第14話 海路
ルイズベンの街が陥落。
その第一報に、まず蒼馬は愕然としてしまった。
場所はロマニア国の王都であったロマルニアの旧王城の一室である。蒼馬は王都ホルメニアよりここへ移り、そこを対聖戦軍の司令部として機能させていた。
その日もまた蒼馬は多くの官僚や将たちとともに、今後の聖戦軍に対する対応を協議していた最中である。
そこへ文字通り飛び込んできたハーピュアン伝令兵がもたらしたルイズベン陥落の報せは、蒼馬を含めたその場に居合わせた人々に衝撃を与えた。
何しろ、その前日には、数十万の聖戦軍に対してもルイズベンが奮戦しているという報せが届いたばかりである。ルイズベンの領主からの伝言も、まだ数ヶ月は保たせるという心強いものですらあった。
それが急転直下、わずか一日足らずで陥落してしまったのだ。
これには蒼馬ばかりか、その場に居合わせた誰もが驚きを隠せなかったのである。
「一体何が起きたんだ……?」
半ば呆然と独り言のように洩らされた蒼馬の問いに、ハーピュアン伝令兵はそれをなしたのがわずか五百騎あまりの騎馬軍団であったこと。そして、それが掲げていた旗の意匠を伝える。
その報告に著しい反応を示したのは、いつもは冷静沈着なエルドア国の女官長エラディアであった。
「エラディア、知っているの?」
蒼馬が水を向けると、エラディアはまず動揺を表に出してしまった醜態を謝罪してから答える。
「その旗は、バグルダッカ大公国軍。暴君クロゥの率いる軍団に間違いございません」
部屋の中にどよめきが湧き上がった。
蒼馬を含めて、暴君の恐ろしさは伝聞でしか知らない。だが、人間の神の御子であり選帝大公家というカーディナル帝国の重鎮であるクロゥが、ついにエルドア国に乗り込んできたということだけでも、事態の深刻さを理解するに十分であった。
さらにその後にも続々と入るルイズベンが陥落した経緯と、その後の聖戦軍の蛮行の詳細が伝わるにつれ、エルドア国の面々は身を震わせるような恐怖に襲われる。
特にエルドア国の人々を恐怖させたのは、ルイズベンで横行した人肉食であった。
「あれが人なのですかっ?! あれが人のやることなのですかっ?!」
事態の異常さと緊急性から自ら偵察し、その報告にやってきたエルドア国のハーピュアンを束ねる鳥将ピピ・トット・ギギは、ルイズベンの街で行われた人肉食の光景を語った後、そう絶叫した。
街の様子を偵察するために、その上空を飛んだ際、自分へ向けて届きもしない石や棒を必死に投げつけてくる痩せ細った聖戦軍の兵たちの形相を思い出し、ピピは全身をおこりのように震わせる。
あれは憎い敵兵を見る目ではなかった。あれは自分を人ではなく、食べる獲物と見る目であったのだ。
震えるピピの告げた内容に、歴戦の熟練兵である「黒壁」の隊長アドミウスですら、幾分顔色を青ざめさせて言う。
「まったくもって理解できん。普通は、そこまで飢餓に苦しむぐらいなら兵を分散させるか、諦めて退かせるものではないのか?」
車両や列車などがなく、物資の輸送を牛馬や人力に頼らざるを得ず、物資の大半を現地調達で賄わなければならない時代である。兵力の分散の愚は承知すれども、互いに物資を食い潰し合わないように兵を分けて侵攻させるのが当然であった。
しかし、聖戦軍は一部の軍が離脱はしたものの、その大半は闇雲にルイズベンの街に執着し、自らを飢餓状態に追い込んでしまったように見える。
「多分だけど、全体を指揮する人がいないんだ」
しばし思案した後、蒼馬はそう言った。
本来ならば聖戦軍全体を指揮する者がルイズベンの街攻略を続ける軍勢とエルドア国のさらに内部へ侵攻させる軍勢とに兵を分けるなどするのが普通である。
ところが、その分担を考え、それを指示できる指揮官がいない。
