024「意外な場所の意外な真相」
「意外な場所の意外な真相」
『やるなら…シガーソケット経由で電源確保して
車のバッテリー上がり覚悟で、チェーンソーで茨を切って進んでけ!
コードの足りない分は、俺が車を運転してサポートしてやるから!』
・・・遠くから、聞き覚えのある声が聞えて来た・・・
私は咲き誇る薔薇の花のベットの上で、薔薇の香りに包まれ
夢現の世界で、水面さんが語った夢物語を夢見ていました。
『えぇ~…でもそれ、重いんでしょ?』
故春が嫌そうな顔をして半笑いで拒絶する
『どう考えても、コレが最良の手段だろうが!』パパサンが少し声を荒げ
アブサンが『仕方ない…その役は俺が引き受ける』と溜息を吐いた。
・・・何処からともなく、故春とアブサンの声も聞えて来る・・・
私はお兄ちゃんの声を聞いて
「迎えに来てくれたんだ」と、嬉しくなりました。
ざわめき蠢く茨の木々が静かになり動きを止める
『あらあら…折角、感動シーンを演出しようと準備したのに』
少しばかり退け者にされていた水面が呟き
『それじゃ…また、後で会いましょう』と言い、背中に蝙蝠の様な翼を生やし
茨の森の奥へと飛び去って行く
続いて・・・
エンジンの起動音と、チェーンソーが奏でる音が響き
木を削る音が鳴りだした。
チェーンソーで、茨を斬り進むアブサン
斬った木々を蹴り、車が通れる道を開けながら
チェーンソーのコードを持って、コードが邪魔にならない様に気を配る故春
コードが届かなくならない様に車を移動させて行くパパサン
暫く進むと・・・
斬った茨の木切れと刺をタイヤが踏み、車のタイヤがパンクして
次第に車が傾いていく、そこで車は前進できなくなった
チェーンソーのコードも限界で、ギリ通り抜けられない程度の枝を残し
斬り進めなくなってしまった。
故春が溜息混じりに
『こんな事なら…途中で車で突っ込んでもらえば良かった』と言う
『それやったら、運転手が危険に晒されないか?』
アブサンが気になった事を口にし、故春はその答えに
『俺がやる訳じゃないから大丈夫!』と笑う
『ソレは本気で言ってるのか?マジデカ?それとも、冗談か?』
パパサンが車の中で顔を引き攣らせ、苦笑いをした。
『で…この先はどうやって切り抜ける?』
アブサンは故春を見て、故春もアブサンを見る
何にも思い浮かばなかったらしい2人は、視線でパパサンに訴え掛ける
『うわぁ~他力本願だな、おい』パパサンは少し考え伏し目がちに
『あぁ~今、此処に積木が居てくれたらなぁ~』と零す
『もしも、居たらどうする?』
その言葉と声を聞き、パパサンが驚きつつ喜び顔を上げ
茨の先に、行方不明になっていた積木が姿を現した
姿を現した積木は、総てが墨色に染まっていた。
積木を見たパパサンは『どうして…』と言葉を詰まらせる
パパサンに疑問に積木は悲しげな微笑で答え
故春とアブサンは、その結果を重く受け止めた。
「人間からマーフォークに成り
マーフォークから何かの拍子にヴァンパイアに成る」
その「何かの拍子」が「何なのか」を幼い日に水面から聞いていた故春は
気付きつつ知らない振りをしていたパパサンに同情する
故春から来ていたアブサンも、自衛団の職務の使命感の為に
認める事が出来なかったパパサンに同情する
2人は黙ってパパサンの肩をポンポンっと優しく叩き
『「親友の積木さん」と「今の立場」…どちらを捨てるか…
自分にとって、何が大事か考えて選ぶと良いよ…』と囁いた。
故春とアブサンは・・・
細い枝をどうにかすれば、通り抜けられそうな場所を捜し
比較的細い枝を協力して蹴り折り道を作って行く
そこにパパサンも黙って協力した
『パパサン、決めれたの?』故春の質問にパパサンは答えなかった
そうこうする内に場所は開き
故春とアブサンとパパサンは茨の森の奥の開けた場所へと辿り着いた。
墨色に染まった積木がパパサンを出迎える
『積木…俺に何か言う事は無いか?』
パパサンは暗い表情で問い掛け
『えっと…ごめんね?』積木は困った様子で首を傾げる
『所で…パパサンと積木さんの関係って何なんだ?
もしかして、女の子等の噂通り恋人とか?』
自分達に立っている噂を無視して、故春は2人に向かって質問した。
『はぁ?』剣呑とした雰囲気でパパサンが振り返る
積木は一瞬驚き、その後…堪え切れず笑い出す
爆笑する積木に対し、呆気にとられる故春とアブサン
何んとなくその場に同席していた水面は
その場で腕を組み、事の成り行きを静かに見守っていた。
『そっか…新入生には、話しが行き渡って無かったんだっけ』
一人で納得した積木は、無防備にパパサンの腕に抱き付き
『パパサンが何故にパパサンなのか、2人は知らなかったんだね』と言い
積木は、パパサンの了承を取って
自分の服のポケットから取り出した携帯の写真を2人に見せ
『パパサンは既婚者で、父親になった事があるからパパサンで
パパサンの子供の母親は、僕の母親でもあったんだよ』と言った
沈黙する故春とアブサン
2人の前に差し出された写真の中には、パパサンと積木
そしてその二人に挟まれる形で、明らかに年長な女性と赤子が写っている
『親子?』アブサンが無造作に訊く
『凄いでしょ?3年前まで、パパサンは継父だったんだぞ』
積木は楽しそうに言った。
『所で…積木さんは誰を殺してそうなったんだ?』
アブサンの質問に積木の表情が強張る
パパサンは暗い表情で『積木…お前、自分の姉を殺したのか?』と
真相を突く言葉を小さく呟く
積木は辛そう
『恋患いで、母さんと新しい弟を殺した罪を償わせただけだよ』と微笑んだ
余りにもデリケートで、とっても深く重たい御話に
部外者である故春とアブサンは黙り込むしか無かった。
ポンと一つ、水面が手を叩いた
『あら、大変!タイムリミットが近づいているよ故春君!
御姫様にキスをして起こさなきゃいけない時間!さあ!ど~ぞ!』
明るい声が周囲に響き、違う意味での沈黙が生まれた
故春は唖然とし、アブサンの冷たい目で水面を見詰める
パパサンは暗く沈んだ辛そうな表情で積木を見て
見詰められた積木は、伏し目がちにパパサンを見つめ返している
自体は収拾がつかない状況で、静かに確実に混乱していた。




