色々と話し合い
・現在イルク村にいる犬人族達
・マスティ氏族(小型種)
族長マーフ、体が大きく力が強く、主に領兵として活躍、直接戦ったり、よく効く鼻で偵察したり、荷車を挽いたりなどなど活躍は多岐にわたる
・センジー氏族(小型種)
族長セドリオ、賢く俊敏で真面目、決まった役割はないがマスティ氏族のように戦闘のサポートをしたり、村の誰かを助けたり、領内を駆け回って連絡役をしたりと様々
・シェップ氏族(小型種)
族長シェフ、小柄で好奇心旺盛、主にメーアや家畜の世話をしていて、特にメーアの世話が好きで得意、他の家畜の世話もしっかりとやる
・アイセター氏族(小型種)
族長コルム、おっとりとしていて温和、シェップ氏族と同じく家畜の世話を担当しているが特に馬の世話が得意で好き、族長のコルムは荒馬を軽々と制する腕前持ち
・カニス(大型種)
イルク村唯一の大型種で女性、元々は小型種の世話役だったが、領兵隊長のクラウスと結婚してからはその補佐役に。
今では関所の雑務や家事などを取り仕切る裏の関所主
産まれた犬人族の赤ん坊達が、少しずつ成長し村中を駆け回るようになったある日のこと。
そろそろ出産に備えての人員配置を元に戻しても良いのでは? ということになり、その辺りのことや、細かいことを話し合うために手が空いている人物に集会所に集まっての話し合いのようなことをすることにした。
会議という程大げさなものではなく、食事中の報告会に似たようなもので……まずダレル夫人から赤ん坊や母親達のその後のことが報告される。
「犬人族もメーアも産後の経過は順調で、母子共に体調に問題はありません。
普通はこれだけの数の出産があったなら、何件かの産褥熱が起こるものですが……それも一切なく、驚いてしまう程に順調です。
安産絨毯と薬湯のおかげと言いますか……とにかく何の心配もないというのはとてもありがたいですね」
産褥熱というのは、産後に母親が出すことのある熱のことらしく……出産で体力が減っている場合、このせいで命を失うこともあるらしい。
それでいて発症率はそれなりのものらしい……のだが、セナイ達が用意してくれたサンジーバニーの薬湯のおかげで熱を出した母親は一人もいない。
安産絨毯で出血を抑えられたのも良かったようで、母親達の体力はあっという間に回復していて……出産からそれなりの日数も経ったし、もう心配はいらないようだ。
「分かった、セナイ達には後でお礼を言っておこう。
それと母親達から何か要望があったらすぐに伝えて欲しい、出来るだけ早く対応しよう」
と、私がそう返すとダレル夫人は頷いてくれて……胡座に座った私の足の中でじゃれあう犬人族の赤ん坊達のことをじぃっと見つめてくる。
その視線が少し気になりはしたが、いつものことなので何も言わずにクラウスへと視線を向けて、発言を促す。
「あ、俺ですか?
報告とかは特に無いですが……久々にイルク村に来てみると、なんていうのかホッとするんですよね。
森の家もあれはあれで良いんですけど、ここはまた別格みたいな……。
という訳で関所勤めの面々の中で希望する者がいたらイルク村に戻る機会を増やしてやってください。
しっかり日数を決めて、順番を決めて……イルク村で情報交換したり、力仕事手伝ったりも大事な仕事だと思うので、お願いします」
「ああ、分かったよ、モント達と相談して詳細を決めておこう」
「ありがとうございます。
それと……さっきセナイ様達の話題が出たので、一応の確認と言いますか、質問があるのですが……獣人国で森人族がなんかしているらしいじゃないですか、最近は関所側までコソコソやってきて、様子見をしているなんて報告もモントさんからありましたし……どうします? 連中がこっちにも絡んできたら?」
私が言葉を返すとクラウスが更にそう続けてきて……集会所にいる面々の顔は少しだけ厳しくなる。
私の他はアルナー、ヒューバート、サーヒィ、洞人族のサナト、ダレル夫人、パトリック、センジー氏族のセドリオ、それとマヤ婆さんがいて……そんな皆の視線を受けて私は少し考えてから言葉を返す。
「何が目的かによるが……まぁ、基本的には追い払えば良いのではないかな。
セナイ達を双子だからって理由で村から追い出すような連中だ、友好関係とかは絶対に無理だろうしなぁ。
……災厄がどうとか言っていたらしいが、セナイ達が村に来てから良いことばかり起きて、どんどん村が発展していって……一体何が災厄だと言うのやら」
するとクラウスとヒューバートは何故か視線を反らして「ん~~」なんて声を上げ、マヤ婆さんはニヤニヤとした笑みを浮かべる。
アルナーはその通りだと力強く頷き、サーヒィやセドリオやサナトもまた同じように頷く。
