027「この先の生きる理由」
「この先の生きる理由」
パパサンが自分の居場所を見付け
積木の姉である墨色に染まった女性と行動を供にし
その女性と生活を共にするようになった
アブサンと桜、桜の為だけに存在する故春は・・・
「おばさん」の強い要望により、そのままおばさんの家に居候する事になった。
アブサンはおばさんの家を中心に生活基盤を立て直し、暇を見付けては
色々な墨色に染まった人々と話し、白い子供達から噂話を聞き
墨色に染まった人々が作り上げた文献を読み漁りを繰り返す
そうして、今回の事が
「総ての巡り合わせが悪くて出た結果」なのだと理解し、落胆する。
「故春が桜を妹だと偽り、育てなければ」
「両想いではあったのだから…せめて、途中で桜の思いを受け止め
間違いを正して、2人が恋人同士になっていれば」・・・等と
アブサンの頭の中で、間違っていた選択と駄目だった理由が増えて行く
「最初から両想いだと、桜が理解していれば…
誰かの精神的な攻撃で桜が心をすり減らし、「糧」を必要とする事も無く
故春が桜の「糧」となって死に傀儡人形になる事も無かった」かもしれない・・・
その事実が、アブサンの中に憤りだけを残し
どうする事も出来なくて苛立ちだけがアブサンの中で募って行った。
アブサンは煮詰まってきた思考に嫌気が差して、気分転換の為
まだ、目を通しきっていない数冊の本を片手に一人、図書館を出る
木々が鬱蒼と茂る森の中の図書館の扉を開けると
木漏れ日の射す池の畔の四阿のベンチに
途方に暮れた様子で、故春に寄り添う様にして座る桜の姿があった。
アブサンは溜息を吐き、意を決して四阿に足を向ける
四阿の下、桜に寄り添われた故春は
相変わらず姿勢を正し、伏し目がちな虚ろな瞳で一点を見詰めている
アブサンはゆっくり一度目を閉じ、心を落ち着かせ
『朝飯はもう食べたのか?』と、颯爽と桜に近付いて
桜の頭を乱暴にガシガシと撫でまわした。
黒く色付いた長い髪がクシャクシャになり
半分とじ掛けていた桜の目が、驚きで大きく開いて瞬きを繰り返してから、
アブサンの方へと向いて、色白な肌が桃色に染まる
『あ…アブサンおはよう!』
疲れた表情の微笑と、空元気を臭わす明るい声がこだまする
『おはよう…で、朝御飯は?』と、アブサンが言うと
桜の腹の虫が大きく鳴る
桜は更に顔を赤く染め、恥ずかしそうに笑う
そんな桜に対して、故春はやっぱり無表情で動く事も無い
アブサンは「活きていない故春」を再確認し、悲しくなりながらも笑い
『帰って飯にするぞ』と、桜を促し
故春に『桜と手を繋ぎ、歩いて帰るぞ』と囁く
故春はアブサンの指示に従い、桜をベンチから立たせて手を桜に差し伸べる
桜は故春に差し出された故春の手と自分の手を繋ぎ
アブサンは桜の空いた手を引き歩きだした。
水面はその光景を見詰め
桜の服の下から覗く、腕や足に輝く白い鱗を見て微笑んだ
『おはよう』
掛けられた言葉に、アブサンに表情が凍り付き鋭い目で水面を睨み付ける
『水面さんおはよう!見て見て私!お兄ちゃんと同じ髪の色になったのよ』と
桜は親しい人と出会った様に嬉しそうに微笑んだ
『あら、ホント!やっと人間の社会に戻れる姿に戻ったのね
ソレドコロカ「前より人間に混じって目立たなくなた」んじゃない?』
水面の言葉にアブサンはより一層顔を顰め
『何の用事ですか?』と、突き放す様な声色で水面に話しかける
『あら、冷たい』と言って、水面はアブサンの耳元に近付き
『故春を維持するのに手を貸してあげてるのにイケナイ子ね』と囁く
アブサンは「水面に傷付けられた首筋の傷」に触れながら
『うるせぇ~ばばあ!そっちも俺を利用してる癖に…』と小さく悪態を吐いた。
