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現世から来た探偵の子  作者: フェア
3/9

第1.5話:新しい家族

チクタク、チクタクと、時計の針が進む音が聞こえる。


何の変哲も無い振り子時計が壁に掛けてあり、

長針が12の数字を指し、短針が6の数字を指した頃、ボーンと鈍い音が鳴り出した。



客間のソファーに座っていた俺は、あたり全体を見渡す。


光源は蝋燭、床には熊の皮の絨毯、テーブルは大理石を使ったもの。

そして今座っているソファーは、横になればすぐ眠れそうなくらい柔らかい。

ソファーの居心地が良く、ウトウトし始めた頃、


向こうのキッチンから、一風変わった女の子が紅茶を運んできてくれた。



髪の色は桃色で、肌は綿のような白色、目の色は紅茶の様に綺麗な茶色。

髪型はハーフアップ、身長は160cmくらいで、スタイルは普通で健康そうだ。

若そうな見た目から年齢は12~14歳と推定。



女の子「紅茶をどうぞ。」


俺「あ、どうも。」



 あれ……俺って、

女の子に紅茶を出してもらった事って、今までで一度でもあったっけ?

それどころか、話しかけられた事もあったか分からない。


 そんな事を考えていると、

だんだん意識し出してしまい、恥ずかしさで顔が真っ赤になる。

心臓も高鳴ってしまっている。

 もっと人とコミュニケーションをとっておくべきだった。



 そんなこんなでモヤモヤしていると、

女の子は微笑んだ後、背を向けキッチンの方へと姿を消した。


そして代わりに薄桃色の白髪の老人、村長が入れ違いでキッチンから歩いてきた。



 手にはお菓子の入ったカゴを持っている。

村長が向かいのソファーに腰をかけ、

お菓子のカゴをテーブルに置いて話しかけてきた。



村長「さて、お主が……

   堕とし子だと言う話を聞いたのだが、それは間違いないのかね?」



俺「分かりません。

  そもそも堕とし子自体、よく分かりません。」


 知らんがな。

……まぁ、俺が村長の立場なら同じような事を聞くな。

知らない人を家に住まわせたくは無いし……。



村長「ふむ~……。

   じゃあ、今から三つの質問をしよう。

   出来る限り答えてくれ。」


俺「はい。」



 村長は軽く咳払いをし、

"目元とこめかみの間に指を当てて"、俺の顔をマジマジと見ながら質問する。

そんなに見られると、面接の時を思い出して少し緊張する。




村長「魔法を使えるか? 」



俺「使えません、使えるはずがありません。」



 ……何言ってんだこの爺さん。

人間が魔法なんて使えるはずが無いだろ。


 それともなんだ?

童貞を貫き通せば本当に使えちゃうのか?

冗談もほどほどに……。




村長「そうか、じゃあ次の質問だ。

   魔生物や魔物を知っているか? 」


俺「……この目(肉眼)で実際に見たことが無いです。」



 なんなんだ? 魔生物? 魔物??

生きてて動く植物とかドラゴンとかか?