そのため、聖戦軍の諸王諸侯らも兵を分散すべきだと思っていても、これまでルイズベンの街の攻略に費やした労力を無駄にし、異国の地で場所も規模も定かではない他の街へ移動する不利益を自身が被るのを厭い、それを互いに押しつけ合った結果、軍の硬直状態が起きてしまったのだ。
その蒼馬の推察に、居合わせた者たちは「そんな馬鹿なことがあるのか」と思いつつも、一応の筋道が通っていたため納得せざるを得なかった。
「とにかく、聖戦軍はまともな軍ではないと思う。それだけに奴らがどう動くが予想ができない。奴らの動静には留意しなくてはならない」
そう言った蒼馬はピピへと目を向けた。
エルフの女官からワインを一杯飲ませてもらい、ようやく落ち着きを取り戻したピピが小さくうなずいてから報告を続ける。
「ルイズベンの港には、現在多数の帝国からの船舶が入港しております。船からは糧食をはじめとした物資が下ろされ、それによって聖戦軍も少しは落ち着きを取り戻したようです」
そこでピピはわずかに言いよどんでから続けて言う。
「その後、一際大きな聖教の旗を掲げる軍勢が街へ入りました。その直後に上がった歓声の中に、アウストラビス大神官の名前が挙がり、またそれらしき人物も確認されております」
部屋の中に再びどよめきが湧き起こる。
「アウストラビス大神官もついにやってきたのか……」
先に到着していたバグルダッカ大公クロゥに続き、同じ人間の神の御子であるアウストラビス大神官がやってきたことに、蒼馬は事態の深刻さが増したと感じずにはいられなかった。
蒼馬は腕組みをすると、机の上に広げた旧ロマニア国の地図を見下ろし、これからの聖戦軍の動きを予想する。
まず、大型の船舶が利用できる港を有するルイズベンの街を制圧した聖戦軍は、そこをエルドア国攻略の橋頭堡とするつもりなのは間違いないだろう。
聖戦軍が船舶を使った補給を受けられれば、国内の恨みを買ってまで決行した焦土作戦も無駄になってしまう。
しかし、幸いなことにルイズベンの街から西の海岸線は切り立った崖と遠浅の海が続くために、進軍する聖戦軍に船舶を併走させて補給を行わせるのは不可能である。そのため、聖戦軍は不便な海岸沿いの道ではなく、整備された広い陸路を取らざるを得ない。
「そうなると……」
蒼馬は地図に描かれたルイズベンの街に人差し指を添えた。そして、その指をルイズベンの街から地図の上側――北へ伸びる街道を示す線をなぞらせると街を示す絵に突き当たる。
「ボーンズ」
そこに書かれた文字を読むことができない蒼馬の代わりに、シェムルが街の名前を読み上げた。
「このボーンズという街は、どんなところ?」
蒼馬の問いにその場に居合わせた旧ロマニア国の人間のひとりが代表して答える。
「ルイズベンと西域を横断する公路とを結ぶロマニア国東部の主要都市であります。かつてはロマニアに併合された小国家の王都で、住民は二万を超え、壁も高く厚く、城塞都市の異名を持っております」
聖戦軍がさらにエルドア国へ侵攻しようとするのならば、確実に制圧したい要所であると判断した蒼馬は、聖戦軍の動向をピピに尋ねた。
「陛下のご推察のとおり、聖戦軍の次の狙いはボーンズだと思われます。聖戦軍はアウストラビス大神官がやってきてしばらく後に軍勢をいくつかに分けて北へと進軍を開始しておりました」
ピピの報告に、蒼馬は思わず洩らしそうになった舌打ちをどうにかこらえた。
これまでのように闇雲に全軍がひとつとなって目的地に向かうのではなく、いくつかに軍を分けたということは、今回のルイズベンの街の惨状は、聖戦軍の諸王諸侯らにとっても痛い教訓となったようだ。また、名目上だけとはいえ総大将となるアウストラビス大神官が到着したことで、それなりの統率を取ることができるようになったのだろう。
