018[残酷な真実の過去]
[残酷な真実の過去]
まだ、親に扶養して貰っていた子供の頃・・・
「小林 故春」は、父親と
継母と、継母と父との間に生まれた子供「小林 桜」の親子4人で
自宅から遠く離れ、背の低い子供が行っても面白くも無いのに
桜が行きたがっていたと言うだけで、遊園地に出掛けて来ていた。
『面白くない!もう、帰りたい!』
此処に来たがっていた癖に、身長制限で乗り物に乗れない為
案の定、桜が駄々を捏ねる
妹ばかり大切にする2人の親は
来てから、荷物を預けてから、それほど経っていないのにも拘らず
『仕方が無いから、帰ろうか』と、話し出した。
普段から我慢ばかりさせられていた故春は、今度こそはと
偶然見付けた、自分の身長でも乗る事が出来る乗り物を前に
『一生に一度の御願だから、1つだけでも乗り物に乗らせて欲しい』と懇願した
だが、しかし・・・
何時も通り、普段通りに『故春は、お兄ちゃんなんだから』と
チケットを購入する事も許されず、帰る事を強要された。
何時も故春が我慢させられている御蔭で、桜は我儘に育ち
『アタシに逆らったらパパとママに言い付けちゃうから』と
故春の事を当たり前の如くに、下僕の様に扱う御子様になっていた
だから今日も、我慢させられる故春を見て
『ざまあみろ!』と、桜は笑っていた
故春と桜の保護者は、そんな桜の暴言を耳にしても
ただただ本当に、楽しげに笑っていた。
あの日の昼過ぎ・・・
遊園地に来て1時間も経たず、乗り物に1つも乗らずに帰る事になったその時
遊園地にヴァンパイアが現れた
何処からともなく、悲鳴が上がる
黒い靄の様な魔物と呼ばれる生き物が日差しを遮り、人を捕獲し
人に近い形をしたヴァンパイアと呼ばれる生き物が、空から舞い降り
血の臭いを周囲に漂わせ始める
園内を中心に、要塞内の街の壁へと向かって
火の手が次々と、あちこちから上がっていた。
故春は驚き、逃惑う人々の波に流されながら逃げていて親と逸れ・・・
何故か運の悪い事に、桜とだけ会えてしまっていた
その状態で助けを求めるだけでなく、命令してくる桜
『疲れた足が痛い、早くパパとママを探して連れて来て!
早くしないと、お兄ちゃんが嘘吐きだって悪い子だって言ってやる
お兄ちゃんパパの連れ子なんでしょ?一人だけ家族じゃないんだから
アタシの命令をちゃんと聴きなさいよ!』
故春はだた只管、桜の存在が不愉快だった。
桜の為に親からの愛情を受けれなかった気がしていた故春は
無言で黙って足早に、桜から離れた
『待って!置いて行かないで!』
桜の声が聞こえてきたが、故春は無視して進む
暫くすると、桜の悲鳴が聞こえてきた
桜の後ろにヴァンパイアが現れ、逃惑う桜を捕まえる
『嫌だ助けて!馬鹿兄!見てないで助けてよ!』
桜の言葉を聞いて、故春は薄笑いを浮かべた
悲鳴が轟く
『お前が僕に言った言葉を今、返すよ…桜、ざまあみろ!』
故春は、引き裂かれても暫く生きている姿に
「カマキリとかみたいだな…」と、思いながら桜が殺されていくる所を
静かに大人しく見守った。
見守る故春の元に、赤い液体を滴らせ
霧の様な魔物を纏った、綺麗な顔立ちのヴァンパイアが舞い降りる
墨色の肌をしたヴァンパイアの女性は、美麗に微笑み
『さっきのの兄なのに、綺麗な顔立ちをしているのね
私好みだわ…将来有望だから見逃してあげる』と
故春の頬にキスをして魔物の黒い霧の中に溶けて消え
別の獲物に向かって飛び去って行った。
故春はキスされた頬を手の甲で拭い
唯一、血の繋がった父親の姿を探して歩き
荷物を預けてあるコインロッカーの前で、父親と継母を見付けた
でも、見付けた親は・・・
継母は勿論、父親も「故春の無事」を喜ぶ事はしなかった。
やっぱり『桜は何処だ!』と、妹の事ばかり気にする
