魔弓使いは勘違いしている。
彼のパーティは最高の軍師たる大剣使い、偉大なる魔導師の末裔の魔術師、神々の寵児たる聖女_____そしてすべてを見通す神眼持ちの魔弓使いで構成される。
ヒュッと風を纏い、俺の放った矢が飛んで行く。その向かう先にあるのは、ドラゴンの目。
被弾_____直後、矢を起点として巨大な竜巻が発生する。
「今だ!!畳み掛けろ!」
その声に応えるように、次々にとびかかる。
「うぉおらあぁああ!!」
ゴウッと音を立て、大剣が飛んで行く。そして、翼を断った。
先陣を駆るのはリーダー、オルト・ディッセ。大剣を投げる、異色の大剣使い。力比べでは負け知らずだ。
「いくよッ!……火炎の女神よ、その灼熱の焔でもって、焼き尽くしください。焔華!」
巨大な炎が咲き誇る。その炎は、獲物を消し去るまで消えることは、ない。
このパーティの最終兵器、マリン・エディ。彼の偉大なる魔導師の末裔の、魔術師。火炎魔法で彼女に勝る者は居ない。
「あぁ、名のあるドラゴン……どうか、天への道を違えないで下さい……。貴方様に安らかな眠りを……冥道」
彼女の祈りは奇跡を起こす。天空へ続く、長い光の橋。
唯一の守護者、メイ・シリアン。天に仕える神官であり、全てを守る盾。癒しの力は信仰心であり、神の慈悲。彼女は神の寵児と言える。
彼の大剣は何であろうとも、断つ。ドラゴンの鱗、魔法でさえも。
彼女の炎はすべてを焼き尽くす。一片足りとも残さずに。
彼女の祈りはすべてを救う。敵も味方も平等に。
_____そして、長いようで短い戦いが終わる。
始まりと同じく、俺の矢でもって。今度の矢は炎を増幅させる。
ゴオッと一度大きく燃え盛り_____すべてが消えた。
……俺の援護は、役に立ったのだろうか。そう、いつも不安になる。彼らは強い。俺、ネーメ・ノードは魔弓使い。敵陣を混乱させ、自分に敵の目を集める。それが役割。派手なことは出来ない。
そんな俺だが、ここは重宝してくれる。世界有数の実力者が集う、このパーティで、である。だから、不安になってしまう。
……まぁ、彼らが求める限り、最良の結果を残し続けるとしますか。
「何でネーメはああも不安何だろうね?」
そう、マリンは言う。この疑問はこのパーティ全員に共通するものだ。
「……彼は以前、言っていました。自分は平凡だ。君らのように強い心も、力もない、と。……そんなこと、ないというのに」
メイは言う。彼は彼の実力に気づいていないのだと。
「だよなぁ。あいつの弓の腕は天才的だ。地味であろうと、ちゃんと見ていれば分かる。神眼を持っていると言うだけでは、出来ないことだ。ほんの寸分も違えることがない」
彼は天才であると、オルトは言う。あの正確な射撃は、彼以外には不可能だと。
「それに、魔法の纏わせ方も美しいです。一点に集中して纏わせること、全体に均等に纏わせること。それを一瞬のうちに行えます」
「それなぁ」
魔弓使いとは、矢に魔法を付与して使う者である。彼の魔弓使いとしてのセンスはとても高い。
「支援も攻撃も出来るのに…」
「ほんと、何で何だろう??」
_____その疑問はきっと、彼の境遇にあるのだろう、きっと。
半年近く放置してたのを少し書き足して投稿しました。