水面とは、挨拶だけをして別れ
家に帰り着き、朝食を食べると・・・
そこから夜までは「ヴァンパイヤの睡眠時間」に入る
アブサンは嘗て、故春が幼い桜にしていた様に桜を寝かし付け
故春を連れて、桜の眠る寝室を出る
罪の意識の強弱で、御日様に対する耐久性が違う「この世界ヴァンパイア」は
罪の意識が強い程、日の光で死に易く
罪の意識が弱いかったり、罪を犯して無かったりすると
アレルギー程度で済む・・・と言う「特性」を持っている
勿論、桜も例外ではなく
ヴァンパイアの特徴が消えた今でも、昼の光には耐えられない
なので、睡眠時間は朝から夜までになっていた。
アブサンは、おばさんに桜の事を託し
故春を連れて、朝の明るい日差しの下の出て行く
故春の周囲には、桜から抜け出したモノ
マーフォークからヴァンパイアに変わる時に出て行く何かが漏れ出し
日の光に輝き、幻想的な雰囲気を醸し出してくれている
アブサンは緩い温い笑いを浮かべた。
居住区域を抜けると、昼間でも薄暗い森に入る
今日、そこには・・・
何処ぞの自衛団達を撃退する為に
木漏れ日の中で、墨色に染まった「日に耐性」のあるヴァンパイアが集っている
アブサンは最近まで、逆の立場にあった事を思い出し
少し複雑な気分になったが・・・
ヴァンパイア達は、アブサンと故春を仲間として迎えてくれていた。
元自衛団の団長だったパパサンが、自衛団からの情報を電脳的に盗み出し
対策を積木の姉である自分の恋人に語り、微笑んでいる
「パパサン…変わり身、早!こっちに馴染み過ぎだろ」
アブサンはパパサンの首筋に自分と同じ傷がある事に気付き
馴染んだ理由を納得しつつ、そちらからは視線を逸らした。
新しい仲間達が、アブサンと故春を手招きする
その中にも、パパサンやアブサンと同じ立場の者が数人混じっている
彼等にもアブサンやパパサン同様、首筋に似通った傷がある
彼等も此処で生きる為に、血を与え与えられたヴァンパイアの僕になったのだろう
故春の維持にも、ヴァンパイアの僕になった自分が生きて行く為にも
「人間の血」は必要だった
アブサンは自分の首の傷に触れ自嘲気味に笑い
『さて、今日は何処の部隊を狩りに行く予定かな?』と
予定表を受け取り、確認して作戦会議に参加した。
『昼食の後、数時間後に奇襲でヨロ?』
墨色に染まった女の子が、偵察用に霧の様な闇色の魔物を送り出す
アブサンは『焚き火の火に気を付ける様に指示出しとけよ』と
桜より10歳くらい年下であろう女の子の頭を桜にするように撫でる
女の子は嬉しそうに
『アブサンがヒトのモノになって無かったら
絶対に私のお兄ちゃんにしたのになぁ~…ちょっと残念』と笑い
アブサンは
『あれ?諦めるんだ?望めば…
桜と故春が此処で幸せに生きていける間だけで良ければ
妹として可愛がってあげるのに』と、故春が言いそうな言葉を口にした。
女の子が大喜びし
その言葉を聞き付けた他の子供等が『ズルイ!』と、妹や弟に立候補し始める
墨色に染まった子供等の殆どが孤児だった
『あらまぁ~御優しい事』
遠く離れた場所、朝食を食べる前に桜が故春と一緒に居た四阿で
水面がアブサンの台詞を感じ取り目を細める
そして、両手を軽くポンっと叩き
『と、言う事は…
桜が居る限り、君は裏切れなくて私の物でいてくれるのね』
水面は幸せそうに笑い
『あの子は私の物、私に想いを寄せた私に気持ちを向けた者』と
歌うように繰り返して、四阿の下で一人踊っていた。
恋愛を書く時、読む時・・・
「エロなBL」か「ホラー」「サスペンス」的なモノが主体な為
本気で恋愛を書こうと思ったら迷子になってしまいました。
しかも、書き上がった作品は、ホラーチックですw
何か、ゴメンナサイ…。




