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012「仮定される気持ち」

仮定かていされる気持ち」


・・・団長のパパサンがむかえに来て、故春モトハルとアブサンはサクラを連れてとなりを訪問ほうもんする・・・

私は隣りから聞こえてきた「悲鳴と物音」から想像して、内心

怒りくるったメビナさんが、心変わりしたフレルトさんに対して

「暴力を振るっているのではないか?」と、勝手な想像をしていました。

・・・「悲鳴と物音」が続く中、パパサンが当たり前の様に開いた隣りの家の扉の向こう・・・

黒いもやの様なモノに足をつかまれ、おそわれながらも抵抗し

手当たりしだい物を投げまくるフレルトさんの姿がありました。

私的にちょっと想定外そうていがいな事態です!

更に想定外な事に『なんだ魔物か…』と、パパサンが開けた扉を閉め

お兄ちゃんとアブサンも、何事も無かったかの様に私を連れてマンションをあとにしたのです。

・・・『あの状態を放置して良いのでしょうか?』動揺どうようしまくる桜・・・

私の言葉にパパサンは勿論もちろん、お兄ちゃんとアブサンも笑顔で『自業自得じごうじとくだから』と答えます。

あの黒い靄は何だったのでしょうか?私の疑問を知ってか?知らずか?

お兄ちゃん達は、私を連れてメビナさんの行方ゆくえを追います。

・・・マンションから離れると、マンションを包む薄い黒い靄が見えた。・・・

私が黒い靄に気付いておどろいていると、お兄ちゃんが私の頭をでてくれました。

黒い靄についてパパサンが

『アレは浮気された者達の怨念おんねんみたいなモノだから害は無いよ』と、教えてくれました。

でも先程、実害の有る光景を目にした気がするのですが気の所為せいなのでしょうか?

・・・桜を連れた一行は、車に乗り込み大学へと移動する。・・・


桜が初めて連れて来てもらえた、故春とアブサンの通う大学には

桜が乗っている水槽付きの電動カートは勿論

色々な一人乗りの乗り物が、本当に無駄な程に縦横無尽じゅうおうむじんに行きっている


『この周辺に水槽付きのカートの替えは無いぞ、事故ったら大変だ

くれぐれも、ぶつかったりぶつけられたりしない様に気を付けてくれよ』

と、パパサンが桜に注意をうなが


ぶつかる方はかく、ぶつけられる方はどうやって気を付ければ良いのか?

