セナイ達の活躍
積極的に狩りに行くようになったセナイとアイハンは、狩りの中で様々なことを発見するようにもなった。
その一つがビクーナで……セナイ達の説明によると、ラクダというかラマとかに似た動物であるようだ。
ラマ自体も見たことはないというか、昔本か何かで見かけた程度にしか知らないのだが、それでもそっくりで……親戚か何かなのだろうなぁ。
家畜化は出来ないが特に害になる訳でもなく、草原を過剰に食い荒らしたりしない限りは手出しはせず見守ろうということになった……のだが、一度目で見ての確認がしたくなり、セナイ達がビクーナと出会ったという近辺まで足を運ぶことにした。
ベイヤースに跨り、同じくカーベランに跨ったアルナーと共に向かい……定期的に足を止めて遠眼鏡で周囲を見回す。
そうやってビクーナのことを探していると、アルナーが声を上げる。
「む……あれは狐か、最近は狐も増えた感じがするな……見たことのない毛皮の狐もちらほら見かけて、もしかしたら新種? の狐なのかもしれないな」
「ビクーナ以外にも色々な動物がやってきている、ということかぁ。
モンスターを狩っていると、こういうことも起きるんだなぁ」
私がそう返すとアルナーは、こくりと頷いてからカーベランに指示を出し、ゆっくりと足を進ませながら言葉を返してくる。
「モンスターだけでなく、あの白い草の影響もあるのかもしれないな。
あの草が生えてから虫やネズミも増えて、それらを食べる小動物も増えて……ずいぶんと賑やかになったようだ」
「虫やネズミもか? あまり実感はなかったが……」
「村で見かけたらなるべく殺すようにしているし、ユルトの中では虫除けネズミ除けの香も炊いているからな、村の外で意識して探さないと実感は出来ないかもしれないな」
「……なるほど、色々な生き物が増えているのは良いこと……なんだよな?」
「色々な毛皮が手に入り、色々な肉が食べられるのは間違いなく良いことだろう」
なんて会話をしたなら足を進め……進めた先でようやくビクーナの群れを発見する。
遠眼鏡でようやく見える距離でも一番大きな1頭……群れの長と思われるビクーナがこちらを警戒していて、かなり警戒心が強いようだ。
セナイ達に言う通りの見た目で、綺麗な毛がふわっと膨らんでいて……セナイ達の話を聞いてフランシス達がちょっとした嫉妬心を抱いていたようだが、メーアの毛質には負けている印象だなぁ。
「……警戒心は強そうだが、狼相手だと逃げ切れるのかどうか……この草原で生きていけるかは、そこが決め手になりそうだな。
肉は……少なそうで毛もそれなり、積極的に狩りたいかと言われると微妙なところだが、美味しいのなら考えても良いかもしれない」
アルナーの感想はそんな内容で……遠眼鏡なしで私と同じ光景を見ることが出来ているようだ。
相変わらず目の良さに驚かされるというか……弓矢を使って生活をしていると自然とそうなるらしいが、私が真似しようとしてもああなれる自信はないなぁ。
と、そんなことを考えていると見張りをしている1頭の様子が変わる。
急に空を気にし出して、こちらよりもそちらに警戒心を向けて……鳴き声を上げて仲間にもそのことを知らせ始める。
それを受けて私達が空を見上げるとすぐにアルナーから、
「モンスターだ、かなり高い位置、コウモリ型のように見える!」
と、声が上がる。
すぐさま私は念のために持ってきていた戦斧を構え直し、ベイヤースに指示を出しての戦闘準備に入り、アルナーも体にかけていた弓を手に取り矢を番え、カーベランを駆けさせ始める。
これが動物と動物、ビクーナと狼のような野生の世界の話なら手は出さないが、意味のない殺戮を好むモンスターが相手となれば話は別、モンスターの駆除ついでにビクーナを助けようとビクーナの群れとの距離を縮めていると……ビクーナに狙いを定めたモンスターに向かって何かが飛んでいく。
凄まじい風切り音と共にそれはぐんぐんと高度を上げていき、それが二本の矢であることに気付いた私は思わず首を傾げる。
アルナーはまだ矢を射ってはいない、そもそも弓矢は上に向けて放つものではない。
そんなことをしてもすぐに勢いが失われてしまうはず……なのだが、何故かその二本の矢は勢いを失うことなくモンスターへと迫り、一本はモンスターの胴体を、一本は翼を貫く。
直後また風切り音、次の二本が放たれたようで……その音の発生源の方へと視線をやるとシーヤとグリに跨るセナイとアイハンの姿が視界に入り込む。
今日も2人は狩りに出ていて、どこか別の場所で狩りをしているものと思い込んでいたが、私達のすぐ側で狩りをしていたようだ。
……いや、もしかしたら始祖の銀の警戒網であれらの接近に気付いてこちらにやってきたのかもしれないな。
なんてことを考えているうちに二本の矢はまたもモンスターに命中し、空からモンスターが次々に落下してくる。
それを受けて私とアルナーは落下したモンスターの下へと駆けていき……矢を受け落下しても尚、生き残っていたモンスターにトドメを刺していく。
戦斧を振るい矢を放ち……その間にビクーナ達は逃げていき、ビクーナ達の食事場は完全にモンスターとの戦いの場へと変化する。
「ディアスー!」
「あるなー!」
そしてセナイ達がこちらに向けて声を上げる。
ただ名前を呼ばれただけだが、そこの込められた意味はなんとなく分かり、私もアルナーもセナイ達が落とす魔物の処理に徹する。
セナイとアイハンは無理にモンスターを倒そうとはせずに、一定の距離を保った安全なところから矢を放ち続け、とにかくモンスターを落下させることを優先し……そうして人を前にして逃げることのないモンスター達は次々に数を減らしていく。
相変わらず逃げれば良いのにと思ってしまうが、もうそこら辺は今更だ。
そういう生物、生態であり……同情してもどうにもならない。
なんてことを考えながらモンスターの数を減らしていると、ひときわ大きな……モンスター達の群れの長のような個体が姿を見せて、こちらに迫ってくる。
あれは簡単には倒せなさそうだが……ドラゴンよりも強いということはないだろうと、戦斧を握る手に力を込めていると……今日一番の風切り音が周囲に響き渡る。
それはセナイとアイハンが放った音だった。
連続で矢を放ち、矢筒の中身がなくなっても良いというくらいの勢いでの連射をし……放たれた矢がそれぞれの軌道を描いて、モンスターへと同時に迫る。
最初に放った矢は遠回りしながら、最後に放った矢は一直線に、そうやって時間差を埋めて同時に迫る矢にモンスターは対処が出来ず……何本もの矢に同時に貫かれる。
「……弓矢という武器は、あんなことも出来るんだなぁ」
と、私がそう言うと駆け寄ってきたアルナーが、
「鬼人族の村一番の使い手でもあんな真似は絶対に出来ない、あの2人だけの天性の技だ」
と、返してくる。
そうして私とアルナーは、落下していくモンスターを眺めながらセナイとアイハンを褒めるため、そちらへと馬を駆けさせるのだった。
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次回はこの続き、さらなる防衛隊のあれこれです




