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破壊の御子  作者: 無銘工房
興亡の章
503/533

第181話 渡河

 蒼馬の命を受けたガラムがガッツェンの街より兵を率いてラップレーへと進軍したときまで時は(さかのぼ)る。

「獣の大将軍が、ガッツェンの街よりラップレーへ進軍を開始したと?」

 エルドア国内の内通者や密偵たちからの報せを受けたのは、いまやエルドア国に征服された旧バルジボア国領との国境近くに位置する砦の将たちであった。

 彼らの任務は、エルドア国軍が旧バルジボア国領からロマニア国へ侵攻するのを防ぐことである。

 すでに旧バルジボア国領にはエルドア国軍の先遣隊が駐留しているという報せが入っていた。食料自給率が低く、ただでさえ他国から食料を(あがな)わなければ国民が飢えてしまう旧バルジボア国領である。そこへ意味も無く兵を置くわけがない。明らかにロマニア国への侵攻を企図した軍事行動であろう。

 しかも、その先遣隊を率いているというのが、エルドア国の誇る六将のうち獣将クラガ・ビガナ・ズーグだった。

 その勇猛さと狡猾さをもって、すでにロマニア国全将兵らから赤毛の異名とともに畏怖されている猛将である。それだけにロマニア国軍の将たちは、最大限の警戒を持って旧バルジボア国領へ通じる狭い山道を完全に封鎖し、エルドア国の侵攻に備えていた。

 ところが、いつまで経っても侵攻してくる様子がない。そればかりか連日ドワーフたちが山へ分け入り、木々を切り倒し、筏を作っている様子が斥候や内通者からもたらされていたのである。

 そのため、「これは、もしや」と思っていた矢先のガラムのラップレー進軍の報せであった。

「これは、我々と同じくラップレーに浮き橋を架けて進軍するつもりではないか?」

 かつてホルメア戦役においてロマニア国軍は、今は亡きバルジボア国王セサルの奇策により大量の筏を使った浮き橋を架けホルメア国へ侵攻したことがある。それを再現し、今度はエルドア国がロマニア国へ攻め込もうとしていると彼らは考えた。

「その可能性は高い。――だが、旧バルジボア国領にいるのは、あの赤毛だ。油断はできんぞ」

「だが、だからといってこのまま放置はできん。ラップレーから渡河されれば、我らはここで赤毛と黒毛に挟み撃ちにされる」

 旧バルジボア国領からの道は細く曲がりくねり、その起伏も激しい。数の利も活かせず、勢いもつけられないそんな山道からならば、いかな大軍であろうと()ねのけられる。しかし、逆に後背の平地から攻められれば、こんな小さな砦など一揉()みに押し潰されてしまうだろう。

 そう懸念を示すロマニア国軍の将軍や領主らは対策を協議した結果、砦に最低限の兵だけを残して本隊は砦とラップレーとの中間地点へと移動させることにした。もし、旧バルジボア国領とラップレーのどちらのエルドア国軍が動いても、本隊は即座にそこへ急行できるようにである。

 そうして本隊と別れて砦に残留し、旧バルジボア国領のエルドア国軍の動向に注視していたこの辺りを領有する地方領主の男のところへ、川沿いに放っていた斥候部隊から火急の報せが届けられた。

「無数の筏が河を下り始めただとっ!」

 エルドア国軍が作っていた筏をいっせいに下流へと流し始めたという報せに、その地方領主はすぐさま本隊へ早馬を走らせて、そのことを伝えさせた。また、それとともに自身もまた砦から出て、状況を自身の目で確認しに行ったのである。

