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領民0人スタートの辺境領主様  作者: ふーろう/風楼
第八章 二年目の春、芽吹きの季節

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家族

・イルク村に居る犬人族のことを改めて解説


・オースン・シェップ氏族

 氏族長はシェフ

 黒と白とふわりとした長毛、ピンと立つ耳、愛らしい顔。落ち着きがなく忙しなく働くことが大好き。


・バー・センジー氏族

 氏族長はセドリオ

 茶色の短毛、ピンと立つ耳、凛々しい顔、すらり細い手足で筋肉質。とても真面目で運動が大好き。


・ティベ・マスティ氏族

 氏族長はマーフ

 黒色のもっさりした長毛、垂れ耳、垂れ目、垂れ頬、手足が太くがっしりとしている。体力と筋力に自信があり、それでいて大人しくもある。


・アイセター氏族

 氏族長はコルム

 口元をしっかりと引き締めて、目は凛々しく、垂れた耳を覆う茶色の毛は艷やかに波打っていている。

 

 馬の世話を得意としているようだが、それ以外にも得意なことがあるのかも?

 新参者だけにまだ色々と未知数。


 セナイとアイハンの両親……随分前に病気で亡くなったという二人。


 そんな二人と会話が出来るというのは妙な気分になる話だが……森人とはそういう種族なのだそうだ。


 子供のために心と想いを込めた種を残し、種から木となって子供を守り続け……必要とあれば知識を与えることで子供を助ける。


 両親そのものとも言えるその木のことを子供は当然のように守り、育て……いつしか大人となって子を残し、自分もまた木となって子供を守り……そうやって木々が集まって森となるから、森人。


 そんな森人であるセナイとアイハンが森のことを好いているのは当然のことと言えて……そしてセナイ達は森人としての力で今まで私達のことを、こっそりと助けてくれていたらしい。


 そういうことならこれからもそうしていけば良いのだと思う……今までそうしてきたように、二人の判断で二人の好きにしたら良い。


 二人だけでは決めきれなかったり悩むことがあったりしたなら、今までのようにエイマに相談するとか、アルナーに相談するとか、犬人族の誰かに相談するとか、サーヒィ達に相談するとか……人間族である私達が関わらない形でやっていけば良いと思う。


 もし仮に畑などに関することで困ることがあったとしても、今まで通り……二人の力に頼ることなく、自分達の力と知恵で普通に対処していけば良い話だ。


 王国中……というか大陸中、世界中の人々がそうしているのだからそうしたら良い、問題なんてあるはずがない。

 セナイ達が力を使って助けてくれたその時は、偶然転がり込んできた幸運だったと思って……それが常だと思わないように、力に頼ることが当たり前なんて風に思わないように気を引き締めて……そしてセナイ達に深く感謝するようにしていきたいと思う。