おそらくはルイズベンからの補給だけに頼るのではなく、広範囲で略奪を繰り返して糧食や物資を確保してボーンズの街攻略に取りかかるつもりだと推測される。
だが、と蒼馬は自分の顎に指を添えて考え込む。
ルイズベンの街での戦いを見れば、聖戦軍に対して焦土作戦が効果絶大であるのは疑いようもない。ルイズベンの街からの補給を妨害し、焦土作戦により周辺から略奪できないようにすれば、聖戦軍は確実に干上がる。
そのためにも、数十万ともなる聖戦軍を相手にし、物資を使い潰させるための時間を稼ぐには、このボーンズの街しかないと蒼馬は判断した。
意を決した蒼馬は、ピピに向けて言う。
「住民の避難を進めているガラムとマルクロニスへ伝令を。この旧王都ロマルニアか、旧ホルメア国領まで逃げられる民は、そのまま避難させろ。それができなければ、せめてボーンズに避難させるんだ。ボーンズ以外では抵抗する間もなく聖戦軍に飲み込まれてしまう。戦場となる街に民を送り込むことになるが、もはやそれしか選択肢がない。また、ガラムはズーグと同じくゾアンの戦士らを率いて、ボーンズの街を攻略しようとする聖戦軍の後背を攪乱し、脅かしてくれ」
大軍を相手に後方を攪乱するには少数精鋭かつ機動力が求められる。それにはゾアンの戦士ほど、適した兵種は存在しない。
また、それをガラムが率いれば、これほど頼もしいことはなかった。
だが、同時にガラムが率いるからこその懸念もある。
「ただ、ガラムへ厳命する。たとえボーンズの民や兵を見捨てることになっても、決して聖戦軍とまともに戦おうとするな。今はエルドア国全体を生き延びさせるため、一部地域を切り捨てる非情さが必要だ。重ねて厳命する。聖戦軍とはまともにやり合わず、後背への攪乱に徹底してくれ」
ピピは蒼馬の言葉を復唱すると、命令を伝えるべく窓から空へと飛び立っていった。
それを見届けてから部屋の中に目を向けた蒼馬は、不安げに眉をひそめて自身を注視しているシェムルに気づく。蒼馬は「どうしたの?」という目を向けると、シェムルは言う。
「敵は船を使って食い物などをルイズベンの街に送って、そこから補給を受けられるようになったのだろ? おまえのいう焦土作戦とやらは、うまくいくのか?」
それに蒼馬は「問題ない」と前置きしてから言う。
「確かにルイズベンから補給を受けられるようになったのは痛い。でも、そもそも船での物資の輸送もいつまで続けられるか怪しいものだ。資源は無限に湧くものではない。あったとしても、それをかき集めて送るだけでも、とんでもない労力を要する。とうていルイズベンを経由しての補給だけで、聖戦軍は全軍の物資をまかなえるわけがないんだ。どうしたって必要な物資の大半は、現地調達に頼らざるを得ない。それを焼く焦土作戦は十分に効果的だと思う」
蒼馬がそう言うと、シェムルは安堵したように肩から力を抜いた。
「ならば良い。――さすがに私たちゾアンといえど、海に浮かぶ船を止めることはできないからな」
これに「いざとなれば泳いで頑張ってもらおうか」と冗談を返そうとした蒼馬だったが、動かしかけた口をはたと止めた。
猛烈な悪寒を感じる。
何かとてつもなく重要で、致命的な何かを見落としているような猛烈な悪寒を蒼馬は感じたのだ。
「船……ルイズベン……」
蒼馬の脳裏に、これまで得たルイズベンの街に関する事柄が閃光のようにして駆け巡る。
旧ロマニア国東部最大の港湾都市ルイズベン。
西域では西の海洋交易都市ジェボアと並び称せられ、また「西域の海の玄関口」とも呼ばれる交易都市。
そして――。
「ジェボアへ向かう海路の中継点……!」
自身の口にした言葉に、蒼馬の身体を最大最悪の悪寒が貫いた。
そうだ! とんでもないことを見落としていた!