「うむ。やはり、エルドアの奴らめはラップレーから渡河するつもりのようだな」

 山間を曲がりくねりながら流れる川に、それを埋め尽くすかのような無数の筏の姿を遠目に捉えた地方領主は、自分らの予測が正しかったと確信した。

「よし。急ぎ砦に戻るぞ。おそらくラップレーからの渡河に合わせ、赤毛もまた攻めて来るはずだ」

 あの勇猛な赤毛が、ただラップレーからの本隊の到着を待つだけのはずがない。必ずや挟撃するべく砦へ攻めかかるだろう。

 そう判断した地方領主は、急ぎ砦へと取って返した。

 彼はズーグを亜人類と侮らず、十分に警戒し、行動していたと言えよう。しかし、平原で最も危険と言われたズーグを相手では、それですら甘かった。

「ん? 何だ、あの煙は……」

 その地方領主は下山途中で砦の方から立ち上る煙に気づいた。それだけではない。耳を澄ませば怒号や剣戟の音までも、かすかに聞こえ来る。

「まさか……!」

 嫌な予感を覚えた地方領主は、砦へと急行する。

 そして、鬱蒼(うっそう)と木々が生い茂っていた山を下りきり、ようやく視界が開けたとき目にしたのは、今まさに陥落せんとする砦であった。

 砦の後方には収容しきれない兵たちが野営をするための陣が張られていたのだが、いまやそこは戦場と化していた。囲いとして建てられた柵や寝泊まりしていた天幕はことごとく引き倒され、その上をゾアンの戦士たちが雄叫びを上げながら暴れ回っている。

 また、砦自体も後方からいくつもの梯子を掛けられ、そこから次々とゾアンやドワーフたちが中へと乗り込んで行く姿が見えた。

 それに対してロマニア国兵たちは統率すべき将が不在だったこともあり組織立った抵抗もできずに蹴散らされるだけである。

「何故だっ?! 何故、後方から襲撃を受けている?! どこから敵が現れたっ!」

 いまだ浮橋を作るための筏が河を下り始めたばかりである。ラップレーからの渡河を成功できたとしても、エルドア国軍がここへやってくるのはまだまだ先の話のはずだ。

 それだというのにすでに敵が押し寄せ、しかも砦が間もなく陥落するという事態に、その地方領主は困惑と疑問の叫びを上げた。

「おう。敵将がどこにもおらんと思っていたら留守だったのか」

 その疑問に答えるかのように、そこへ逃げるロマニア国兵を追撃してきた赤毛のゾアン――ズーグが姿を現した。

 かぶっている羽根飾りのついた派手な兜から敵の将と認めたズーグは鉈のような大振りの山刀を肩に担ぎ、べろりと舌で唇を舐める。

「間もなく砦も落ちる。ついでにおまえの首も落とさせてもらおうか」

「き、貴様が、赤毛かっ?!」

 迎え撃つため剣を引き抜きながら、地方領主は問いかけた。

「赤毛? ああ。俺のことか。――一応名乗っておこうか。俺は、エルドア国の王ソーマ陛下より獣将の位を頂戴している《怒れる爪》クラガ・ビガナ・ズーグだ」

 名乗るなりズーグは大鉈のような山刀を振りかざして斬りかかってきた。自分らの将を守らんとロマニア国の兵が立ち塞がるが、ソルビアント平原でガラムと並び両雄と称せられるズーグの暴威の前では歯が立たない。ズーグが山刀を振るう度に血しぶきと悲鳴を上げて倒れていく。

 また、ズーグが率いるゾアンの戦士たちもズーグ自身が選りすぐった氏族の猛者たちである。次々とロマニア国兵を切り倒していく。

「くそっ! 何で貴様らが、ここにいる?! なぜ砦が簡単に落ちたっ!」

 血に濡れた山刀を引っさげて自分へ向かってくるズーグへ向けて、その将が疑念とともに突き出した剣の切っ先をズーグは山刀の一振りで弾き飛ばすと牙を剥いて笑う。

「あんだけ木を切り倒しに山に入ったんだ。抜け道のひとつぐらいは作るに決まってんだろ」

 山に分け入り木々を切り倒していたのは、浮橋のための筏を作ると見せかけ、その実は細い山道を塞ぐ砦の後背に回るための抜け道を作るのが目的だった。

 遅まきながらその事実を教えられ愕然とする地方領主の前で、ズーグは山刀を高々と振り上げる。

「おまえら自身がやったことに気を取られて、敵のやったことも学んでなかったのか?」

 自分らのラップレーへの渡河成功という快挙に囚われ、蒼馬がボルニスの街近郊でダリウス将軍に対して仕掛けた奇襲に思い及ばなかった地方領主へ、ズーグは哀れむような言葉とともに刃を脳天へと叩き込んだ。

