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004「変わりゆく時」

「変わりゆく時」


・・・ある日、突然(とつぜん)「手首・肘(ひじ)・膝(ひざ)・足首」等の関節(かんせつ)が荒(あ)れて乾燥(かんそう)していた。・・・

私の乾燥肌に気付いたのは、お兄ちゃんで

私は、お兄ちゃんが買ってくれたボディークリームを事ある毎(ごと)に塗(ぬ)る様になりました。

・・・無意識化(むいしきか)に水分を多く取る様になる・・・

「お兄ちゃん飯(めし)」しか食べていなくて「塩分を取り過ぎている」なんて事は

絶対に無い筈(はず)なのに、私は喉(のど)が渇(かわ)いて御茶を沢山、飲んでしまい

何時(いつ)も学校に持って行っている水筒(すいとう)の御茶が、足りなくなってしまう事が増えました。

・・・給水機(きゅうすいき)の水を飲んでから、異常な程(ほど)の喉の渇きを感じる・・・

余(あま)りにも喉が渇いて、学校に設置(せっち)されている「給水機の水」を私は飲みました。

幾(いく)ら飲んでも飲み足(た)りなくて飲んでいたら、お腹(なか)がいっぱいになって

気持ちが悪くなってしまって、学校を早退(そうたい)させて貰(もら)いました。

・・・肘から手首、膝から足首の皮膚(ひふ)が硬(かた)くなり鱗状(うろこじょう)に変化する・・・

私の保護者は「お兄ちゃんとアブサン」で、まだ学校の時間だから

お兄ちゃんを動揺(どうよう)させたくなくて

お兄ちゃんが暴走(ぼうそう)した時、フォローしてくれるアブサンにメールだけして

一人で寮(りょう)の部屋に帰り、一人で自分のベットに寝ていました。

体の変化に気付いた時には、どうしたらいいか分からなくて

なけなしの記憶を辿(たど)り、水風呂に入ってお兄ちゃん達の帰りを待ちました。

・・・桜は進む症状(しょうじょう)に怯(おび)え、孤独(こど)と戦いながらマーフォークに変化した。・・・


桜(サクラ)は…浴槽(よくそう)に溜(た)めた冷たかった水が、自分の体温で温まり

生温(なまあたたか)くなった事をとても不快(ふかい)に感じ

ベットから此処(ここ)に来るまでに擦(す)り剥(む)いた傷の所為(せい)で、深紅(しんく)に染まり

錆(さ)びた鉄(てつ)の臭(にお)いのする水に、吐(は)き気と恐怖を覚(おぼ)えて、後悔(こうかい)する


『お兄ちゃん…早く帰ってきて!

