馬車の外で暴れる者達
投稿が遅くなってしまい申し訳ありませんでした。
カマロッツ達は一体何を……何者を馬車に載せて来たのか。
その答えは当然カマロッツ達に聞くしか無く、ならばとアルナーと共に車列へと近付いて……そんな私達にすぐに気付いてくれたカマロッツは後ろに続く馬車達に停車せよとの号令を出し始める。
馬車のことをじっと見つめながら、馬車の中の積荷……というか客のことが気になって仕方ない私は、馬車を停車させ御者台から降りてきたカマロッツへの挨拶もそこそこに、早速馬車の積荷についてを聞こうとするが、
『だ、駄目です!危険で――――――相手なんです!
このまま―――皆殺しに――――――――です!!』
との随分と物騒な内容の女性の物と思われる叫び声が2台目の馬車の方から聞こえてきたことで、その会話は中断されてしまう。
叫び声の後には馬車の中で複数の何かが暴れているような音まで聞こえて来て、一体どんな物騒な客を連れて来たのやらとカマロッツへと視線をやれば……カマロッツは口を大きく開けながらの愕然とした表情になっていて、どうやらカマロッツは馬車の中に何かが居ることを知らなかったようだな。
周囲に居た護衛達も似たような状態で、顔を布で覆い隠していながらもその態度や身動ぎから相当に驚いてしまっているのが見て取れるし、御者に至ってはまさか自分の背後の荷台に何かが居るとは思ってもいなかったようで大げさ過ぎる程に驚いてしまって慌ててしまって、御者台から落ちそうになってしまっている。
カマロッツ達の知らない何者かが馬車の中に居て、そこから『危険』『皆殺し』との声が聞こえてきて、その声の主は恐らくは女性。
その上、何かが暴れている音まで聞こえてきたとなれば、グズグズしている暇は無いだろう。
手遅れになってしまう前に馬車の中を検めようと戦斧を片手に前に出ると……カマロッツは慌てて自分達が確認するから安全な場所に居て欲しいとの声をかけてくるが、しかしそれで止まる訳にはいかない。
何も無い草原とはいえ、ここは私が管理する領内であるのだし、領主として私が事態に対処すべきだろうとそのまま馬車へと近付いて、馬車まで後数歩の距離となったところで、それらは一斉に馬車の中から飛び出して来た。
「ドラゴン殺しを討ち取れッ!!」
「この機を逃すなッ、奇襲を仕掛けろッ!!」
「相手は無防備状態ッ、今が好機ッ!」
などと少年のような声で叫ぶそれらを見た私は、
「ネズミが喋った?!」
と思わずに声を上げてしまう。
一目見た印象でネズミ、と言ったは良いが、茶色の毛で覆われた頭から生えるその長い耳はウサギのようでもあり、雑な作りの布の服を身に纏う体はネズミより大きく、ウサギより小さく、尻尾は驚く程に長い。
「お、お前達何故ここに?!
いや、それよりも今何と言った!!」
続くのはカマロッツの怒声。
その内容から察するにどうやらカマロッツはこの小動物達が何者であるかを知っているらしい。
そんなカマロッツの声に小動物達が反応を示すことは無かった。
余計なことに構っていられるかとばかりに私だけを睨みつけてくる小動物達は、驚く程の跳躍力でもって馬車から飛び出して来た勢いそのままに私へと向かって真っ直ぐに跳んでくる。
私と馬車の間にはそこそこの距離があったのだが、小動物達は一度も地に足を着かずにそれを跳び越えて来て……私は驚いてしまったのと、果たしてこの小さな体を持つ者達に手をあげて良いものだろうかと戸惑ってしまって……結果、回避も迎撃も出来ない程の間合いにまで小動物達の接近を許してしまう。
そうして小動物達が構えるその鋭い爪や鋭い前歯が私に届くとなって、こうなっては仕方ないと私がそれらの攻撃を受けるのを覚悟していると……突如バシィンッ!との音が響き、小動物達が次々に叩き落とされ始めて、それと同時に角を赤く光らせながら弓を振るうアルナーの姿が視界に飛び込んでくる。
「ディアス、油断しすぎだ。
ネズミに噛まれると死病を貰うこともあるのだから、気を付けろ」
なんてことを言いながらアルナーは右手に持つ弓を振るい、時には左手に持つ矢筒も振るい、次々に小動物達を叩き落としていく。
アルナーに叩き落とされた小動物達は、ピィィィィッだとか、ピギィィィィッだとかの悲鳴を上げながら地面に落下するが……すぐに起き上がって動き回り始めた所を見るにどうやら怪我はしていないようだ。
「手加減をしてやったのか?」
と聞くとアルナーは当然だろうとばかりに頷いて、
「どうしてネズミなんかを飼っているかは知らないが、そいつらがカマロッツの所有物なら勝手に殺す訳にはいかないだろう?」
と一言。
いや、まぁ、うん、カマロッツ達の馬車の中から出てきたし、カマロッツもそいつらのことを知っているようではあったけど……あの様子でカマロッツのペットというのは流石に無いんじゃないか?