 ズーグの強烈な一撃は兜ごと頭蓋骨を両断し、苦しむ間もなく地方領主を絶命させた。

「この《怒れる爪》が、敵将を討ち取ったぁ!」

 血に濡れた山刀を高々と突き上げたズーグの勝ち名乗りが、戦いを決した。

 自分たちを率いる将が討ち取られたのを知ったロマニア国兵たちは、ある者は武器を捨てて降伏し、またある者は逃走を始め、総崩れとなる。

「《怒れる爪》よ。追撃するか?」

 返り血で獣毛を(まだら)に染めた氏族の戦士の問いに、ズーグはぐるりと周囲の様子を見ましてから、首を横に振るう。

「いや。時間が惜しい。ここはノルズリに任せて良かろう」

 その戦士にノルズリへ後始末は任せると伝言させるとともに、ズーグは太鼓を叩かせてゾアンの戦士たちを呼び集めた。

 奇襲に成功した上に、兵を率いる将が不在だったこともあり、ゾアンの戦士たちの負傷は軽微である。それを見て取ったズーグは戦士たちを挑発するように言う。

「へたばっている野郎はいないだろうな?」

 これにゾアンの戦士らも、獰猛な笑みをもって返した。

「皆、いい顔だ。――よし! ついてこい! これから大族長様をお出迎えに行くぞ!」

 そう言うとズーグは四つ足となって駆け出したのだった。


                  ◆◇◆◇◆


「ハーピュアンの伝令が来ました! 叔父上がうまくやったようです!」

 副官であり、いまや愛する妻でもあるファグル・ガラムディア・シシュルの報告に、ガラムは大きくうなずいて見せる。

「よし! 《怒れる爪》の動きに合わせ、我らも渡河を始めるぞ」

 そう言うガラムの視線の先には、上流から流されてきた筏が早くも流れ着き始めていた。

 かつてセサル王が浮橋を架ける際に使ったものと同様にラビアン河を横断するように太い縄が張られ、そこから吊り下げられた網によって流されてくる筏が次々と()き止められていく。船頭として筏に乗っていたエルドア国の兵たちは、用意してあった鎖を使って筏を次々と連結し、浮橋を作り始めた。

「やはり、奴らめは我らと同じ手を使って渡河しようとしたか」

 エルドア国軍の架橋の様子を丘の陰に兵を伏せて監視していたロマニア国の将軍は、そう言った。

「いまだ敵は河を渡っておりません。渡河に先んじて浮橋を焼いてやりましょう」

 副官の提案に、その将は首を横に振るう。

「いや。まだ早い。奴らが渡河を始め、ある程度渡ったところで攻撃をかける。渡河し終えた奴らを河へ叩き落とすとともに、浮橋を落として渡河中の兵をすべて河に沈めてやるのだ。さすれば、二度と我らロマニア国へ攻め入ろうなどという不遜(ふそん)な考えは起こすまい」

