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現世から来た探偵の子  作者: フェア
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第2.5話:あの頃の思い出

 わたしはエリー、村長(おじいちゃん)の孫むすめ。


 幼い頃に、冒険者だったお父さんが亡くなって、

お母さんは5歳のわたしを村において街の方に出稼ぎに行き、

村に残されたわたしはおじいちゃんの元で暮らすことになった。



 最初は警戒してて、

家出をしたり勝手に森に入っていったりして、

おじいちゃんの手を焼いたかもしれない。


 けど、そんなわたしをよく叱ってくれて、

見捨てずに投げ出さずにずっと面倒をみてくれた。



 それから1年が経ち、

6歳になったわたしは村の小さな学校に通いはじめ、

冒険者になるために剣術や魔法を熱心に学んだ。



 学校に通ううちに友達ができて、

その友達と一緒に基礎勉強をしたり、

実力の試し合いもしたりした。


 ……けど、体充魔力は伸びても剣の腕はそこそこ、

呪文学が苦手なせいで魔法もろくに使えない、

いくら努力をしてもわたしには限界があった。


 けど、そんなときは、

いつもおじいちゃんがわたしを支えてくれた。




 そして年月は流れ、1年また1年、

物心付いたとき、わたしはすでに12歳になっていた。


 12歳になれば一度、

冒険者としての実力を付ける為に"外"に出て、

2年間のあいだ冒険しなくてはならない。



 わたしは冒険を拒んでいた、

おじいちゃんと離れたくない、

ずっと一緒だった唯一の家族を見捨てたくないから。



 その思いをおじいちゃんに伝えた時に、


村長「お前のお父さんは勇敢な冒険者だった。


   任務(クエスト)中に誰もが諦めた、

   水龍(リヴァイアサン)の撃退を一人で成功させた。


   たとえその身が朽ち果てようとも……。

   何故そこまでしたのか、分かるか? 」



 わたしには分からなかった。

なぜ、今この質問をしたのかを……。


 その後おじいちゃんは荷物を持たせ、


「冒険者として冒険をすればすぐに分かる。」


と言い、わたしを説得した。



――――――――



 気持ちでは拒みつつも、

《冒険者として冒険をすればすぐに分かる。》

この言葉にわたしは動かされていた。



 学校で友達になった仲間と一緒に冒険をする。


 広い草原と森の中、海沿いと洞窟……、

見たことのなかった都会にも言ったし、

とても恐い魔物とも戦ったりした。




 そして14歳になり、村に帰れば学校卒業。


 村まであと数日のところで、ウッドベアの大群に遭遇した。



 わたしと仲間達で隊列を組んで迎え撃った。

雨降りの中、激しい苦闘を繰り広げ、事は順調に運んだ。


 と思いきや、

仲間の1人が死に隊列の崩壊し、事態は急速に悪化した。



 ウッドベアはまだ数頭残っている。


 こっちにはわたし含めて残り3人、

勝ち目がないこの状況に仲間の一人は狂ってしまった。



 笑い叫びながら、剣を右、左に大振りを繰り返し、

やがてウッドベアに噛み殺された。



 目の前で、次々仲間が死に怖くなり、

その恐怖で足が震え、わたしは全く動けなくなっていた。



 そして残った一人の仲間が、

わたしの手を引っ張って森の外まで走ろうとするが、

熊の足からは逃れられる事はできない。



 意を決した仲間が、


 「俺が囮になる! エリーは逃げろ!! 」


と叫び、残った魔力で風魔法を使い、

わたしを遠くに吹き飛ばした。



――――――――



 村に帰ってくると、

すぐにおじいちゃんが出迎えてくれた。



 雨でずぶ濡れになったわたしの頬には大粒の熱い涙が流れ、

大切な仲間を助けることが出来なかった悲しみと、

無力な自分への憎しみがわたしを支配していた。



 そして何も言わないわたしに、


村長「お前はよく帰ってきた。

   辛かっただろう……。」



 その温もりのある言葉に、

わたしは悲しみの感情を抑えることが出来なくなり、

村中に響くほどの大きな声で泣いた。



 今なら、

おじいちゃんが言ったあの言葉の持つ意味が分かる、

それは、


『仲間、家族を見捨てたくなかった。』



 わたし達は家族(なかま)だった。


 そして、その家族(なかま)にも、家族(みうち)がいる。

だから守り、守られ、支え合うものなんだ。



――――――――



 無事に学校も卒業し、

わたしは晴れて自由になった。


 けど、おじいちゃんは、


まだ行くべきではない。

仲間を失った傷は大きい。


と言って冒険するのを止めさせる。



 特に何をすることもなく、

ただいつも通りに家事をすることになった。




 それから数日が経過し、

わたし達に家に"堕とし子"がやってきた。



 黒髪に見たことのない服。

筋力のない体に、低すぎる体充魔力。


 冒険者ではないのは明らかだった。



 紅茶を注ぎに入った時、

彼はおかしい顔をしていて思わず微笑む。


 注ぎ終わり、

恥ずかしくなったわたしはすぐキッチンに戻る。



 そして話が長々と続く、

飽きて眠くなりかけていた時、

おじいさんの紅茶の合図が聞こえた。


 すぐに向かうと、

おじいちゃんではなく"堕とし子"の方のカップが空っぽだった。



 空のカップに紅茶を注いでいると、

堕とし子の彼がわたしを見ている。


 こ、こんなに近くで男の人に見られたのは初めて……ッ。


 すぐにその場を立ち、キッチンへと戻った。




 夜も遅くなり、

"堕とし子"はおじいちゃんに導かれるように空いている部屋へと向っていき、

そのまま部屋に入っていった。


 その後、おじいちゃんから堕とし子の名前を聞き、

仲良くするように言われたが、正直信用は出来ないと感じた。


 いずれ、変な行動を取るんかも知れないし……。




――――――――

――――――――




と思っていたけど、

変な行動を取ったのはわたしの方だった。


 風呂に入っていたマコトさんを、

雷魔法で感電させてしまったから……。

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