アブサン…早く、お兄ちゃんを連れて帰って来てよ!』と

桜は泣きながら震(ふる)える声で呟(つぶや)いていた。


昼休み…何も知らない故春(モトハル)とアブサンは、微(かす)かに木漏(こも)れ日降(びふ)り注(そそ)ぐ窓際(まどぎわ)で

何時も通り『コバちゃん!アブちゃん!助けてよ!』と、やって来る

数人のクラスメイトや他クラスの同級生達に囲(かこ)まれ過ごしている


故春はその中で、教科書を開いて勉強しながら昼食を取り

アブサンはその横で番犬(ばんけん)の様に佇(たたず)み、一緒に食事をしているのが常(つね)だった。


『アブちゃん携帯光ってるよ』

故春が、勉強に関する事なら愛想良(あいそうよ)く優(やさ)しく詳(くわ)しく答えるので

頻繁(ひんぱん)に勉強を故春に教えて貰いに来る

クラスメイトの女の子達が、アブサンの携帯を鞄(かばん)から引張り出す


『メールみたい!』『誰から誰から?』と騒(さわ)ぐ、女の子達から

携帯電話を取り返し、アブサンが桜のメールに気が付いた時には

メールを受信した時間から数時間程度、経過していた。


アブサンは少し思案(しあん)し、学校に居る時間総てを勉強時間にしている故春に

桜からのメールの事を話すと、読んでいた教科書も、食べ掛けの弁当もそのままに

教室から走り去ってしまう


『食べ終わったのを確認してから話すべきだったか…』と、アブサンは溜息(ためいき)を吐(つ)き

『ごめん、妹ちゃんが急病なんだ』と、女の子達を引き下がらせ

後片付けと、早退する為(ため)の必要書類を自分のと故春のを作成提出して

2人分の荷物を持って、故春の後を追った。


故春は寮の部屋に着き、もどかしそうに玄関(げんかん)の扉(とびら)を開ける

そしてその先に見えるダイニングキッチンの床(ゆか)に

時間が経ち少し縁(ふち)が乾き、中心部が朱色(しゅいろ)に変色した血痕(けっこん)を見付ける


『桜?桜!何処(どこ)だ桜!』と、半狂乱(はんきょうらん)になりながら

血痕の繋(つな)がる桜の寝床(ねどこ)、2段目ベットの上の段・・・それから、浴室へと辿り着く

浴槽には、服を着たまま深紅の液体に浸(つ)かる桜の姿があった

制服の白い部分が赤っぽいピンク色に染まっていた。


故春は桜の息を確認し、急いで桜を浴槽から半分引き上げ・・・手を止める

そこへクラスメイトの自転車を借り、急いで帰ってきたアブサンが合流する

それに気付いた故春は、アブサンに助けを求めた

『アブサンどうしよう…俺、桜をどうしたら良い?』

故春の顔は血の気が引き、動揺を隠(かく)せず…情(なさ)けない事になっている


桜の状態を確認したアブサンは、故春の肩(かた)を強引に掴(つか)んで目を合わせ

『故春、このまま死別で御終(おしま)いにするのと…

次に何時、桜に会えるかどうかも分からなくなるの…どっちが良い?』と

眉間(みけん)に皺(しわ)を寄(よ)せ、真剣に質問をした。


『死なせたくない…でも、俺に助けられる方法は無いのか?』

故春は桜を浴槽に戻し、縋(すが)る様に浴槽の縁に掴まる

『ばぁ~か…そんなのあったら

もう既(すで)に助かってる方向か…助ける準備を整(ととの)えてる頃(ころ)だろうよ』

アブサンは、桜に触(さわ)る事で濡(ぬ)れた故春に

洗面所の棚(たな)に置いてある、故春用のバスタオルを掛けてから電話を掛ける


『お久しぶりです…御無沙汰(ごぶさた)しております。アブサン・スミスです。

急な連絡で失礼します。今日は折り入って御願がありまして電話しました。

助けて下さい…モト…いえ

同室の小林故春の妹「桜」が、「マーフォーク」に成りました。

小林桜は負傷(ふしょう)しています。発見が遅(おく)れて、衰弱(すいじゃく)しています。

浴槽に溜めた水の中に居ますが…水が色付く程の怪我(けが)をしている様子です。

怪我の程度は分かりません、2~3時間程度この状態かと思われます。』

アブサンからは、何時もより数段無愛想(すうだんぶあいそ)な声が発せられていた。


何故(なぜ)か途方(とほう)に暮(く)れ、疲(つか)れた様子のアブサンが

『取敢(とりあ)えず、水入れ替(か)えるぞ…』と、桜に手を伸ばす

故春はその手を押し留め『ありがとう…でも、後は任せてくれ』と

アブサンに掛けて貰ったタオルをアブサンに預(あず)け

『お前まで濡れる事は無いよ、俺がやる!指示してくれ』と微笑んだ


アブサンの指示に従い・・・

シャワーを勢(いきお)いよく出し、浴槽の栓(せん)を抜いて

排水(はいすい)の穴(あな)に桜の体が触れない様、故春は濡れながら桜の位置を動かしキープする

その途中で意識を取り戻した桜が『お兄ちゃんだぁ~…』と言って故春に抱き付く

故春は桜にされるがままになっていた。


数時間後・・・

故春の唇(くちびる)が水の冷たさで紫色になった頃

濃い緑色一色の軍服に身を包み武装した集団が、了解を得ずに部屋に入ってくる


その無遠慮(ぶえんりょ)な男達は狭(せま)い中、洗面所に居たアブサンを行き成り突き飛ばし

浴室の扉に激突させ・・。

浴室まで侵入して、桜から故春を乱暴に引き剥がし

今度は、故春を浴室の壁(かべ)に突き飛ばす


突き飛ばされたダメージを残したまま、男達を押し退け

故春に駆け寄り怒るアブサン

その言葉は、故春の方に突き付けられた銃口(じゅうこう)で留められ

桜は、青い液体の入った袋に詰められ連れて行かれる


『嫌だ!行きたくない!お兄ちゃんと一緒が良い!』と

高音域(こうおんいき)で振動(しんどう)する様な、液体の中で叫(さけ)ぶ桜の声が響(ひび)いていた。


それは怒涛(どとう)なる一瞬の出来事

『手荒な真似(まね)をして申し訳なかったが、一刻を争う事態だったんだ

悪く思わないでくれたまえ』武骨な男からの言葉に

故春とアブサンは、不快感しか感じなかった


そして今度は、2人も他の部隊らしき男達に引き渡される

故春は低体温の為に立ち上れず、担架(たんか)で運び出される事になった

アブサンは自分の名前を告げ…

何かしら脅(おど)しを掛けて、それに無理矢理に付き添(そ)った。

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