 ロマニア国軍を率いる将軍は、エルドア国軍に大打撃を与えられる好機が訪れるのを待った。

 しかし、好機の到来を待っていたのはロマニア国だけではない。エルドア国軍とそれを率いるガラムもまた同様だった。

 ラビアン河の対岸の上空に、ひらりひらりと舞い踊るハーピュアンの姿を認めたガラムは近くにいたハーピュアンに問いかける。

「あれは、どういう意味だ?」

「お答えします、大将軍閣下! あの踊りの意味は、『狩り場に到着』。繰り返します、『狩り場に到着』です!」 

 それはズーグが旧バルジボア国領の砦を突破し、配置についたことを意味する符丁であった。

「よし! 全軍に通達! 渡河を開始せよ!」

 ガラムの号令の下、エルドア国軍は完成したばかりの浮橋を渡り始めた。

 それを丘の上に身を伏せて監視していたロマニア国軍の将軍は、興奮に逸る気持ちを抑えるように拳を固く握り締めると、押さえた声で兵に呼びかける。

「渡河が始まったぞ! 号令とともに、一気に攻め寄せ、渡河した少数の敵を河へ叩き落とし、橋を焼き捨てるぞ!」

 ロマニア国の兵士たちも、無言で武器を握り締め、そのときを待った。

 そうしてロマニア国軍の将兵らが見守る中で、ついにエルドア国軍の先発部隊が河を渡りきると、後続の部隊のために浮橋の固定と補強の作業を始めた。

 それを頃合いと見た将軍は伏せていた身体を起こして立ち上がると、一息に抜き放った剣の切っ先を河岸で作業するエルドア国軍へと向ける。

「突撃せよ!」

 そう号令を発しようとした寸前である。

 あたかもその将の機先を制するように、突如後方より激しく打ち鳴らされる太鼓の音が鳴り響いた。

 驚いた将軍が振り返れば、後方の茂みからゾアンの戦士たちが次々と姿を現して突撃してくる。

「あ、赤毛かっ?!」

 その先陣を駆けるズーグの姿に、将軍は恐怖に引きつった声を上げた。

「牛より鈍い連中だな、おまえらはっ!」

 奇襲を受けて慌てふためくロマニア国の兵士を山刀で切り倒しながらズーグは吠えた。

 茂みに伏せて四つ足となって獲物に忍び寄るのは、ソルビアント平原のゾアンの戦士たちにとってはお手の物である。渡河する部隊に気を取られていた将軍らが気づけなかったのも当然であった。

「うろたえるな! 敵はこちらより少数だ! 慌てずに隊伍を組み、迎え撃てっ!」

 奇襲に混乱する兵たちの統率を取り戻そうと声を張り上げる将軍だったが、一度失った統率は簡単には取り戻せない。兵たちは隊伍を組むどころか、ズーグによって次々と蹴散らされていく。

 さらに、そこへ追い打ちがかけられる。

 今度は背を向けたラビアン河の方からも激しく打ち鳴らされる太鼓の音が鳴り響いたのだ。

 慌ててそちらの方へ目を遣れば、すでに渡河を終えた一部のエルドア国軍がこちらへ攻め寄せてきていた。しかも、その先頭を四つ足となって駆けるのは黒毛のゾアン――ガラムである。

「黒毛までもっ!」

 それが彼の最期の言葉となった。

 疾走してきたガラムは丘を駆け上がった勢いのまま跳躍すると、二刀の山刀を抜き放ち様にロマニア国軍の将軍の首を()ねる。首を失った将軍の身体が、ゆっくりと背中から傾いていき、地面にどうっと音を立てて倒れた。

 その脇に降り立ったガラムは、自分らを率いる将軍を討たれて唖然とするロマニア国兵へ血に濡れた山刀を突きつける。

「残敵を掃討せよっ!」

 ガラムの号令とともに、ゾアンの戦士たちが(とき)の声を上げてロマニア国軍へ襲いかかる。

 ガラムとズーグに挟撃され、指揮官である将軍まで失ったロマニア国軍には()(すべ)もなかった。多くの兵が討ち取られ、それ以上の数の兵たちが降伏して捕虜となったのである。

                  ◆◇◆◇◆


 戦いを終え、捕虜となったロマニア国兵の武装解除や負傷兵の手当などの指示を出しながら人を探していたガラムは、ようやくお目当ての人を見つけた。

「ご苦労だったな、《怒れる爪》」

 氏族の精鋭とともに地べたに座り、干し肉を囓っていたズーグはガラムに気づくと、口にくわえた干し肉を上下に動かしながらなじるように言う。

「わかってる。すぐに行けってことだろ? ったく、人使いの荒い大将軍様だな。こっちは砦を落として、そこから駆けて来ての二連戦なんだぞ。少しは休ませろ」

「人使いの荒いのは、俺ではない。ソーマ陛下だ」

 ガラムは的外れの非難に抗議する。

「これから俺はソーマ陛下を迎えるために、マサルカ関門砦の対岸にあるロマニア国の河港町モルカフを落としに行く。疲れたというのならば、おまえはたっぷりと休んでから行け」

