表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
領民0人スタートの辺境領主様  作者: ふーろう/風楼
第六章 春を待ちながら

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

137/570

香り立つ

登場キャラ

・ディアスを含めたいつもの面々

連続で登場しているキャラは説明を省くことがあります。


・センジー氏族

犬人族、茶色の短毛、耳はピンと立っていて細身でスラっとしている。

真面目かつ俊敏。短毛なので寒いのは苦手。



 翌日。


 朝食を終えて日課を終えた私は、昨日と同じ……セナイとアイハンとエイマと馬達という顔ぶれを連れて森へと足を運んでいた。


 その目的は尚も森に行きたがっているセナイ達の為というのが半分、昨日セナイ達が出会った老人のことをエルダンの部下達に知らせるのが半分というもので……森に到着した私達はまずはと仮設の道造りが進められている一帯へと足を向けた。


 そして件の老人の話をし……特に心当たりが無いと首を傾げつつも確認をしてくれるという部下達に礼を言ってから、セナイ達が老人と出会ったという木柵を作ったあの一帯へと向かう。


 ここでその老人と会うことが出来れば話が早いのだが……と、そんなことを思いながら周囲を散策してみるも、それらしい気配も、誰かが森の中で暮らしているような痕跡も全く見当たらず……出来る限りのことはしたのだからと気持ちを切り替えた私は、今度はセナイ達の「森でやりたい事」に沿う形での森歩きをしていく。


 昨日作った柵に問題が無いかの確認、今日はどの木を伐ろうかという見極め、冬枯れの景色の中でも何か食料は無いかとの探索……などなど。


 そうやって森の中での時間を過ごしていると、森歩きの合間合間に枯れ木の皮を剥ぎ取って食べていた馬達が、何かに気付いたかのように顔を上げて、その鼻をふがふがと鳴らし始める。


 そうすることで何かを嗅ぎ取ったらしい馬達は、お互いの顔を見合ってから私やセナイ達の背中にその頭をグイグイと押してくる。


「ベイヤース、何があったんだ?」


「シーヤ?」

「ぐり?」


「ちょっ、ちょちょちょ!? ボクは身体が小さいんですから、そんなに強く押さないでー!?」

 

 そんな私達の声に一切構うことなく馬達は、尚もグイグイと頭を押し付けてきて……どうやら馬達はそうすることで私達を、何処かへと導こうとしているようだ。


 そういうことであればと、馬達の誘導に従って足を進めてみると……自然とそうなったのか、周囲の木々が枯れて倒れたことで、ちょっとした広場のようになっている一帯へと辿り着く。


 しかしそれは冬枯れの森の中ではそう珍しくもない、よくある光景の一つで……一体なんだってまたこんな所に連れて来られたのだろうか? と、首を傾げていると、馬達が地面のあちらこちらへと鼻を押し付けてから、こちらを見つめて来て……その様子を見たセナイとアイハンが、ハッとした表情となって駆け出し、手頃な枝を手に土の中にあるらしい何かを掘り返そうとし始める。


「何かあるのか? 手伝うか?」


 そんなセナイ達の側へと近付いて、しゃがみ込みながらそう尋ねると、セナイとアイハンは、


「ちょっと待って!」

「いま、みせるから!」


 と、そう言いながら手を動かして……枯れ葉や木屑を払い除けて、土を払い抜けて、手のひら程の大きさの何かを掘り出す。


 そこら辺に転がっている石ころのような形をした、赤色混じりの白色をした姿のそれは……、


「……一体何なんだ、それは?」


 としか言いようが無い代物だった。


 よく見てみれば石ころでは無いことが分かるし、木の実の類でも無いことは分かるのだが……と、私が首を傾げていると、得意気な顔をしたセナイとアイハンがそれを私の顔へと近付けてくる。


 すると爽やかな甘さを含んだ上質のバターのような、今までに嗅いだことのない強い香りがその何かから漂ってくる。


「この良い香り、もしかしてこれが昨日言っていたキノコ……なのか?

 全くそうとは見えないが……」


「あ、ホントですね、すっごく良い香りが漂って来ます!」


 私と、私の肩にぴょんと飛び乗ったエイマがそう言うと、ニコニコとした笑顔を浮かべたセナイとアイハンが言葉を返してくる。


「うん! とっても良い香りでとっても美味しい、変わった見た目のキノコ!」

「ほんとはめずらしい! なんどもみつかるこのもりは、すごい!」


「……なるほどなぁ。

 確かにこの香りは凄まじいものがあるし、味にも期待できそうだな」


「ですねー。

 あんまりにも良い香り過ぎて、馬達までがうっとりとした表情をしちゃっていますからね。

 ……一応言っておきますが、アナタ達はキノコを食べちゃぁダメですからね?

