始祖の銀の使い道
登場キャラ? 解説
・大メーア
ディアスがアクアドラゴンと戦っていた際に現れ、助けてくれた巨大メーア、その大きさはドラゴン以上で、その角での一撃はアクアドラゴンを容易に砕き折る。
メーアの神様? であり、神殿での信仰対象、普段は地下に住んでいる? まだまだ謎が多い
大メーアの使いが現れ、新たな贈り物を持ってきたとなって、近くにいた皆がメーア達が興味深げに近寄ってきて始祖の銀に触れたりする中、腕を組んだナルバントが始祖の銀についてを説明し始める。
「坊に試してもらった通り、始祖の銀は金属と思えんくらいに軽い。
ゆえに防具に向いておる……が、他にも面白い使い道がある。
という訳でほれ、今から魔石を近付けるから見ていると良い」
そう言ってナルバントは、懐から魔石の欠片を取り出し、それを始祖の銀に近付けると……始祖の銀がふんわりと青色の光を放つ。
「魔石だからこんなもんじゃがの、モンスターであればもっと強く大きく光ってくれる。
モンスターや瘴気に反応して光るのもまた始祖の銀の特徴と言えよう。
じゃからこれで腕輪なりを作って身につけておけば、モンスターが近付いてきた際にはすぐに分かるという訳じゃのう」
更に続くナルバントの説明に……私はあることに思い至り言葉を返す。
「それは……ある意味では欠点ではないのか?
モンスターと戦っている最中に防具が光ったら気が散るだろうし、味方の視界の邪魔にもなりそうだし……モンスターからも目をつけられて集中攻撃をされてしまいそうだなぁ」
「うむ、坊の言う通り、この特徴は欠点となり得る。
じゃからオラとしては腕輪くらいにしておきたいのう……腕輪なら邪魔な時には外してしまえば良いしのう。
幸いにしてこの村はドラゴン素材がどんどか手に入るからのう、防具ならそちらで作れば良いのではないかのう」
と、ナルバントがそう言って……それなら村の皆の分と、それと野生のメーア達にも角飾りか蹄飾りという感じで、始祖の銀製の何かを贈るかな……なんてことを考えていると、始祖の銀をあれこれと調べていたヒューバートが、こちらにやってきて声を上げる。
「防具に使えないのであれば、特に加工は必要ないので小さく切り分けてはいただけないでしょうか。
切り分けた後はこう……槍のように棒の先端に縛り付けた上で、その棒を領の外縁……特に北側に突き立ててはいかがでしょうか?
その上で、いくつかの見張り台を立てて警鐘を設置しておけば……いち早くモンスターの接近をこの村に……いえ、ディアス様に報せることが出来るはずです。
それと先程の様子を見ていたのですが、どうやら魔石との距離で光の強弱が変わるようでして……始祖の銀を縛り付けた棒を等間隔に、整然と配置しておけば、それぞれの光の強弱でどの方角の、どのくらいの距離にいるかという予測も可能になると思われます。
この予測は鷹人族の協力があればより正確なものとなるはずで……出来るだけ早く設置し、予測のための観測記録を蓄積すべきです。
……出来ることならモンスターをあえて連れてきての実験もすべきだと思います」
ヒューバートの熱と力のこもったその言葉を、私はすぐに理解出来ず、首を傾げることになったが……それを察してかヒューバートが地面に、説明のための絵図を書き始めてくれる。
草原に等間隔に始祖の銀を配置して……1本や2本ではなく、数十以上配置して、横一列にならべて……その列を2列、3列と増やしていって、数百となる配置をして。
その状態でどこからかモンスターがやってくると、その方角にある始祖の銀だけが強く光り、周囲の始祖の銀は弱く光り……そして遠方にある始祖の銀は全く光らないので、その光の強弱でどの方角から来ているかがかなり正確に分かり、光の強さで大体の距離が分かる。
これは見張り台で見るよりも、空から見た方が分かりやすいそうで……そのためには鷹人族の協力が必要。
しかし鷹人族がそうやって空から見張れるのは昼間だけのはず……と、誰かが言うと、ヒューバートは、
「それは仕方ありません、夜は見張り台に頼りましょう。