 ガラムの言葉に、ズーグは盛大に舌打ちを洩らした。

 それからズーグは囓りかけの干し肉を牙で引きちぎると、酒とともに胃へ流し込む。

「おい、おまえら! 休憩は終わりだ。行くぞ!」

 それに〈爪の氏族〉の戦士たちは、いっせいに抗議の声を上げる。

「うるせぇ、黙れ! 大将軍様が働いているのに、のんびりしているわけにはいかんだろうが。――文句は、そこの大将軍様とソーマ陛下に言え!」

 氏族の戦士たちを怒鳴り飛ばしてからズーグはガラムに向き直る。

「おい。『網』をいくつか借りていくぞ」

 ズーグが言う「網」とは、ハーピュアンの空中偵察兵を中核にし、ゾアンの太鼓を使った伝令兵とそれを補佐する黒エルフ弓騎兵からなる鳥将ピピの配下に属する特殊部隊のことだ。

 ズーグの要請に、当然だとばかりにガラムはうなずいてから空に向けて手招きをする。

 すると、それに応じて空から舞い降りたのは鳥将ピピ・トット・ギギであった。

「あん? 何だ? ピピが来るのか?」

 ハーピュアンたちの指揮官であるピピ自ら自分に同行するというのに怪訝そうに眉をひそめるズーグに、ガラムは苦笑いを浮かべて言う。

「おまえのお目付役だ。陛下から、くれぐれも丁重に客人を扱うように言付(ことづ)かっている」

「はぁ? 何だ、それりゃ?」

 ズーグは盛大に顔をしかめて見せ、ピピもまた顔を引きつらせて乾いた笑みを浮かべた。

 万が一、ズーグが暴挙に及ぶようなことになっても、それを(いさ)められる者は数少ない。

 粗暴な振る舞いが目立つズーグだが、その実は相手の立場を配慮する思慮も備えた男である。そんな彼ならば、立場の上では自身と同格である六将のひとり鳥将ピピから諫言されれば、決して粗略には扱わないだろうという考えからの配属であった。

 しかし、当の本人であるピピからすれば、良い迷惑である。

 同じ六将とはいえ、エルドア国軍の主力を担うゾアンを率いるズーグは、言わば六将の筆頭。諫言など畏れ多いというか、それ以前に当人が怖すぎる。

 乾いた笑顔の裏で、これを決めた蒼馬とガラムへ胸の内で盛大に恨み言をこぼしていた。

「ったく、俺も信用ねぇな」

 頭をガリガリと掻きむしってぼやくズーグに向けて、ガラムはひょいっと肩をすくめて見せる。

「当然だ。太った兎と同じ扱いをして良い相手ではないぞ」

 やれやれと言わんばかりの態度でのっそりと立ち上がったズーグは、握った右拳をガラムへ突き出す。

「しっかりと務めは果たしてくる。王都ロマルニアってところで落ち合おう」

「ああ。俺も務めを果たす。――では、王都で」

 突き出されたズーグの拳に、ガラムは自身の拳を合わせた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 鉄火場のスピード感がたまりませんね!!
[良い点] いやあ、ついに興亡の章も佳境か。 次回はゴルディアを捕まえるのかな? [一言] ぶっちゃっけ、ゴルディアってピアータみたいに農民を斬り殺したり直接ソーマを殺そうとしたりした訳でもなければ…
[良い点] 離れた場所でもラグを感じさせずに通信出来るハーピュアン達網が強すぎる 土地勘のないロマニアでも簡単に首都で落ち合おうと言える平原のゾアンが強すぎる [一言] そしておそらくゴルディアを攫い…
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