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小さな居場所  作者: 黒猫
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幸せの

絶賛口調迷子中

「何を騒いでいるのです?」


どうして貴方様が、ルーク様がここにいらっしゃるのですか。


そう聞きたいのは山々なのに泣いているせいで声が出ない。


ルーク様はディビット様の義理の兄だ。

義父様と側室との間でできた子供で、その側室が亡くなったため仕方なく引き取ったらしい。だから自分は貴族の中でもめずらしい黒髪なんだとルーク様は笑って教えてくれた。

だから独り立ちできる歳になって家を出て行ったのだ。

ルーク様が居なくなってからわたくしへの教育しつけが悪化した。ルーク様と話していた10分ほどの休憩時間は無くなり、ダンスのレッスンやお茶会を入れられるようになったのだ。


「嗚呼、アマリア泣かないでください」


ルーク様のお願いならなんでも聞きたいのだが、我慢しようとしても嗚咽が漏れて意味がない。


どれだけわたくしがルーク様にお会いしたかったか。どれだけその声で名前を呼ばれたかったか。


「あ、兄上どうして此処に?」


ディビット様が心底驚いたように問う。

するとルーク様はわたくしに近づいて、わたくしの目元を撫でながら答えた。


「お前とエマという方の噂が耳に入ってきてね。泣き虫なアマリアが泣いてないかと心配になって来てみたんだよ。やはり私の心配は間違っていなかったようだ」


私が来たんです、泣き止んで?


そう言って微笑む顔はわたくしの大好きなルーク様で、それがまた一層涙を誘う。


ルーク様、ルーク様。わたくしこれからどうしたら良いのでしょうか?この家に捨てられては生きていけないのです。わたくしの小さな居場所がなくなってしまうのです。


「ど、しましょう…っ…わたく、し…!」

「ディビットに捨てられれば行くところがない、ということですか?」


数回首を縦に振る。

ちゃんと言葉になっていないのに意味を汲み取ってくれる優しさが嬉しい。

ルーク様はみんなに優しいのではなく、わたくしだけに優しい。それが自分だけが特別だと思わせてくれてもっと依存してしまう。


「私の処に来れば良いのです、それならばアマリアも安心でしょう?」


額と額を合わせて顔が近くなる。

これは昔からわたくしを甘やかしてくれる時の動作だ。こんな場で心暖かくなるなんて事は可笑しいけれど小さいころを思い出して嬉しくなった。


「…やっと笑いました。今日の話し合いはこれでお終い、良いですね?」


頷く。

続きは明日にでもするのだろうか。明日になれば義父様と義母様にも話が知れ渡るだろうしわたくしが捨てられるのも時間の問題。

ルーク様はああ仰っていたけれど、ルーク様にまで迷惑をかけるわけにはいかない。

実家にも一度も帰ったことがない。それに父と母にも数回ほどにか会ったこともない。

そんな娘が急に家に入り浸っては向こうも気を遣う。


―――でも、今はそんなことを考えずにルーク様とお話していたい。


「ディビットも分かったね? そこのお嬢様は客間にでも連れて行きなさい。さぁ、早く」

「わ、分かりました。詳しい話はまた明日に」


急かすように、追い出すように言葉を投げられたディビット様はたじろぎながらも部屋から出て行った。

ほ、と息を吐き下を見ると割れた手鏡が床に落ちていた。


「も、申し訳ありません! 今すぐ片づけさせますので!」

「―――それは何についての謝罪?」


突拍子のない質問にメイドを呼ぼうとして、扉を開ける腕が止まる。

どういうこと?

きょとんとしているとルーク様が説明してくださった。


「鏡が割れた事に対しての謝罪なら必要ありません、私がアマリアに勝手に送ったのですから」

「勝手など…! 鏡をもらったとき、どれだけ嬉しかったか!…っ!?」


きゃあ、などとはしたない声を上げなかったことに自分を褒めたい。

とても嬉しかったです、と感謝を告げれば急にルーク様がわたくしのことを抱きしめたのだ。


スキンシップが多くなっている気がする。

数年振りに出会ってまだ少ししか経っていないが、昔ならば額どうしをくっつけることはしても抱きしめることはなかった。


「怪我が無くて本当によかった…!」

「大丈夫ですわ、どこにも怪我などしておりません」


声を荒げていることが少し面白くてとても嬉しい。

これだけわたくしを心配してくれているのだと、わたくしを考えてくれているのだと。


「―――…しだからね」

「え?」

「いいや。今日はもう遅いから寝たほうがいいです、ほらベットに入って」


手を引かれベットまで誘導される。

大人しくベットの中に入って毛布を被ると頭を数回撫でられた。


「本当に小さいころもこうして寝付かせていただいてました」

「そうですね。私も子どもの頃だった」


黒い瞳が細められる。

わたくしはルーク様の黒い目が大好きだ。ルーク様自身はあまり好きではないそうだけど。


「さて、私は仕事があるのでこれで戻りますね。体を冷やさないように」


最後にはわたくしの頬を撫でて部屋から出て行った。


明日にはこの幸せは無くなるんだわ―――


ガチャリと扉が開く音が聞こえたが、わたくしの意識は眠気の中に消えていった。


ルーク様の口調が迷子に…

身内には少し砕けた口調で、他の人には敬語でという設定なので真ん中のアマリアちゃんにはごちゃまぜで。としたら迷子みたいになっちゃったwww


ブクマありがとうございます!あと数話続くのでお読みいただけたら幸いです~!

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