017「行方知れず」
「行方知れず」
・・・雨が止み、豪雨の爪痕は総て元通りに戻った。・・・
私はお兄ちゃんと一緒に居る事を楽しみにしているのに
お兄ちゃんは最近、とても素気なくて私と距離を置いています。
・・・生活は元通りなのに、桜に対して好意的だった女性達の態度が変化していた。・・・
久し振りに出会ったお兄ちゃんとアブサンの女友達の皆が
何故か、私に辛く当たってきます。
最初、私には何でそんな事されるのかが良く分かりませんでした。
・・・『アナタ継母が産んだ浮気相手の子供で、故春の本当の妹ですらなかったんでしょ?』・・・
お兄ちゃんの女友達が言いました
『私、知ってるのよ…ちゃんと調べたんだから』と
『故春は、名ばかりでも「戸籍上の妹」だから大切にしている演技をしているのだ』と
私はお兄ちゃんの優しさを勘違いしていたのだと実感し、悲しくなりました。
・・・故春の恋人だと言う女性が『故春が迷惑している』と、桜を更に追い込んでいく・・・
私が今居る場所、立ち位置は
私が帰って来るまで、その女性の場所になっていたそうです。
私はお兄ちゃんとアブサンの恋人達に責め立てられ
今居る場所が本当なら、私が居てはいけなかった場所なのだと知らしめられ
居場所を彼女等に返却する為、お兄ちゃんにコレ以上嫌われない為に
出て行く事に決めました。
・・・桜は故春とアブサンの「女友達の嘘」に騙され、積木に手紙を預け姿を消した。・・・
昼休みの時間に遊びに来ると思って桜を待っていた故春とアブサンは肩透かしを食らい
桜の姿を探して昼食を食べそびれ
桜に持たせていた防水携帯に桜は出ず、メールも返してこなかった
何度も2人は電話を掛け
学校終りからバイトまでの時間にも姿を現さない桜の事が気に掛かり
嫌な予感がして、故春とアブサンは急遽バイトを休み桜が居る筈の家へと戻った。
故春は落着きなく扉を開け『桜!』と、大きな声で呼び掛け室内に入る
返事は無く、そこに桜の姿は無かった
一緒に戻ったアブサンは、事故や事件の可能性を考慮してパパサンに電話する
取り乱し何度も桜へ電話を掛ける故春に
アブサンが『積木さんが桜からの手紙預かってるって』と告げ
『開封して読んで貰うか?』と訊く
故春が了承してパパサンが読み上げ、アブサンの携帯から発せられる
スピーカーからの手紙の内容を告げる言葉は、アブサンの眉間に皺を寄せさせ
故春を静かにぶち切れさせる様な内容だった。
『ちょっと、嘘吐きな糞アマ共を血祭りにあげて来るから
アブサン、桜を見付けて保護してやってくれよ』
爽やかに笑い立ち去ろうとする故春
アブサンは
『いやいやいやいや…故春よ!そんな糞の事は放置して置いておこうか
そんな事より、一緒に桜を捜しに行くぞ!』
故春を羽交い絞めにして引き留めた。
電話越しに事態を把握したパパサンは
『取敢えず、お前等…無作為に探しても見つからないだろうから学校に戻ってこい!
自衛団のPC使って、防犯カメラの映像から行方を捜そう』と提案し
自衛団を私情で動かして協力したいと言う要望を故春に伝える
携帯からは微かに・・・
「積木も協力する」と言う「意思のある言葉」が聞えてきた。
アブサンは、半ば強引に故春を連れて学校に戻る・・・
戻る途中、桜に名指しされているとは思っていなかった自称「故春の彼女」が
故春を発見して駆け寄って来る
彼女は、怒った顔を他人に見せた事の無かった故春の視界に入り
公衆の面前で・・・
『君は本当に信じられない事をする女だな、自称だとしても気持ちが悪い!
僕は君の様な嘘吐きな女を恋人に持った憶えも、恋人にしたいと思った事も無いし
僕の妹を僕の名を語って、傷付けて良いなんて許した覚えも無いよ!』と罵倒された
彼女は一瞬、怯み・・・
故春の形相に怯えながら『私はそんな事を言っていない』と
『私がそんな事を言った証拠が無い』『信じて欲しい』と言う
故春はそんな言葉を聞く耳持たず
『君の所為で行方不明になった僕の妹が無事に戻って来ても
君達のやった事は、決して許さない!もし、桜が無事に戻らなかったら…ころ』と
アブサンに口を手で塞がれるまで、罵声を浴びせ続けた。
ソレと同時期に送信され着信したメール・・・
桜を気に入っていた積木の「全校生徒」へ向けた
「嘘を吐き、女の子を傷付けた者を炙り出して断罪したい」と言う、威嚇射撃メール
それに貼り付けられた動画を見て、名指しされた彼女は言葉を失った
故春も動画を見て、桜を虐めた女性達に対して
更に、剣呑とした刺し殺す様な目付きで彼女等を見る様になった。
続いて着信したメールには
「桜を見付け出し次第に保護して、嘘を吐かれたのだと教えてやって欲しい」と言う
御願が書かれていた
メールを確認した故春が、少し和んだ様子で
『後で積木さんには、御礼と桜の写真流出に対する抗議をしなきゃな』と呟いた
『それより先に防犯カメラ映像の私的流用で、積木さん…怒られんじゃね?コレ!』
アブサンがボソリと小さく言った。
少し気が晴れた故春とアブサンは・・・
これから不特定多数から制裁を受けるであろう放心状態の虐めっ娘集団を放置し
自衛団の本部へ向かい、何事も無く辿り着く
そして、本部のPCルームの扉を開けるなり
音声付きの防犯カメラ映像を送付して一斉送信メールを配信した積木が
『桜ちゃんを絶対に見付けだしてあげるから』と走り寄り
故春の両手を握った。
手を握られ、少しオロオロする故春に対し
『積木は、数年前に虐めが原因で行方不明になった
自分そっくりな顔の姉を捜し続けているから、ちょっと暴走気味な所は有るけど
許してやって欲しい』と、パパサンが積木の行動をフォローする
『で、何か有力情報は有りましたか?』とアブサンが言うと
PCに向かっていた自衛団のメンバーから
『昼休み前に大学の防犯カメラの前で「2組の集団」に立て続けに虐められて以降
何処にも映って無いんです。』と、残念な情報が寄せられただけだった。
それ以降の時間、防犯カメラの映像の中だけでなく
桜の目撃情報も、全く手に入る事が無かった
『姉さんみたいに居なくなる女の子が現れるなんて…』
積木が悔しそうにテーブルを叩く
故春も積木と同じ様な暗い顔をして
『桜が他人の言葉に惑わされない様に
もっとちゃんと2人で、理解しあえるように話をしておけばよかった』と
後悔し、自衛団の情報処理室の片隅で気落ちしていた。




