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現世から来た探偵の子  作者: フェア
2/9

第1話:知らない世界

「ガラガラガラガラ…… 」



耳を塞ぎたくなるほどの大きな音と、体を揺さぶる強い振動で目を覚ます。


目の前には白い布の様な生地の屋根、周りには袋包みや木箱が置いてある。

床には木の板が敷き詰められていて、この場所全体が揺れていた。



(どこだここは?

 確か俺は、窓から落ちて気が付いたら木の上にいて、寝たら…… )



「ガコンッ! 」


俺「いってぇ!! 」



急にこの場所全体が大きく揺れ、

身体が宙に浮き盛大に尻餅をついて、その痛みに思わず大声を上げた。

すると布の外側から、


男「おぉボーズ! 目ぇ覚ましたんか~! 」


と活気のありそうな男の声が聞こえてきた。



俺「あ、えと、ここはどこですか? 」


男「あぁ? なんだ、お前さん馬車も知らねぇ~のかぁ? (笑)」


俺「え! これって、馬車……だったんですか!? 」


男「おうよ! 依頼の報酬金をコツコツ貯めて、

  やっとの思いで買った俺の自慢の愛車だ! 」



初めて乗ったけど、凄く揺れるんだな。

あと、目で見なくても男のドヤ顔がなんとなく想像できた……気がした。



俺「あの、俺はどうしてここに? 」


男「お前さん、木の上で寝てたんだろ?

  あのままあそこにいたら、"ウッドベア(※)"にケツから丸呑みされてたぞ! (笑)」



確かに木の上で寝てたが……、"ウッドベア"って何だ? "熊"なのか??



俺「ウッドベアって、なんですか?」


男「バッカでぇいw 熊の化けモンだぞ!

  お前さんは熊も知らねぇで"外"をウロついてたのか?w 」



やっぱ熊か、ベアって言ったしな。

……そうだ、他に聞くべきことがあった。



俺「これからどこに向かうんですか? 」


男「ビギンス村(※)、この世界で最初に出来たって話がある村だ。」


ビギンス? 確か、『始まり』って意味がある英語? だったか……。



って、いやいやいやいや待て、ここは日本だろ!

そんなおかしな村の名前なんてさすがにある訳ないだろ!



俺「あの、おかしな事を聞きますけど、いま何年ですか? 」


男「……オーロ記204年だが、どうかしたか? 」


俺「あぁいえ、気になっただけです。アハハ 」


どうしよう、ますます訳が分からなくなった。

オーロ記ってなんだよ! 平成とかじゃないのかよ! 本当にどこなんだここは!!



男「お前さん、面白いヤツだなぁ……気に入った!

  おらぁ変わったヤツがでぇ好きなんだw 良かったら名前聞かせてくれ! 」


俺「……え? 」


この状況はさすがにマズい、日本語が通じるだけでも救われているのに、

ビギンス村とかオーロ記とか意味わかんねぇのに、どう答えればいいんだ……!?



男「なんだ? 名前も言えねぇのか? 」



さっきまでの行動で不信感が高まっているのかもしれない……。

早く答えなければ……ッ!


男「あ~、自己紹介を忘れてたなw

  俺の名前はゴードン、よろしくな! 」



もう駄目だ、下手に嘘をついてもバレるかも知れない……、

いや、逆に考えれば、普通に名乗った方がいけるんじゃないか!?



俺「俺は、高城(たかぎ) (まこと)、マコトって呼んでくれ。」


ゴードン「その……名前はッ! お前さん、もしかして!! 」



急に馬車が止まり、布の外側から男が顔を出してきて俺をマジマジと眺めだした。

その顔は傷だらけで、普通の人から見たら外国人マフィアの様な恐い顔だ。



俺「ひぃぃ! なんかすみませんッ!! 俺はただの軟弱な一般ピーポーでs……ッ!」

ゴードン「500年前に、この世界を救った

     あの伝説の"堕とし子達(※)"と似た名前だ!! 」


俺「…………へ? 」


ゴードン「そうだ! よく見れば服装だって、この世界の物じゃないもんなぁ!!

     いや~ホント、この目で"堕とし子"を見たのは初めてだ!! 」



伝説? 堕とし子? 相変わらず訳が分からないが、

何やらこの世界で、過去に誰かが有名になったようだ。




ゴードン「おっと、つい興奮してしまった。」


といい再び馬車を走らせる。


あの会話の後から、ゴードンが独り言をブツブツと言いながら考え事をしている。

変に緊張しなくて良い分、余計に気まずさが沸いてきた。


ゴードン「そうか~堕とし子か~……どうりで何も知らない訳だ。」

「まさか……、500年前のを……。」「どうすれば……。」



――――――――――


しばらくして、馬車が止まり、

ゴードンと誰かの話し声が聞こえる。


男「ゴードンさん、一人で来るのはいいけど、

  護衛の一人や二人くらいは雇ったほうがいいんじゃないか~?

