019「桜を捜しに行くに向けて…」
「桜を捜しに行くに向けて…」
・・・墨色の肌の女性が、桜を要塞都市から連れだした。・・・
私は自分そっくりな顔立ちの女性に導かれ、水の中のトンネルを潜り
緑豊かな森の中に有る、綺麗な湖に辿り着きました。
そこには、墨色の肌な人達の生活する
絵本とかで見た事がある様な感じの、田舎って感じの集落がありました。
・・・『真っ白なヴァンパイア…花ちゃんは純真なのね』と、女性達が笑う・・・
女性達は、私を『自分達と同じヴァンパイアだ』と言い
「水面さん」と言う人を筆頭に、私を「花ちゃん」と呼びます。
何故か、懐かしい様な気がする呼び名です。
私は行き場を無くしていたので、好意的なその人達の御世話になる事にしました。
・・・『花ちゃん、王子様が迎えに来るまで待っていましょうね』・・・
女性達が、白いドレスを私に着せて微笑んでいます。
お兄ちゃんが何時も私にしてくれている様に、髪を梳いてくれます。
「王子様」とは誰の事でしょう?
私は密かに「お兄ちゃんだったら良いのにな」って、思いました。
・・・直射日光の入って来ない森の中、木漏れ日だけが時を告げる・・・
虫が居ます、鳥がいます、犬猫だけではない色々な生き物達がいます。
雨が降ります、水溜りが出来ます
此処に居る人達は、水溜りの水を汚染された水と呼んで
態々、処分する事は有りませんでした。
・・・桜は今まで育ってきた環境との違いに驚きながら、森の生活に馴染んでいった。・・・
桜が行方を晦まして1週間以上が過ぎた
故春は昨晩、アブサンに強制的に休息を取らされ体力を回復し
平常心を取り戻者す為、何時もより早い時間に厨房で朝食の支度をしていた
故春の傍には、手伝いをする訳でもなくアブサンが待機し
自衛団で働く、桜を本気で心配する「桜のお腐り仲間」が
隣接する食堂から2人を観察して「故春とアブサン」に「萌え」を感じ
癒され、心を潤わしていた。
2人きりの厨房、アブサンが故春に話し掛ける
『故春、昨晩のアレは人間か?それとも…』
「ヴァンパイアか?」と言う言葉を飲み込み、アブサンは大きく溜息を吐く
昨夜、電気も付けていない部屋の薄闇の中
故春に会いに来ていた、自衛団での認識名「正体不明の異邦人」な女性は
故春の様子を見に来たアブサンに対し
故春に対してしたのと同じ様に、頬にキスをして
驚き固まるアブサンの横を通り抜け、軽やかな足取りで通路を曲がり
アブサンの視界から消え
殆どの防犯カメラの死角近くを通って、自衛団の敷地内で消息を絶った。
アブサンの飲み込んだ言葉を理解しつつ
故春は曖昧に、肯定とも否定とも取れない微妙な微笑をアブサンに返す
頬にキスして逃げる女性に、問題が無い訳では無いが
頬にキスされたぐらいで、不用意に警報ボタンを押す方も如何なものか?
御蔭で、大きなトラブルになってしまったではないか
・・・的な事を故春は思っていた
故春は、頬にキスされ驚いたアブサンが、
勢い余って、壁に設置されていた警報ボタンを押さなければ・・・
あの再会を自分だけの秘密にするつもりだった。
だが、あの再会は「故春の意にそぐわない形」で混乱し
トラブルとして、検証される事になってしまった
あの女性の気配りと配慮・・・
1割の防犯カメラの映像の中に、通り過ぎる「服の端」と言う痕跡を
故意に残してくれていなければ
今頃、自衛団での「故春の立場」が不味い事になっていたであろう
故春はその一点で女性に感謝しながら
その女性の意図()いとを一人、頭の中だけで考えていた。
何時の間にか、食堂のメンバーが来る時間になっていた
夜間警備のメンバーの為に結成された
朝食用の厨房係りのメンバーが、この場にやって来て驚く
『先輩!おはようございます!』
全員が声を揃え、故春とアブサンに挨拶をする
アブサンは『ん』とだけ言って軽く手を上げ挨拶を返し
故春は『おはよう、ちょっと材料使わせて貰ったよ
残りはよかったら、皆さんで…』と言って、自分の分とアブサンの分を取り分け
厨房から食堂へと移動した。
厨房からは、やたらテンションの高い
故春の料理を称賛する言葉が複数、ダイレクトに聞えて来る
『アレには…
「褒めてくれてありがとう」って、返事を返すべきなのかな?』
『いや、いらないだろう…』
食堂の片隅、朝食を食べながら2人は他愛の無い雑談をした後
今日の予定を話し合った。
各専攻科目の単位と出席日数に、問題は無い・・・
今まで真面目に出席していた分だけ、多少休んでも大丈夫だ
自衛団基準の護身術の実技も、壁の外に行けるレベルの合格点に達している
単独行動は禁止されているが・・・
故春とアブサンは、2人で一緒に行動するつもりなので
そこも、問題にはならないだろう
バイトは、桜が居なくなった日から当分の休みを貰っていた
当面の生活費は、貯蓄があるので問題無い
そして・・・
自分の姉を捜す為に自衛団に居る、積木主導の遠征部隊が今日
他の部隊と、この要塞都市を護る議会主催の軍との合同で
壁の外に出て、周辺の魔物除去&要塞都市を脅かす生き物討伐に出掛ける
そんな予定になっている
積木がリーダーになっている遠征部隊は今回も
どの舞台より遠くに遠征し、動き回る事だろう・・・
マーフォークでない故春とアブサンの所属している部隊に参加の要請は来ていないのだが
『パパサンに直談判して、積木さんの部隊に参加させて貰ってみるか?』
アブサンの提案に故春は『勿論、俺もソレを考えていた』と同意した。
「要塞都市の中で捜しても見つからないなら…きっと、外にいるのだろう」
桜が居なくなった翌日に、故春とアブサンはその結論に達していたのだが
要塞都市から出るには許可証が必要で、その許可証は簡単には取得できない
今回の様な討伐隊も、月1回しか出ていないので
このチャンスを2人は逃す訳には行かなかった
故春とアブサンは、菓子折りを持って登校する子供等に付き添い
付き添いの終着地の中学校前で、パパサン達と合流し
貢物をパパサンと積木に渡して討伐隊への参加の許可を取った。
積木は、自分の部隊に所属していた数人の娘が
桜が居なくなる原因の一旦を担っていた為に責任を感じていたらしく
『普段は賄賂なんて受け取らない主義だけど…
2人の参加を許可する為に逆に率先して受け取らせて貰うよ』と言って
自衛団で一番偉いパパサンを説得するのを手伝ってくれ
『金曜日な今晩から、3連休の土・日・月曜日の夕方までの3泊4日
炊き出しの御飯楽しみにしてるよ!
それと、金曜の夜に食べる御弁当…ハンバーグが入ってると良いな』と
故春が炊き出し係り決定な発言と、メニューのリクエストを口にした。




