6 目覚め
.........ピィピィ............
.......と....り?
.......ここどこ?
沈んでいた意識がゆっくりと浮上すると、徐々に思考がはっきりしてくる。
重たい目蓋をなんとかこじ開けると、射し込んでくる光の眩しさに少し目がしょぼしょぼした。
何度かまばたきを繰り返すと、年期がありそうな焦げ茶色の天井が目に入る。
なんだか、あれだなぁ。まっくろのクロスケ的なものが沸いてきそうな雰囲気だな。
まあ、地球じゃないみたいだしそういうファンタジックなものもいるかもだけど―――
そういえば今さらだけどここ森...じゃない。
部屋をぐるっと見渡すと私の寝ている場所のほかにもいくつか清潔そうなベッドが置いてあった。こじんまりとした薬品のような独特のにおいのする場所はなんとなく保健室を思わせる。因みに私が寝ているらしいベッドは窓際だった。カーテンは閉まっていたが、隙間から射し込む光がちょうどわたしの顔にあっているので眩しかったようだ。
―――ここは病院なのかな?
木造の、少し暗い湿った空気は、田舎独特のの落ち着いた雰囲気がある。わたしの足に近い壁の方には日にやけた分厚い本が数冊おいてあった。
...これは、あの時のおっさんの部屋なのか....?といってもあの時は意識が朦朧としててあんまり覚えてないんだけど....
そういえば、結局わたしを拾ったのはあのおじさんなのかな?
たぶんそうなんだろうな。命は助けてもらえたみたいだけど、わたしはこれからどうなるのかなぁ?
まぁでも、どっちにしてもあの森で見つけて貰わなかったら今頃は死んで―――――ああ!!!!
あの命の恩人のオオカミもどきさんは!??
あれ?え、え!??どうしたんだっけ?あのあと――――
記憶をさかのぼるも、オオカミもどきさんにお乳を分けてもらったところで途切れている。
.......だめだ、思い出せない。
おじさんがわたしをここまで連れてきたってことは.....オオカミもどきさんと鉢合わせ....したのかな。
え、そ、それは......オオカミもどきさん強そうだったけどだいじょうぶかな.....
ああでも、あのあとオオカミもどきさんがわたしを放置していった可能性もあるからね。うん。
そうだったら少しさみしいけど.....。
またいつかあえるかな。
うん、元気になったら絶対に探して会いに行こう...!
それにしても、いつまでも、オオカミもどきさんって呼ぶのはなんだかなぁ。
オオカミもどきさん、最初銀色にみえたから呼び名シルバーでもいいかと思ったんだけど、子供のオオカミもどきみたらそっちの方が銀色っぽかったなぁ。おかあさんの方は灰色って印象になったよ。
.......彼女の呼び名グレイにしよう。うん。かっこいいし。
..............安易とか思わない。どうせ捻ったところで痛々しいネーミングになることは想像に固くなし。
天井をじっと睨みつけるように眉根を寄せて考えていると、部屋のドアが開いた。
反射的に視線を向けると入ってきた人物とバッチリと目が合う。
あれ、前にみたおっさんじゃない?この人誰だろ。まぁ、そういうおっさんのこともなに一つ知らないのだけど。
眼鏡のおにーさんは素早くベッド脇に歩み寄り私に話しかけた...が
「¡”‚›×µ£€¢~!」
........うん。なにいってるか分かんないね。
■ □ ■
「やっと起きましたか!」
思わずうんざりした口調で声をかけてしまった。
子供の様子を見るが意外と元気そうだ。熱はまだ少しありますが、それでも大分平熱に近づいたようですね。喉は...相変わらず腫れている。意識があるぶん食べるのを嫌がりそうですねぇ。面倒だな......
それにしても、運の強い子供ですね。
あれから、3日間も目覚めないなんてもう、死ぬだろうと正直思ってましたよ。助けると宣言した手前、諦めるつもりは毛頭ありませんでしたが。お陰で寝不足もいいところですよ。まぁ、意識が戻ったのならひとまず大丈夫でしょう、油断しなければ。
.......そういえば、何でこの子供私のことをガン見してるんでしょう?いかにも興味津々といった感じですねぇ。ああ、親だと勘違いでもしてるのか?......誤解されるのも面倒なのでここからの看病はガントにやらせましょうか。これから先の事を考えると看病の仕方くらい彼も覚えるべきでしょうし。.......厳しく指導しましょう。私の診療所に厄介ごとを持ち込んだ事ですしね。
まずは、爆睡中であろうガントを起こしに行くとしますか。