「俺達は誰にも飼われてなどいないッ!」
「無礼な角女めッ!!」
「砂漠の民を馬鹿にするなッ!このアバズレがッ!!」
などとアルナーの言葉に反応して暴言を口にする10匹程の小動物達は、奇襲攻撃が完全に失敗となってしまったこの状況でも私への攻撃を諦めて無いようで、長い足というか長い爪先でもって地面を蹴り跳んでの跳躍攻撃をしつこいくらいに何度も何度も繰り出してくるが、その都度アルナーに叩き落とされてしまう。
アルナーは先程と変わらず手加減を続けていて……どうやら小動物達の暴言は所詮ネズミの言うことだからと気にしてもいないようだ。
「お、お前達、何をしているんだ、呆けていないでディアス様とアルナー様をお守りしろ!
その愚か者共を一人残らず捕らえるのも忘れるな!」
アルナーと小動物達の攻防が続く中で聞こえて来たのは、カマロッツの怒鳴り声。
護衛達は呆けていた訳では無く、護衛対象のカマロッツを守ろうと状況の変化に備えていただけだと思うのだが、怒鳴られた護衛達は何の反論することなく粛々と行動を開始して、私達を守ろうと前に立ちはだかったり、小動物達を捕らえようと駆け出し始める。
そうする護衛達を見た、小動物達は、
「援軍とは卑怯だぞッ!」
「やはり人間族は卑劣ッ!!」
「おのれドラゴン殺しッ!!」
なんてことを口々に言い始めて……その直後に蜘蛛の子を散らすように逃げ始める。
その跳躍力と体の小ささを活かし、中々の逃げっぷりを見せる小動物達だったが、護衛達の脚力はそれ以上に凄まじく、あっという間に追いついた護衛達は小動物達を鷲掴みに捕らえていく。
護衛の一人が馬車の中からいくつかの麻袋を引っ張り出すと、その中に捕獲された小動物達が次々と投げ込まれていき……全ての小動物達が捕まるまでにそれ程の時間はかからなかった。
カマロッツは護衛達に取り逃しが居ないかの再確認と、他に馬車の中に隠れている者が居ないかの確認をするようにとの指示を護衛達に出してから、その顔色と表情で私達への申し訳無さを精一杯に表現しながらこちらへとやってくる。
「ディアス様、アルナー様、この度はわたくし共の不手際でとんだご迷惑をおかけしてしまい、なんとお詫びを申し上げたら良いのやら……」
そう言って折り目正しく頭を下げるカマロッツ。
私はあの小動物達がしたことでカマロッツが謝る必要は無いとの言葉を返すが、カマロッツはあの者達をここに連れて来てしまったのは私達の確認不足が原因ですから、と尚も頭を下げ続ける。
「何よりあの者達はわたくし共の領に住む領民でもありますから、その者達がディアス様を襲ったとなれば……エルダン様の名代としてここに居るわたくしが謝罪をしない訳には参りません」
「……ん?領民?
あの小動物達が……?
ちょっと待ってくれ、もしかしてあいつらは小動物では無いのか……?」
私がそう言うと、カマロッツは頭を上げてからゆっくりと頷いて……あの小動物達が何者であるかの説明をし始めるのだった。
お読み頂きありがとうございました。
小動物達のはっきりとした正体についてとか、色々説明が足りていなかった部分の補足を今回説明するつもりだったのですが、書いているうちにそれらが長くなってしまったために次回に回します。
農具のことだとか馬車の積荷のことだとかの色々なことが先回しになってしまっていますが、もう少しだけお待ち下さい。
続きは未定ながらGWは予定が無いので、なるべく早めに。
※追記
33話は16日の23時頃投稿予定です。
※5月12日追記
弓を振るうシーンでアルナーの角についての描写を追加しました。
https://ncode.syosetu.com/n2259es/
外伝集を作成し、そちらに登場人物一覧を投稿しました。
今後設定や裏話、外伝的SSはこちらに投稿する予定です。
何か更新する都度、本編前書きか後書きかでお知らせして行く予定です。