その説明は無いままで、パパサンは上手に乗り物を避けながら一人で校内を進んでいく


桜が進めずに困っていると『大丈夫だよ』と、故春が手動でカートを押して

アブサンが少しだけ先回りして、故春と桜をエスコートする

2人は、安全に桜を学内の目的地に誘導してくれた。


一足先に進んでいたパパサンに、大学の玄関ホール傍の事務所付近で追い付き

パパサンをふくめた一行は、大学内に有るとっても大きな自衛団の事務所に到着とうちゃくする


丁度そこへ、水中探索に出掛けていたマーフォークなメンバー達が

特に大きな情報の収獲無しで帰ってきて

その中に偶々居た、赤いうろこの美人なマーフォーク

ビーチサンダルを履いた水着姿、上半身裸のツミキを発見し

『ツミキさんって、男の人だったんですか!』と、桜が一際ひときわ大きな声を上げ

緊迫感きんぱくかんに包まれていたはずの、その場に居た全員を笑わせる事となった。


男女問わず、ツミキの外見に感する愚痴ぐちが飛ぶ

『あぁ~うん!分かる!分かるよぉ~その気持ち!』

『これで男だなんて詐欺さぎだよね!』

『そうそう!ズルイよね!女として嫉妬しっと出来るレベルに達してるよね!』等

その後、男のマーフォークであるツミキに失礼な台詞がしばらく続き


その中で『ツミキって名前自体、女の子っぽいよね』と、言われたツミキは

積木ツミキはファミリーネーム、名字みょうじですよ?』と言って、ファーストネームを

その名前の似合わなさから、新しい沈黙ちんもくと周囲の注目を手に入れた。


積木は一度、咳払せきばらいをし

『で…防犯カメラ監視部隊はメビナを発見できたのか?』

自分が留守中の情報収集を始める


個人個人、複数の画面を前にして画面を監視していたメンバーは

積木の質問に対し、申し訳なさそうにして首を横に振る

他のメンバーも似た様な反応を見せた。


皆からの返答に・・・

流石さすが、身内!やっぱ此処ここのメンバー相手だと、勝手が違うなぁ…』

パパサンも積木も同様、落胆らくたんの表情を浮かべ

「メビナが2択のどちらを選んでも、見付けださなくてはイケナイ」と2人は零す


『人魚姫になるなら、最期を看取みとりたいし

魔物の仲間入りを選択するなら、阻止そししたい』


その2択の意味が分からない桜は水に浸かりながら首を傾げ

『メビナさんの事、そっとしておいてあげる事はできないんですか?』

と、パパサンと積木に向かって言った。


パパサンが困った様子で微笑み

桜は、積木からまず余談として「人魚姫シンドローム」の話しをされる


世の中には「最初で最後の恋」と言う気持ちでしか

恋愛できない人間が存在するらしい・・・

恋人に裏切られても、相手への気持ちを忘れられずにうつ状態に落ちいる者や

ストーカーになってしまう者もいるそうだ


そして、その中には「片思いをこじらせてしまう者」もいて

愛されてもいないのに、相手の為に自己犠牲をしまず

人魚姫宛にんぎょひめさながら、恋人の為だけに生きて命を投げ出す者もいるらしい


そしてマーフォークは、その気質を強く持つ者が多く

身も心もささげる「大人の恋」の後先で


相手に裏切られてしまった時・・・

御伽噺おとぎばなしの人魚姫の様にだまって身を引き、その身を残さず消えるか

恋の思い出になるモノを相手諸共あいてもろとも、全て消し去ってしまう…と言う


恋愛経験0な桜は「大人の恋」の定義を理解する事の無いまま

実は、人魚姫の原作を知らない状態なので

ちゃんと話しを聴いてはいたが…理解が出来ていなかった。


『この世界の人魚は、御伽噺の人魚より古いタイプの2股の人魚だからかもしれないけど

御伽噺に出て来る人魚姫のごとくに

「深く愛するがゆえ、相手の幸せを願いいさぎよく身を引く」そんな事は、ほぼ無い

メビナが、そちらを選ぶ可能性は低いだろう…』

積木の説明・・・

桜は恋愛経験も無く、人魚姫の原作すら知らないが故に何も言えない


『そもそも、御伽噺の人魚姫ですら

自分の姉達が提示した「恋人を殺す」と言う選択肢せんたくしに迷いを見せたのだから

現代の人魚姫が「恋人を殺す」と言う選択の方を選んでも

仕方が無い事だとは思わないか?』

積木の同意を求める言葉に対し、桜は話しが分からぬまま困惑し

故春とアブサンに助けを求める様に視線を走らせる


桜の内心に気付いた故春とアブサンは

「まだ、連れて来るのは早かったか…」と、2人して少しばかり後悔した。


そんな光景を見兼ねたパパサンは溜息を

『積木…まだ、鱗がはがれた理由を確定するのには、早いかもしれないぞ?

今、思い付いたんだが…メビナは女性だろ?

ちょっと前にやった結果での、受胎じゅたいの可能性も考慮こうりょに入れてみてはどうだろう?』


積木が意外と純情な人だったらしく

何かを想像してパパサンの言葉に赤面し、動揺を見せ会話を中断させる


そのすきを突いてパパサンは・・・

『メビナは此方の出方を熟知しているだろうから、人海戦術じんかいせんじゅつに切り替える

マーフォークなメンバーと組んで、出られる者は捜索隊に参加して欲しい』

皆に指示を出し桜の前で初めて、団長らしさを際立きわだたせた。

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