 キノコと草は全く別種の食べ物ですから、多分ですがお腹を壊しちゃいますよ」


 私の後に続いたエイマのその言葉を理解しているのかいないのか……私達の側で鼻をふんふんと慣らしていた馬達が、歯茎をむき出しにしての物凄い表情をし始める。


「そんな表情をしてもダメなものはダメですからねー!」


 釘を刺すように馬達にそう言ったエイマは、セナイとアイハンの方へ向き直って言葉を続ける。


「そんなことよりもセナイちゃん、アイハンちゃん。ここのキノコは掘り返しちゃっても良かったんですか?

 さっきの場所のは増えるまで待つって言っていたじゃないですか?」


「ここのはもう増えないから……。

 木が枯れちゃうと、このキノコも枯れちゃう」

「きのねからえいようをもらって、きのねをびょうきからまもるきのこ。

 ……でもここのきは、ふゆがくるまえに、やくめをおえた」


 エイマの疑問にそう応えたセナイとアイハンは、キノコを腰紐に下げた革袋にしまい込んでからタタッと駆け出し、鼻をすんすんと鳴らしながら広場のあちらこちらに木の枝を突き立てていって……そうしてから私とエイマに『手伝って!』と声をかけてくる。


 その木の枝がそこにキノコがあるとの目印なのだろうと理解した私とエイマは、先程目にしたキノコを思い浮かべながら、キノコを傷つけないようにと、それぞれの方法で木の葉を払い、土を払う。


 そうやってキノコを掘り出し……自分達が持ち帰りたいと、その表情で訴えてくるセナイ達に預けていると、森の中から枯れ葉を慌ただしく踏み抜く音と、聞き慣れた声が響き聞こえてくる。


「ディアス様~! ディアス様~!

 どちらにおいでですかー! アルナー様がお呼びですよー!」

「テカテカじっとりしていて、毛が生えてなくてツルツルしていて、それと口が大きい人がまた来ました~! 一緒にお客様も来ました~!」

「ですので急ぎ戻るようにと~……ってなんだかすっごく良い匂いがする!?」


 その音と声の主はアルナーからの伝言を届けに来たらしいセンジー氏族達だった。


 私達の匂いを追ってここまで来てくれたらしいセンジー達は、私達の姿を見つけるなり物凄い勢いで駆け寄ってきて、そうして私の側に座り込んでハッハッと荒く息を吐きだす。


 私はそんなセンジー達一人一人に礼を言って彼等が満足するまで撫で回してやってから……セナイ達に向けて口を開く。


「どうやらペイジン達が来てくれたらしい。

 ……アルナーも急いで戻るようにと言っているようだし、今日はこの辺で引き上げよう」


 まだ昼にもなっておらず、セナイ達としては遊び足りないだろうが……と、そんなことを考えながらの私の言葉に、セナイとアイハンは意外にも素直に頷いてくれる。


 その予想外の態度に私が小さな驚きを抱いていると……セナイとアイハンはなんともウキウキとした心を弾ませた態度で、収穫したてのキノコが入った革袋を持ち上げ、そこから漂ってくる香りを楽しみ始める。


 どうやら二人の意識は森歩きよりもキノコの方へと向いているようで……そういうことであれば話が早いと支度をさっと整えた私達は、センジー達と共にイルク村へと帰還するのだった。



お読みいただきありがとうございました。


次回はペイジン回かつ……以前の話の出ていたあるキャラ達のお話になります。


ちなみに洞人についてですが

再登場は次回か次次回になる予定で、そうおまたせすることはないと思います

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] ペイジンは冬入り前の販売に来たのかな? 敵でも味方でもないけど、無くてはならないカエルさんですね。 [一言] 森のバターといえばアボカドですが、これは明らかにキノコですね。 さすがエル…
[一言] 掘り返しが必要なキノコ…トリュフ系だった。
[一言] 赤い点が混じった白い石のような茸… 白トリュフじゃないですか! ペイジンがまた舌をビロビロ~ンと出して驚いて 高額提示の取り引きを試みるも セナイ、アイハンの拒否(泣き出し)で断念… …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