そうやっておかしな空気が出来上がる中、パトリックが力強い声を上げてくる。
「であれば、その辺りのことモント殿と共有しておきましょう、連中がやってくるとしたら西からでしょうからな。
それと……最悪の事態を想定して、今のうちに対応を決めておくのも必要かもしれませんな。
何しろセナイ様とアイハン様は、今や王国公爵の令嬢……そのお立場はとても貴く重いもの。
たとえば森人族の親戚を自称する者が身柄を要求してきたり、なんらかの便宜を要求してきたりすることもあるでしょう。
あるいは脅迫などもしてくるかもしれませんし……セナイ様達を自分達の都合良く動かそうとしてくるかもしれません。
様々な事情で神殿に身を寄せた子供を利用しようとする大人は驚く程に多く、自分達も頭を悩まされたものです。
そういった場合の対処も今のうちに決めておき、共有しておけばいざという時に後手に回ることなく処理できるかと愚考いたしますな」
パトリックのそんな発言を受けて、クラウスやアルナーが目を鋭くする中、私は即答に近い形で言葉を返す。
「そうなったら仕方ない、力尽くで排除するしかないだろう。
近寄ってくる者は全て排除し、獣人国に逃げ込んだならペイジン達に手伝ってもらおう。
そういう連中に譲歩してもロクなことにならないというのは、あの戦争で嫌という程に学んだからなぁ……一切容赦する必要はないぞ。
セナイ達ともしっかり話し合って、そういう対応しても良いかと許可を取っておくから、いざという時には遠慮なくやってくれ」
交渉も譲歩もない、そんな敵対行動には躊躇する必要はない。
セナイ達はここに来たばかりの頃とは見違えるくらいに成長していて……アルナーとダレル夫人のおかげで、最近は責任感も持つようになったし、しっかりとした判断を出来るようになったし……体の成長が追いついていないだけで、中身は立派な大人だと言えるだろう。
ならば事前に話し合っておけば、分かってくれるはずで……アルナーからもダレル夫人からもマヤ婆さんからも特に反対の声が上がることはなかった。
「森人族っていうのは、セナイちゃん達みたいに魔法も達者かもしれないねぇ。
……そうすると厄介な搦め手を使ってくるかもしれないから、そこら辺の対処はあたしがやっておこうかねぇ。
関所にいってちょいっと防ぐためのまじないをして……まぁ、3日くらいで終わるはずさ。
坊や、向こうに行くための馬車なんかの準備をしておいてちょうだいな」
続いてアルナー。
「マヤが行くなら、私も行って手伝おう、通用するかは分からないが生命感知魔法も増やしておくとしよう。
セナイ達のように弓矢の腕が良いと厄介だから、その対策もしておくか……いくつかの防盾があれば良いかな」
そうやって場が盛り上がり始めて……その中で私が、
「ならセナイ達との話し合いは私がやっておこう」
と、声を上げ、皆がそれで良いと頷いたおり……集会所の入口が勢いよく開かれ、セナイとアイハンと、2人の頭の上のエイマが姿を見せて、入口を開いた勢いのままに両手を振り上げたセナイとアイハンが元気いっぱいな声を上げる。
「いーよー! やっちゃって!」
「すきにやっちゃって、いいよー!」
そしてエイマ。
「あ、盗み聞きみたいでごめんなさい、外を通りかかったら色々聞こえちゃったもので。
……で、ですね、セナイちゃんとアイハンちゃんは子供とは思えないくらいに賢いですし、公爵令嬢としての自覚も責任感もしっかりあるので、同じ森人族だからってだけで変な感情は抱かないと思いますよ?
ですので2人の言葉通り、好きに対応しちゃって問題ないと思います。
それとアレですよ、耳が良いボク達がいるんですから、こんな感じの話し合いをする時は、もう少し気を使ってた方が良いかもですね」
セナイ達の顔に暗い色は一切なく……むしろどこか嬉しそうというか、明るい色が含まれている。
話を理解出来ていなかったということはないはずで……理解した上で、森人族を排除して構わないというか、排除して欲しいくらいに思っているようだ。
「そうだな、2人にとって連中は両親の仇みたいなものだからな、容赦なくやってしまうとしよう」
「……家族と仲間をくだらない理由で追い出すような連中は全部噛み砕いてやれば良いのですよ」
アルナーとセドリオがそう声を上げると、セナイ達はにっこりとした笑みを浮かべて……2人の言葉が嬉しかったのか、集会所の中に駆けてきて……アルナーに抱きついて甘えたり、セドリオのことを撫で回したりとし、本当に嬉しそうな笑い声を上げるのだった。
お読みいただきありがとうございました。
次回は森人族のあれこれです