蒼馬は激しい後悔に身を震わせた。
そのただならぬ様子に気づいた周囲の人々が注視する中で蒼馬は大きく唾をひとつ飲み込んでから、まるで死刑囚に死刑執行を告げるように言う。
「私が聖戦軍の指揮官ならば、海路を使って軍の一部をジェボアへ送り、この国を挟撃させる!」
その場に居合わせた人々をその日最大の衝撃が襲った。
「あ、あり得る! いや、これほどの大軍なのだ。軍を分けて、こちらを挟撃させるのは軍略として当然!」
「むしろ、今までそうしていなかった方がおかしいのだ」
「これは由々しき事態ですぞ!」
誰も彼もが血相を変えて声を上げ、その場は騒然となった。
その中で蒼馬は卓に広げられた西域の地図を見下ろし、黙したまま現状を整理する。
聖戦軍の大半があえて過酷な陸路を通って西域に侵攻してきたのに目を奪われていたが、その中核となる諸王諸侯の軍勢は海路を使って八王連合国のひとつミラトス国へ直接乗り込んでいたではないか。そして、失陥したルイズベンの街に次々と入港してきているという多数の船舶は、ミラトス国を経由して来たに違いない。
聖戦軍はただ闇雲に大軍をもって侵略しているのではなかった。糧食や物資を運ぶ大型の船舶が入港できる大きな港を確保し、それを橋頭堡として着実に、この国を攻めてきているのだ。
そんな敵が海路を使った挟撃を思いつかぬはずがない。
それを今まで実行してこなかったのは、単にこの時代の未発達の航海技術では直接にジェボアへ向かえなかっただけだろう。
しかし、今や聖戦軍はジェボアへの中継点となるルイズベンの港を掌握し、さらにボーンズの街へ侵攻する際には分散進軍するだけの知恵と理性を取り戻している。軍の一部を海路からジェボアを経由させ、エルドア国を挟撃してくることは必然とさえ言えた。
自身の推測に蒼馬は強く歯がみする。
「そんなことになれば、聖戦軍に対する戦略が根底から覆されてしまう……!」
蒼馬が聖戦軍に仕掛けた焦土作戦は、ホルメア国とロマニア国がつながってできたエルドア国の東西に長くなった国土を利用した一種の深層防御である。全軍をもって聖戦軍を迎え撃つのではなく、各都市に徹底抗戦させて時間を稼ぎ、焦土作戦によって自滅させようというものだ。
そして、聖戦軍を撃退した後には、旧ホルメア国領へ待避させておいた物資や人を使って、傷ついた旧ロマニア領を復興させるというのが蒼馬の考えであった。
ところが、聖戦軍がジェボアを経由して西からも攻め込まれれば、そのすべてが水泡に帰してしまう。
「誰か……!」
ジェボアへ急使を、と言いかけて蒼馬ははたと口をつぐむ。
これまでの動向からジェボアの商人たちが聖戦のことを事前に知っていたのは疑いようがない。それをエルドア国へ通知しなかったのは、すでにジェボアの商人ギルドはエルドア国を見限っているからだろう。
ジェボアの商人ギルドとは友好関係を結んでいるが、海千山千の商人である彼らだ。嘘を吐けば信用問題だが、先取りした情報を秘匿して儲けるのは商売ではままあることと彼らは平然と言い逃れかねない。
エルドア国としても、ジェボアの商人ギルドとは軍事同盟を結んでいるわけではないので強く非難するのは難しい。また、聖戦軍に対処する中でエルドア国の後背に位置するジェボアを今、敵に回すわけにはいかず、強く言えないのが現状だ。
「ジェボアを味方につけるのは無理だ。せめて友好的な中立を保ってもらうしかない」
利に敏いジェボアの商人ギルドを味方に引き入れられるだけの手札がない今、せめて彼らが聖戦軍に協調してエルドア国へ侵攻してこさえしなければ良い。
そして、ジェボアが頼りにできない状況で、海路を使って攻め寄せる聖戦軍を食い止めるには、あの人たちの協力を得るしかない。
そう判断した蒼馬は、地図の上に描かれたジェボアの沖に浮かぶ島へと目を転じる。
「マーマンに援護を頼むしかない」
かつて帝国によって故郷を追われたマーマンたちである。決して帝国とは相容れないだろう。また、かつて友誼ある小国を助けるために帝国と戦ったこともあるマーマンならば、同じように聖戦軍に脅かされるエルドア国と同盟を結んでくれる可能性が高かった。
そして、海こそ彼女らマーマンの独壇場である。
帝国の船を食い止めるのに、彼女らほど頼もしい味方はいなかった。
何としてでもマーマンに、この戦いに参戦してもらわなくてはいけない!
