その後の対応
私とアルナーのダンスが終わると、村の皆も参加してのダンスパーティーとなり……犬人族はもちろんのこと、洞人族の夫婦や、鬼人族の女性と良い仲になっているジョー達や……マヤ婆さん達も婆さん同士でゆったりとダンスを楽しんで、それはもう大いに盛り上がった。
ダンスをしない者も食べて飲んで、あるいは旅芸人達の芸を楽しんで……。
イルク村の宴がこんなに盛り上がったのは本当に初めてのことで、力いっぱい体力いっぱい楽しみに楽しんだ皆はパーティが終わったなら倒れるように眠りについて……そうして翌朝。
いつも通りに日が昇り、いつも通りの日常が始まり……それでも皆がどこか浮ついた様子なのは、昨晩が楽しすぎたからなのだろう。
眠気の残る目をこすりながら昨晩の話をし、またあんな宴をやりたいなんて言いながらの身支度や朝食を終えた所で、昨晩関所の方で問題があったとの報告がされて……驚かされた私は、クラウス達なら大丈夫だろうと思いつつも、あの絨毯を担いで関所の状況確認に向かうことにした。
同行者はエイマと……関所で働いている父親の下に遊びに行きたいという犬人族の子供達となり、元気に草原を駆け回る子供達の様子を眺めながら足を進めていると……いかにも盗賊という風体の男と遭遇した。
その男はどういうつもりなのか子供を狙っているようで……それに怒った私が捕まえようとすると森の中に逃げ出し……少しの紆余曲折を経て捕縛されることになった。
あれこれと知恵を絞って森の中を逃げ回ってくれたが、エイマの耳と犬人族の鼻の助けがある中で逃げ切れるはずもなく……全く、疲れ果てて眠ってしまうくらいなら最初から逃げなければ良いだろうになぁ。
そんな盗賊を連れて東の関所へと向かうと、クラウスやいつの間にか増援に来ていたらしいパトリック達が捕縛した盗賊達を一箇所に集めている姿が視界に入り込む
その様子を見るに……どうやらパトリック達が杖を使った厳しい説教をする中、クラウス達は盗賊達をどうすべきかと処遇について話し合っていたようだ。
関所の主はクラウスで、ほとんどの盗賊を捕らえたのはクラウス達で……私が口出しするような内容でもないと思ったのだが、エイマからこんな声が上がった。
「ここに来てしまった以上は参加するべきでしょう。
意見を出すかクラウスさん達に任せるかは、まず話を聞いてみてから判断しましょう」
エイマがそう言うならと納得し、話に参加するとクラウス達から盗賊の中に、どう見ても盗賊には見えない、腕の立つ一団がいたという話を聞かされた。
全員が獣人、クラウスが少し苦戦する程度に腕が立ち、装備もかなり良い。
私が捕まえた盗賊もその一団だったようで……たった一人での無謀な突破を試みたという点から見ても、なんらかの思惑があったのだろうということだ。
パトリック達による説教……というか尋問の結果、盗賊達全体がメーアバダル領の情報を求めてやってきたことまでは分かっているが、そんな一団がいたことから他にも何か狙いがありそう……なのだが、その一団をいくら尋問してもはっきりしたことは分からないらしい。
そんな連中をただの盗賊として処分しても良いのか、それとも何か手を打つべきなのか……更に激しい尋問をして情報を引き出すべきなのか。
……と、そんなことをクラウス達は話し合っていたらしい。
そんな話を聞かされて私が首を傾げながら悩んでいると……頭の上に座ったエイマから声が上がる。
「今回の件でやるべきこと、やれることはたくさんあるのですが……残念ながらボク達では手が足りません。
メーアバダル領は王国全体、大陸全体から見ればまだまだ小勢力で……下手に渡り合おうなんて思ってもジリ貧になるだけです。
なので……ここはもうマーハティ公、エルダンさんに任せちゃいましょう。
マーハティ領は王国有数の勢力ですし、王都にも伝手があり、何よりジュウハさんがいます。
ジュウハさんならボク達には気付けないことに気付いてくれそうですし、良い手を考えてくれそうですし、ボク達が下手にあれこれするより良い結果になるはずです。
……今回の盗賊は隣領からやってきた獣人の盗賊な訳ですし、エルダンさんに任せるというのは筋違いではないでしょう。
エルダンさんにある程度の責任を負わせることで他所からの非難を躱すことも出来るでしょうし……悪くない案だと思います。
……この人達、裏がある上にガラも悪すぎて領民には出来ないですしねぇ」
罪人として労働力にするにしても100人近くは多すぎる……そのための牢や見張りで手一杯になるのは明らかで……それならいっそ他に任せてしまえば良い、ということらしい。
その意見はなるほどなぁと思わず声を上げそうになるもので……パトリック達は少しだけ不服そうだが、クラウスやカニス、今回手伝ってくれたらしい鬼人族達も納得したような顔でうんうんと頷いている。
「……まぁ、そこはエルダンにも相談しないとだな。
幸い今はイルク村にいる訳だから、戻り次第相談して……エルダンが良いと言うのなら任せる方向で行こう。
一応イルク村で代表者の皆にも聞いてみるが……まぁ、反対の声は上がらないはずだ」
私がそうまとめると皆納得してくれて……そんな話し合いが終わると、私と一緒に関所へやってきた子供達が、盗賊の見張りをしている父親の下へと駆けていって、元気な声を上げる。
「とーちゃん、こんなに捕まえたの? すげー!」
「わー、ドラゴン装備の親父、かっけぇ!」
「これからこっちにも旅芸人くるんだって! すっげぇ面白かったよ!」
すると父親達は顔を綻ばせ尻尾を振るが、それでも仕事が優先だと見張りの仕事を続けて……子供達はそんな父親達に尊敬の視線を送る。
そんな微笑ましい光景をすぐ側で展開されて、盗賊の一部は舌打ちをするが、すぐにパトリック達がそれを……かなり厳しく嗜め、盗賊達は静かになる。
「あー……パトリック、エルダンに引き渡す前に重傷を負わせては迷惑だろうから、程々にな?
こんな連中にアレは使いたくないし、罪についても隣領で償うんだろうし……言葉での説教だけにしてくれ」
先程から杖を容赦なく振るっているパトリック達にそう言うと……パトリック達は少しだけ、ほんの少しだけ不満そうにしてから頷き、私の言葉に従い説教を始める。
杖は振るわないがその分だけ言葉がきつくなり、声が大きくなり……子供達の前で、そんなに声を荒らげるのもなぁと思うが……まぁ、悪いことをしたらこういう目に遭うという良い勉強になる面もあるのだろう。
……もう少し父子の時間を過ごさせてやったなら、村に帰ってエルダンに今の話をして……今日も忙しくなりそうだなぁと、そんなことを考えた私は、頑張ってくれたクラウス達を労うために、クラウスの側に足を向け声をかけ……今回の件の報奨金の話やらをし始めるのだった。
お読み頂きありがとうございました。
次回はエルダン達のあれこれの予定です。