故春が『桜はヴァンパイアに殺された』と告げると
『お前は妹が嫌いだから、そんな事を言うんだろう!』と
父親が、故春の頬を故春が立っていられない程の力で叩いた。
「桜が死んで、父さんだけでも一人占めにできると思ったのに」
当時まだ、6歳の男の子だった故春は
ジンジン痺れ、熱を持って行く頬を押さえながら一筋の涙を零した
『邪魔臭いから、そこに居ろ!』と、立去る父親
それを追い、故春をワザと突き飛ばして追掛けて行く継母
桜を捜す為、置き去りにされた故春は『死ねば良いのに』と呟いた。
走り去る両親の前に、さっきのヴァンパイアが姿を現した
『はぁ~い!その願い聞き届けぇ~』と
父親の頬を叩き、その力だけで父親はグシャッとコインロッカーに叩きつけられ
頭の大きさだけを半分にして、何かを叫んだ後に動かなくなった
継母はその光景を見て戻ってきて、故春を護るかと思いきや・・・
故春を楯にして、命乞いを始める
『世の中そんなモノか…夢を見るだけ無駄だったな』
溜息混じりに呟く故春にヴァンパイアは
『そうなのよ…世知辛い世の中よね』と、継母から解放してくれた。
手の無い腕から赤い液体を撒き散らす継母
『私、この手の女嫌い』と、継母を切り刻んでいくヴァンパイア
故春はその光景を眺めながら静かに、此処へ来た時最初に荷物を預けた
赤紫色の扉のコインロッカーの前に座り込んだ。
暫くすると世界が静かになり
火の燃える音と、遠くから子供の啜り泣く声が聞こえて来る
故春が、声に誘われ行ってみると
桜と背格好の似た女の子が黒い霧が食事をする血の海の中で泣いていた
妹の面倒をみる事でしか、親との繋がりを持てなかった故春は
何かに導かれる様に、女の子の元へ行く
そして、女の子の瞳から自分と同じ絶望を感じ
女の子に手を差し伸べ、優しく抱締めた。
女の子が少し落ち着くと、故春は「着替えた方が良いな」と思った
泊り掛け予定で持って来た荷物の事を思い出し
故春は母の死体からコインロッカーのカギと家の鍵と財布を取り出し
途中、水道で汚れを落とす為に2人で水浴びをし
ロッカーの荷物を出して、妹の着替えを女の子に着せ
自分は自分の汚れていない服に着替える
空は日落ちて暗くなり、町を焼く炎だけが赤く蠢いていた
故春は女の子を連れて歩き
燃えていない遊園地の御土産屋さんを発見して、寝泊まりする事にした。
その晩、女の子は高熱を出した
故春は売店の商品を掻き集め必死で看病した
結果、故春の頑張りの甲斐あって大事には至らなかったが・・・
翌朝には女の子の黒い髪が白く変化し
女の子が話せる様になった頃には、女の子の記憶が無くなっていた。
故春は、妹を育て直そうと思い
女の子には自分が兄だと説明し、女の子に「小林 桜」と言う名前を与えた
そして故春は、家に帰ろうとしたけれども電車もバスも無かった
それどころか、町は誰に消火される事無く燃え続けていた
故春は取敢えず、燃えてない御土産屋さんを拠点に生活する事を考え
暫く新しくなった、妹の桜と一緒に過ごした
死体が腐敗臭を放ち腐り出した頃
何処からともなく、大人達が姿を現した。
その後、2人は・・・
ヴァンパイアに襲われ廃墟と化した要塞都市から保護された孤児
ヴァンパイアに両親を殺され、違う要塞都市に保護された
6歳の兄「小林 故春」と3歳の妹「小林 桜」と言う
本物の兄と妹になったのだった。
深夜、自衛団の仮眠室・・・
アブサンの配慮で薬を使い、眠らされていた故春は目を覚ます
過去の夢、妹を新しく交換した頃の夢を見ていた故春は
枕元に座り、自分の髪を撫でていた人影に笑い掛ける
『久し振り、えっと…十…四~五年振りになるのかな?』
故春に話しかけられた相手は笑って
2人が出会った頃の様に、相手から故春の頬にキスをした。