そう判断した蒼馬だったが、同時に噛みしめた歯の間から苦しげなうめきを洩らす。
だが、それにはどうすれば良い?
マーマンに参戦を呼びかけるのは、もはや決定事項である。
だが、問題は誰にそれができるか、だ。
それは、エルドア国の弱点――国家間の交渉を任せる人材の不足であった。
ただ他国に赴かせて交渉させるだけならば、任せられる者もいる。例えばゴルディア王子の長男は渉外に秀でた能力を有していた。また、ホルメア国やロマニア国の重臣だった者の中には、西域でそれなりに名のとおった者もいる。そうした者たちならばマーマンに同盟を呼びかけ、参戦を促す交渉をすることも可能であろう。
だが、彼らはエルドア国を代表する者にはなれない。
新興国であるエルドア国での経歴よりも、それ以前の経歴の方が色濃く、どうしてもエルドア国の代表とは認めがたかった。
いくら言葉を飾り立てようとも、ことはマーマンを帝国との戦いに巻き込むものだ。孫子の兵法で有名な孫子が、「兵は国の大事」と書いたとおり、戦争は国の存亡に関わる重大事である。その重大事にマーマンを巻き込むからには、エルドア国を代表する者が出向かねばならなかった。
仮にマーマンの女王テーテュースが参戦に前向きであったとしても、戦いに命を賭すことになる民の手前、エルドア国がそれ相応の誠意をマーマンに示さねば、決してうなずくことはできないだろう。
ここは本来ならばエルドア国の国政を任された宰相か、もしくは軍権を任された大将軍が出張るところである。
だが、エルドア国に宰相は不在であり、大将軍であるガラムは聖戦軍の対抗するため最前線で指揮を執っており、このときに後方へ呼び戻すことはできなかった。
ならば自分自身がマーマンのところへ行くか?
一瞬浮かんだ自身のその考えを蒼馬は即座に否定する。
刻一刻と変化する戦況に速やかに対応しなければならない現状で、王である自身が現場から離れるなど論外だ。ましてや聖戦軍によってルイズベンが失陥したばかりである。そんなときに王である自身が他国へ赴くなど、国を捨てて逃亡されたとも取られかねない。そんなことになれば、その時点でエルドア国は崩壊してしまう。
そして、それは蒼馬を除くエルドア国唯一の王族と認められたワリナも同様である。
蒼馬がロマルニアにとどまり聖戦軍への対処を執って旧ロマニア国の民を見捨てないという意志を行動によって表明するならば、同じくワリナにはホルメニアの王城に留まってもらい旧ホルメア国の民を安堵させなければならなかった。
どうすれば良いかと煩悶する蒼馬だったが、ふと以前にも似た状況に陥ったことを思い出す。
それはバルジボア国王セサルの奸計によって、ソルビアント平原で〈尾の氏族〉の襲撃と〈たてがみの氏族〉の離反が起きたときのことだ。
そのとき自分はどのように対処したか?
それを思い出した蒼馬は、音を立てて顔を脇へと向ける。
そして、自分の唐突な行動に、きょとんとした表情でこちらを見つめる自らの半身に向けて蒼馬は告げる。
「シェムル! 君がマーマンのところへ行ってくれ!」
(*°∀°)川°∀°)ニヤニヤニヤニヤ
作者 アウラ様




