアイハンがそんな声を上げる。


 その扉の下部にはメーアがギリギリ通れるくらいの穴が開けられていて、その穴を塞ぐ戸はメーアの角を引っ掛けて持ち上げることで開くようになっていて……賢いメーアであればすぐに開けられるが、角のない狼が開けることはほぼ不可能となっている。


 その扉の先は木材で囲われた部屋となっていて……その部屋のあちこちにも似たような仕掛けや隠れるための穴があり……部屋の奥にはメーアのための寝床と食事場があり、食事場には干し草や岩塩などが置かれている。


 その干し草の一部が減っていて、岩塩も削れていて……それらの礼なのか、それなりの量のメーアの毛が、無造作に置かれている。


 全てのメーアがそうする訳ではない、食べるだけ食べて何も残さず立ち去るメーアも普通にいる。


 だけどもたまにお礼として毛を残していくメーアがいて……そのことを嬉しく思ったセナイとアイハンはにっこりと笑ってから、外で待機している犬人族達に声をかけ、皆で避難所の中を綺麗に掃除していく。


 掃除をしたなら鞍に下げていた袋を持ってきて、餌の補充をし……補充が終わったなら外に出て扉をしっかりと閉じ……それから馬を連れて避難所から距離を取り、犬人族の合流を待つ。


 避難所を掃除した後、犬人族達は避難所の周囲にあることをしていた。

 

 それは衛生的にあまり褒められたことではなかったのだが、その匂いを嫌って野生の獣が近寄ってこないという効果があり……避難所をメーアだけのものとするためには必要なことだった。


 そうやって犬人族達のことを待っていると……なんとも言えない違和感がセナイ達のことを包み込む。


 何かが変わった、何かの流れが変わった……誰かが変えた。


 2人同時に違和感を抱き、お互いの顔を見合うことで自分だけの勘違いではないという確信を得たセナイ達は、目を閉じて意識を集中させ……その違和感の正体を探る。


 するとすぐにそれが魔力の流れであることが分かる。


 誰かが魔力を流している、それでもって何かをごまかそうとしている……恐らくアルナーが仕掛けた感知魔法をごまかそうとしている。


 感知魔法に引っかからないよう魔力の流れを変えて、感知魔法のあるメーアバダル草原に何者かが入り込もうとしている。


 その流れの主の居場所はかなり遠方……西の西の向こう、関所の近辺であることを感じ取ったセナイ達は、すぐさまシーヤとグリに騎乗し駆け出すための準備を始める。


 するとそれを察した犬人族達が駆けてきて……近くの雪で手などを洗ってから梯子に飛び乗り、合流をする。


 それからセナイ達はシーヤとグリを駆けさせ……真っ直ぐ関所に向かうのではなく、途中にある休憩所へと足を向ける。


 街道側にあるそれは、いずれ人々が行き来するようになった際に利用してもらおうと用意されたものだ。


 屋根があり水飲み場があり、炊事場があり……ちょっとした荷物をしまっておく小屋もあり、セナイとアイハンはその小屋の中に隠しておいた予備の矢筒を回収する。


 犬人族達も領兵の装備であるマントと牙を真似て作った簡易マントと牙を回収し、セナイ達に手伝ってもらいながら装備し……戦闘準備を整える。


 それからセナイ達は犬人族のうちの1人をディアス達の下へと向かわせ、もう1人をモントの下へと向かわせる。


 関所近くで何かがあった、侵入者がいるかも……と、知らせるために。


 そうしてしっかりと準備を整えたセナイ達は、おかしな流れを作り出している魔力の下へと、警戒しながらゆっくりと近付いていくのだった。


お読みいただきありがとうございました。


次回はこの続き、セナイ達VS謎の侵入者となります

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― 新着の感想 ―
[良い点] 意外と行動に移すのが早かったね っていうか、森人の連中はなんでセナイ達のこと知ってるんだっけ?
[良い点] 自分たちの言い分しかこの世に必要はない、と思ってそうな連中だからなぁ。そっちの国でしっかり手綱付けておけよ、と叔父さんが後で乗りだしたら面白そう。 [気になる点] アルナーの感知魔法に対抗…
[良い点] 犬人族良いよな、犬並みに早くて会話も出来るから手紙で知らせる必要もないし。緊急連絡係りに向いてるな。
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