 ……と、そんなことをセナイ達の畑の若木達に向けて言葉にするが、特に反応はない。


 春風の中で静かに揺れているだけで……何かを言ってくることはなく、しばらく待っても反応が無いので私は思わずぽかんとした表情を浮かべてしまう。


 するとセナイとアイハンが私の方をじぃっと見てきて……そうしてから若木の方へと手を伸ばして、そのまだまだ細い幹にそっと触れる。


「……えっと、森人の木との対話が出来るのは森人だけなので、今のディアスさんの言葉は、セナイちゃんとアイハンちゃんからご両親に伝えてもらうとしましょう」


 そんな二人を見てか私の頭の上にいるエイマがそう声を上げてきて……私はこほんと咳払いをしてから「なるほど」と呟き、セナイ達と両親の対話の様子を静かに見守る。


 セナイとアイハンの表情は穏やかで、まるで熟睡している時のように安らいでいて……言葉は特に無く、心の中と言うか心の声でもって両親と対話しているようだ。


 それはしばらくの間続き、私達は静かにその様子を見守り……そうしながら私は、私の両親と、両親の遺言のことを思い出し……そのことについてつらつらと思いを馳せる。


 この一年、両親の遺言を守ることは……出来ていたと思う。

 仮にセナイ達のように亡くなった両親と会話が出来るなら、自信を持って胸を張ってこれまでのことを報告出来ると思う。


 両親が今の私にどんな言葉をかけてくれるかは……両親との思い出が薄らいでいる今となっては想像することも出来ないが……まぁ、悪くはない言葉をかけてくれるはずだ。


 セナイとアイハンの両親もきっとそうなのだろう。

 セナイとアイハンはここに来てからずっと良い子にしていたし、両親との約束もしっかりと守っていたし、畑のことなど様々なことを頑張ってもいた。

 

 私達でさえ誇りに思う程だったのだから、実の両親ともなればそれはもう言葉に出来ない程の想いがあるはずだ。


 だからまぁ……きっと、今回の件も、二人に非が無い形で約束を破ってしまったことも許してくれるはずだ。


 私の言葉を受け入れてくれるかはなんとも言えないが……いや、セナイとアイハンの両親ならばきっと―――。


 と、そんなことを考えた所で、セナイとアイハンが両親の若木からすっと手を離す。


 手を離してこちらを向いて、その首を少しだけ傾げて……そうしてからゆっくりとその口を開く。


「えっとね、約束のことは許してくれた」


「で、ディアスへのおへんじは、じぶんたちでするんだって……」


 セナイとアイハンのその言葉を受けて、私は頭の上のエイマを落としてしまわない程度に首を傾げる。


 私とセナイ達の両親とが会話をすることは不可能なはずで、返事をすることだって当然不可能なはずで……一体どういうことなのだろうか?


 私が抱いているそんな疑問と同じことを考えているのだろう、セナイとアイハンは首を傾げたままきょとんとした顔をし続けていて……私の上のエイマも恐らく首を傾げているのだろう、姿勢が片寄っている様を感じ取ることが出来る。


 そうしてその場の全員で首を傾げて、何も言うことも出来なくて。

 そんな全員でセナイ達の両親の若木のことをじぃっと見つめていると……二本の若木の、幹というか枝の先端の方でちょっとした動きがある。


 集中してよく見ていないと分からないような、ほんの僅かな動きがあり、枝の先端にぷくりと膨らみのようなものが出来て……それが段々と大きくなって蕾のようなもの……が出来上がる。


 いや、それははっきりと蕾で、その蕾が段々と大きくなっていって……時間が縮まっているかのような何日もの時間があっという間に過ぎているような、そんな不思議な光景が繰り広げられて……そうして大きくなった蕾の花びらがふんわりと開かれ、バラを思わせる綺麗な花が見事なまでに咲き誇る。


 片方は赤く色付いていて、片方は青く色付いていて……どうやらその二つの花が、セナイ達の両親からのメッセージであるようだ。


「これは……また随分と綺麗な花だが、私の言葉を受け入れてくれた、ということで良いのか……?」


 その花のことを見やりながら私がそう言うとセナイとアイハンから同時に『うん!』と元気な声が上がる。


 それを受けて二人の表情を見てみれば、いつになく柔らかい微笑みを浮かべていて頬をほんのりと赤く染めていて……両親が許してくれたことが余程に嬉しいのだろう、すぐにでも踊りだしてしまいそうな程に喜びの感情が溢れている。


 そんな二人の側に近寄り、そっと頭を撫でてあげていると「二人とも本当に良かったですね!」なんてことを言いながらエイマがまずセナイの肩の上に飛び移り、次にアイハンの方へと飛び移り、笑い合ったり頬を擦り寄せたりとじゃれ始める。


 そうしてセナイとアイハンの口から元気な笑い声が漏れ出すと……それを受けてか村のあちこちから村の皆が集まってくる。


 何をしているかなどの説明はしていないが、なんとなしに察してくれて距離を取ってくれていた皆は、セナイ達の笑い声を受けて事が終わったことを察して集まってきたようで……集まってきた皆が声を上げ始めたことで辺りが一気に賑やかになっていく。