  村の冒険者が暇してるんですよ~。良かったら次、どうです? 」


ゴードン「まぁたその話か、こちとら金に余裕がねぇんだ。

     次からは、もっと稼げる村にしてから言ってくれ。

     ほら急いでんだ、さっさと門を開けろ。」


男「へいへい……。」



その後、ギギギと門が開くような音が聞こえ、また馬車が動き出す。

馬車から顔を覗かせて見ると、

周りにはログハウスに似た家が立ち並んでいて、凄くおしゃれな雰囲気だ。



そういえばさっきの会話……、

この村で何があったのか、ゴードンに話を聞いてみよう。


俺「この村で今、なにが起きているんですか? 」


ゴードン「あ? ……あぁ、なんて言えばいいんだろうなぁ。

     ここの村の役人共が金にがめつい連中ばっかりでな、

     村の金を裏で抜き取って、自分達の利益にしてるって噂だ。」


俺「噂ですか、役人達を()める事は……?」


ゴードン「簡単に言うけれどよ、

     何か訴えたところで、バカにされて帰されるだけだ。」


俺「じゃあ村人達と協力して、証拠を見つけ出せば……。」


ゴードン「"証拠を物理的に残すことは出来ない。"

     それに、その役人共が全ての責任を村長に押し付けて、

     村人達を騙してやがる! もう何を言っても無駄なんだ。」


俺「……そうですか。」




……その村長の立場が、ここに来る前の自分と似ている気がした。



↓この村の役人達にとって、責任を擦り付けれる存在が"村長"だった。

↑先生や学生達にとって、責任を擦り付けれる存在が"探偵の子"だった。




ゴードン「暗い話はもうやめよう。考えたって無駄なんだ。」

    「それより、お前さん……いや、"マコト"だったか、

     帰る場所も住む場所も無いだろ? 」


俺「……はい、多分。」


ゴードン「おらも人を雇える金がねぇし、

     わりぃけど村長に頼んで、この村に置いていくことにするわ。」


俺「え! あの話の後に言いますかそれ!? 」


ゴードン「大丈夫大丈夫! 村長はいい人だし、

     堕とし子の話をすれば確実に居候させてくれるだろ。

     それに村長のとこに居れば、

     多少なりともこの世界のことを学べるだろうよ。」


俺「た、確かに悪い話ではないですけど、

  村長にとって迷惑じゃ?」


ゴードン「だが、他に行く宛てはないだろ? 」


俺「は、はい。」


ゴードン「任せろよ。言いように話しつけてくるからよ。」



そしてタイミング良く村長の家に到着し、

ゴードンは「馬車の中で待ってろ。」と言い、家の中に入っていった。



待ち時間が暇で、何となく村長の家を眺めた。

三階建てのログ建築で、縁の下は鼠返しになっている。


家の前のプランターには、綺麗な黄色い花があり、

入り口にはランタンの様なものが入り口に掛けてあった。


裏側には暖炉の煙突部分が見える洋風仕様。



これはなかなか……というか凄く良い家だ。

ここに住めると思うと、なんだか浮き浮きしてきた。

そもそも、三階建てのログハウスって存在するのか……?



ゴードンが行ってから10分が経過した頃、

ようやく中から戻ってきて、グッドサインを見せ軽く微笑んでいた。



ゴードンが近寄ってきて、俺を馬車から降ろし、


ゴードン「短いようで長かったな。

     たまに会いに来るから、それまで元気にやってろよ! 」


と別れの言葉を告げ、


俺「あ、ありがとう! ゴードンさん! 」


俺はすかさず礼を言ってゴードンを見送った。




村長の家の入り口には、村長らしき人が立っていて、

俺は村長の近くまで歩いていった。


村長「君が堕とし子のマコト君かね? 」


俺「はい。」


と答えると、村長はやさしく微笑み、家に迎え入れてくれた。




村長「ようこそ、我が家へ。」

ウッドベア:茶色い毛色の熊の魔物。体長2~3m 体重300キロ。

      二足歩行が可能、主食はハチミツ、好物は肉。


ビギンス村:森林の中にある最古の村。

      ログ建築の家が特徴で、村民は大人しい人が多い。

      多人種と共存しているが、今後の雲行きが怪しい。

      伝統ある祭り【面々(かぶり)】がある。


堕とし子達:終焉から世界を救った伝説の存在。

      童謡や昔話があり、一般人の間で親しまれている。

      真夏の満月の夜に、国総出で祭る事もあるとか。

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