そんなのが本当にいたら世界が終わるだろ。


駄目だ、頭がおかしくなりそうだ。




村長「じゃあ次、

   ……お主がここに来る前は、どんな世界にいた? 」




 この質問を聞いたとき、俺は何も答えられなかった。

ただ、その時に頭を過ぎったのは、ここに来る前の出来事。




正義ぶって騙されて"落ちた"。




村長「……そうか、おぬしが見た世界は、

   "自分にとって都合の良い幻想"と、

   "考えたくも無かった悲痛の連鎖"か……。」

俺「……ッ! 」


村長「すまんの、ちょっとばかり

   頭の中を覗かせてもらった。」


俺「は!? どうやって!? 」



村長「信じないやも知れんが、

   ワシは相手の思考を見ることができる、

   ……魔眼を使うことができるんだ。」



俺「う、嘘だ! 嘘に決まっている! 」


俺『そんな話がありえるか! 』

村長『そんな話がありえるか。』



俺『真似をするな!! 』

村長『真似をするな。』



俺『嘘だ! ありえない!! 』

村長『嘘だ、ありえない。』




――――俺は愕然とした。



 そもそもあり得るはずがないのだ。

超能力とか宇宙人とか、何の根拠も無い非現実的な存在が……。



 だが、今それが目の前で起こっている。

この現実で……。



村長「そんなに頑固になるな。信じろとは言わないが、

   もう少し柔軟な思考を持って考え方を変えるんだ。」



 何も言い返せる言葉が無い、図星だからだ。



村長「ワシは説教くさいのは嫌いだ、これ以上のことは言わん。

   それに、お主が"堕とし子"だという事に納得したわい。」


俺「……その、"堕とし子"って何ですか? 」


村長「ゴードンの言ったことを思い出せ。」



《500年前に、

 この世界を救ったあの伝説の~"》


俺「その伝説って言うのは? 」




村長「……時は遡り、グラン記154年の戦乱の世。

   遥か東の未踏の孤島に"天世の使者達"が降り立った。


    その使者達は、戦狂の国に蝕まれた国の皇女を救い、

   孤島を目指した狂人達と、戦狂の国を打ち滅ぼした。


    後に英知を掲げ技量を尽くし、孤島に小さな城を築き、

   この世に終焉を齎すとされる古の龍と決戦し、龍を滅した。


    その後、使者達は忽然と姿を消し、

   孤島には、先の決戦の犠牲者の墓石と、壊滅した城だけが残された。


    そして我ら人類は、この世に降り立った天世の使者達を、

   "天ノ神"に棄てられた"堕とし子"と呼び讃えた。」




 ……なんだこの話は、

聞く限り普通の人には出来ない芸当だ。

それ以前に、"龍を滅した"ってのがよく分からない。



村長「まぁあくまで伝説、

   500年前の話なんて本当にあったか知らんからのぉ。フォホホ」



 ここで全否定するのか。


 ……まぁ所詮は噂、

明確な資料とか写真があるわけじゃなさそうだ。



――――――――



 それからしばらく、村長とこの世界についての会話をした。


・人も魔物も魔法を使える

・魔法は全16属性【火水風土 炎氷雷地 熱音木金 光影聖闇】


・魔道具の利便性

・魔導列車や魔導船、(魔導動力)飛空挺の乗り物


・魔物の脅威

・魔物の種類【人族系 獣族系 水族系 空族系 竜族系】


・人種の共存【亜人 獣人etc.】

・人種による身体や体充魔力量の違い


大きく分ければ8つ、この話を簡単に聞いた。


 分かりやすく言うなら、

世界観はゲームのドラ○エ風で、乗り物や魔物はファ○ナルファ○タジー風。


 人種関連は複雑だが、そのうち慣れていくと思う。



 魔法に関しては分からない事が多いが、


魔法を使える人は(魔法陣を書く)"書陣"や"詠唱"を使い、

(手で作る)"印""や"短詠唱"や"無詠唱"だと威力が下がるらしい。



ただ、"俺の体は体充魔力(※)が凄く少ない"し、

"今は使い方も分からない"と村長が言っていた。




 キッチンの方から再び桃色の髪の女の子が歩いてきて、

飲み干した後のティーカップに、静かに紅茶を注いでくれる。


 俺の位置からは女の子の横顔が見え、

その紅茶を注ぐ姿が、凛としていて美しかった。



紅茶を注ぎ終わった後、

なぜか女の子は顔を赤くしてキッチンの方に戻っていった。


(か、可愛い……。)




村長「今のはワシの孫娘、名前はエリーだ。

   今年で15、成人する歳。

   歳を取ると時間が早く感じるのぉ。」


俺「え!? 15で成人するの!? 」



村長「こっちでは当たり前だ。


   そうだ、すっかりお喋りに夢中になっていたのぉ。

   言い忘れていたが、お主はもうワシらの家族だ。」



俺「あ、えと、これからよろしくお願いします。」


村長「そう堅くなるな。家族じゃろ? 」



俺「すみませn……ありがとうございます。」




しばらくの間、微笑ましい気の流れを感じた。



これからは、この世界の新しい家族と共に生活していくんだ。


もう、過去のようにはならないし、させない。

体充魔力:体に蓄える事ができる魔力。"魔力容量"とも言う。


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