「ほう、綺麗な花じゃぁないか、こんな綺麗な花ははじめて見たな」


「本当にねぇ、名前はなんて言う花なんだろうねぇ」


「匂いも良い匂いですよ! こんなに良い匂いの花は初めてです!!」


 ベン伯父さんがそう言って、マヤ婆さんが続いて、シェップ氏族長のシェフが元気な声を上げて。


 アルナーとエリーが一緒にやってきて、セキ達三兄弟も婆さん達もフランシス達を始めとしたメーア達もやってきて、犬人族達もどんどんと集まってきて。


 空からサーヒィ達もやってきて、村中の皆が集まってきて……皆でセナイ達を囲み、皆で花を眺める。


 右を見ても左を見ても、何処を見ても誰かがいて、皆が笑顔でセナイ達と花のことを見つめていて……セナイ達はそんな光景を見て、今まで以上に嬉しそうな笑みを浮かべて、笑い声を上げて……幸せそうな表情を浮かべる。


 するとそれを受けてセナイ達と仲の良い犬人族の子供達が駆け寄って抱きついて、フランシス達や六つ子達も負けじと身を寄せて、大人達は順番にセナイ達の頭を撫でたり、その手をそっと握ったりして……何があったのか、ここでどんな会話をしていたのかは知らないがとにかく自分達はセナイ達の味方であると、家族であると、そんな想いをそれぞれのやり方で示していく。


 その中には領民になったばかりのコルム達アイセター氏族の姿もあり……状況はよく分かっていないが楽しそうだからと輪の中に入り、近くにいる者達と挨拶を交わし笑い合い……そうしてから皆の中心にいるセナイ達の側へと駆け寄っていく。


 そうやってセナイ達の周囲は一切の隙間が無い程に、皆と皆が寄り集まってぎゅうぎゅうになって、そのことを喜ぶセナイ達の笑顔が伝播してか笑顔で溢れていく。


 その光景はこれ以上のものはないだろうというくらいには美しいもので、心が温まるもので……セナイ達の両親もきっと、喜んでくれているはずのもので……そんな光景の中でセナイとアイハンはどんどんと笑顔を大きくしていって、大きくしながら大きく息を吸って、弾けるような声を張り上げる。


「皆大好き!」

「だいすき!!」


 そんな二人の声を受けて私や皆が微笑む中、咲いていた二つの花がより大きく広がり、より強くそのなんとも心が安らぐ良い香りを放ち始めて……そんな香りをいっぱいに吸い上げた私は、この場にいる皆が……セナイ達が落ち着くまで何も言わずにその光景を見守り続けるのだった。


お読みいただきありがとうございました。


次回からはディアス以外の視点をまとめて……ある人物とある人物とある人物のその後というか、今どうしているかをやっていく予定です。


そしてお知らせです。

コミカライズ最新、5巻の発売日がついに明日となりました!

すでに入荷をしている本屋さんもあるようで……ぜひぜひチェックしていただければと思います!


一度掲載した画像ですが、発売日直前ということで改めて掲載させていただきます!

挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[一言] 優しい、優しい空気がいっぱいに満ち溢れて、涙が止まりません。 私の心の中に浮かんだこの光景を、この温かさを、きっと私はこれから何度も思い返し、優しい気持ちを思い出すんだろうな、と感じました。…
[一言] ようやく真の意味でセナイとアイハンという森人がイルク村に根付いたという事かな・゜・(つД`)・゜・。 村の皆が集まってくる様がありありと思い浮かぶ感じであらためてよい文章をかみしめてしまい…
[一言] しばらく読めてなくて一気読みしてました♪ 色々とおめでとうございます(ざっくりしすぎですが) どこへ行ってもディアスはディアスって感じですね~当たり前ではあるのですが(苦笑) この話のセナ…
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