夜の暗闇の中であれば、始祖の銀の光は昼間より目立つでしょうから、発見が早くなるはずで……鷹人族の目がなくともなんとかなるはずです」
と、返す。
そこまで説明されて、ようやく私にもヒューバートがやろうとしていることが分かり……なるほど、これは良い考えだと頷き、声を上げる。
「この光のことを野生のメーア達と共有しておけば野生のメーア達の避難がより早く確実に行えるだろうし……避難所との相性も悪くないだろうな。
それと……これだけの大きさだ、草原中に配置してもいくらか余るだろうから、余った分はエルダンやペイジン達にも贈りたいな。
特にペイジン達はここまで来るまでにモンスターに襲われたら大事だろうからなぁ、これがあるだけでかなり安全に行商が出来るはずだ」
私がそう言うとナルバントもヒューバートも頷いてくれて……足元にやってきていた野生のメーア達も、分かっているじゃないか、とでも言いたげな表情でうんうんと頷き、感謝の気持ちを示しているのか、体を擦り寄せてくる。
そのメーア達を撫でてやっていると、今度はアルハルがやってきて、初めて見るような真剣な表情で声をかけてくる。
「メーアバダル公、お聞きしたいことがある。
貴方は何を目指している? ここをどうしたい? この村の皆をどう導きたいんだ?」
胸に手を当て声に力を込めて、本当に真剣にそう言ってくるアルハルに私は……私なりに真剣に考えてから言葉を返す。
「改めてそう聞かれると中々困ってしまうが……かつての私が目指していたものは今ここにあるかな。
誰もいなかった頃に領民が欲しいと強く願っていたこともあったが、今では十分過ぎる程になったし……食べるのにも眠るのにも困らなくなって、神殿や学び舎を作れるくらいの余裕も出来た。
私が目指していたものは今ここにあって……この続きに皆を導けたら良いと思っている。
領民が更に増えるのか、もっと施設が出来るのか、暮らしが楽になるのかは分からない、無理に目指すこともないが……日々を暮らすうちにそうなるのなら良いと思うし、自然にそうなっていくような場所に出来たらと思っているよ」
それは私が最近思っている、正直なところだった。
少し前に、もう領民は十分でこれ以上村が大きくならなくても……なんてことを思ったこともあったが、私がどうこうせずとも自然な流れで領民が増えていって、施設も増えていっている。
これからまた赤ん坊が産まれる、子供が多くなる、きっとそのための施設も増えていくはずで……私が何かをしなくても人が増えていく流れのようなものが出来上がっているように思う。
なんとなくだがここで無理をすると、限界を越えた負担が降り掛かってきそうな気もするし……今を、この流れを大事にすることが重要なのだろうと思う。
自然な流れで……そうなるべくして領民が増えるのなら歓迎はするが……うん、この辺りが私の限界なのだろうしなぁ。
と、そんな考えでの私の言葉を、真剣な表情で聞いていたアルハルは……一回頷き、耳をピンと立てて口を開く。
「何年か前に若もそんなことを言っていた……始祖の銀を手にしてあの発想、周囲への気の使い方……うん、きっと公とは気が合うことだろう。
……よし、決めたぞ、あたしは仲間をここに呼ぶ、ここで皆と暮らす。
あたし達ニャーヂェンは体だけではなく思考も柔軟だからな、あっという間にここに馴染むに違いない。
……そういう訳だから公、手間をおかけするがあたしが書いた手紙をどうにか、帝国へ届けてくれないか?」
……うん? うん??
何がどうしてそうなった、今の会話からどうしてそうなった?
いや、自然な流れで領民が増えることは歓迎ではあるのだけど……皆で? ニャーヂェン族全員でここで暮らすのか?
ニャーヂェン族とは一体……全部で何人いるんだ??
そんな疑問が次から次へと浮かんできて、それを上手く言葉に出来なくて私が口をパクパクとしているとアルハルは、私が嬉しさのあまりそうなったと勘違いしたようで、照れくさそうに小さく笑い、鼻をこすり……そして、
「ありがとう、公」
と、そんな言葉を口にするのだった。
お読みいただきありがとうございました。
次回は視点を移してのあれこれ……になるかもしれません




