第122話 矢
ワオルンの懇願にオルルクが折れたことで、ついに族長協議が開かれることになった。
族長協議の場として選ばれたのは、集落にある祭礼台である。
祭礼台は、獣の神や氏族霊の顔を彫った大きな木の柱の前に、木材を蔦で縛って組んだ低い櫓の上に板を敷いて作られた舞台だ。祭礼台の名のとおり、獣の神や祖霊へ奉納の演芸を披露し、また氏族の大事な儀式や集会の場となる場所である。
しかし、当初オルルクは協議の場を祭礼台ではなく、族長の住居でもある天幕での開催を求めていた。
それは協議が自分らの望まぬ展開になった際に、それを外へ洩らさぬためだったのだろう。
だが、これに異を唱えたのがシュヌパであった。
ことは「刃でのみ語る」とまで布告した上で相争う氏族が双方の主張をぶつけ合う協議である。それほどの重大な協議ともなれば、これは神前にてすべてをつまびらかにし、正邪を明らかにすべし。
シュヌパは、そう強く主張したのだ。
それは平原の調停役であり、祭祀を司る〈目の氏族〉としては、ごく真っ当な主張である。これに不服を唱えれば、それこそ自らの主張を正当なものではないと自身で証明するようなものだ。
そのため、オルルクは内心はどうあれこれを受けざるを得なかったのである。
そうして急遽族長協議の場となった祭礼台の上に立ったガラムは周囲を見回してからため息をついた。
「まるで見世物だな」
祭礼台はその使用目的から、周囲の視界から台上を遮るものなどは当然ない。そのため、族長協議が開かれると聞き、それを見ようと詰めかけていた集落のほぼすべてのゾアンたちの衆目に晒されていたのである。
何が楽しいのか、ニヤニヤと笑いながらズーグが言う。
「見世物というより、飢えた狼の群れに囲まれた仔牛だろ?」
ズーグがそう例えたも無理はない。
族長への畏敬の念が篤い〈尾の氏族〉にとって、その族長を暗殺したとされるガラムとその仲間のズーグは、まさに怨敵である。祭礼台を取り囲む〈尾の氏族〉の者たちは殺意や敵意を容赦なくガラムとズーグへと投げかけていたのだ。
その中でも平然とニヤつくズーグにガラムは呆れたように言う。
「おまえのどこが仔牛だ?」
「可愛かろう?」
茶目っ気たっぷりに、ズーグは片眼を細めた。だが、不意にその茶目っ気が抜け落ち、真顔になる。
「協議はおまえに任せる。俺は仔牛のように大人しくしているからな」
その声に不機嫌そうな響きを聞き取ったガラムは、その理由を問おうとした。だが、それよりも早く向かい側から祭礼台へ上がってくるオルルクたちの姿に、ガラムはやむなく口を閉ざした。
改めて前へと向き直ると、祭礼台に上がってきたのはオルルクと高齢の老人、そしてそのふたりの間に挟まれて立つ少年であった。
オルルクは少年の背を押して前に出すと紹介する。
「このお方が、我らが族長のジンバ様である」
少年――ジンバは目をパチパチとさせながらオルルクと老人に目を向けた。オルルクに名乗るように促されたジンバは、教えられた名乗りを思い出すように「えーと」と口にしてから、いまだ変声期を迎えていない甲高い声を張り上げる。
「ゾアン十二氏族がひとつ〈尾の氏族〉、アヌンタの息子、ジンバである!」
ジンバが「ちゃんとできた?」と目で問うのにうなずいてから、オルルクはガラムたちへ言う。
「ご覧のように、ジンバ様はご幼年。協議には、この竈番のオルルクと――」オルルクは一緒に上がってきた老人を示す。「――長老のタンカタン殿が代理となることを認めていただきたい」
それを当然の対応だとガラムとズーグは認める。
それから全員が用意された席に着くと、祭礼台の正面にすでに待機していたシュヌパへと目を向けた。
準備が整ったのを確認したシュヌパは声を張り上げる。
「此度の族長協議は、相争う氏族同士によるものである! そのため、巫女頭様が代理として、このゾアン十二氏族がひとつ〈目の氏族〉ザヌカの娘、シュヌパが場を取り仕切らせていただく! 異議はありやなしや?!」
「「異議なし!」」
ガラムたちは唱和をもって返した。
異議がないことを確認したシュヌパは、まず背後の獣の神と祖霊の顔を彫り込んだ柱へと身体を向ける。
「偉大なる獣の神よ! 祖霊の御方々よ! 御照覧あれ!」
シュヌパは袖を鳴らして大きく一礼をしてから、再びガラムたちへと向き直る。
「皆の者、今よりこの場は神の御前である! そう心得よ! これより族長協議を始めるっ!」
こうして〈尾の氏族〉の者たちの衆人環視の下、族長協議が始まったのである。
◆◇◆◇◆
ようやく始まった族長協議であったが、予想されていたとおりガラムが族長アヌンタ暗殺を目論んだというハシャムタことガジェタの証言の真偽をどう証明するかで紛糾した。
ガラムが暗殺を目論んでいたのは、実際に族長が殺害されたことが何よりの証。そして、それはハシャムタが言ったように〈尾の氏族〉を帰還させまいとしたからである。
そうオルルクが主張すれば、ガラムも負けじと反論する。
自分が〈尾の氏族〉の帰還を疎んでいたなど根も葉もない誹謗中傷。自分らが〈尾の氏族〉の帰還に備えて領域の割譲を神前で誓っているのは動かぬ証拠。そのような讒言をしたハシャムタなる男の本当の名はガジェタと言い、自らの失態を逆恨みし、そのような嘘を〈尾の氏族〉に吹き込んだのだ。
そうガラムが言えば当然オルルクは、ならばガジェタなる男を連れて来いと要求する。すでにガジェタは死んだとガラムが告げれば、それは卑劣な口封じだと糾弾したのだった。
「ハシャムタが、そのガジェタなる者だったとしよう。しかし、それが偽りだったと、どう証明されるのか?! ハシャムタの言を虚偽とするために、ガジェタなる者だとでっち上げたのではないという証拠はどこにある?!」
「ならば、こちらも問おう! ハシャムタなる者の言が正しかったと、どう証明する? 私がアヌンタ殿を害しようとしたという証拠はどこにある?!」
オルルクとガラムは、もはや何度目になるかもわからない言葉をぶつけ合わせた。
ついに見かねたシュヌパが双方の発言を止める。
「もはや今となっては、ハシャムタと名乗った男とガジェタなる男が同一人物だったのかどうか。また、その言の真偽を明らかにする術はございません。ここはハシャムタもしくはガジェタなる者のことは一先ず、さておかれてはいかがでしょう?」
結論の見えない議題はいったん置き、別の点から話し合ってはどうかというシュヌパの提案に、ガラムとオルルクも互いの主張が行き詰まっているのを感じていたため拒否はできなかった。
しかし、そうなると不利になるのはオルルクである。
オルルクの武器は、正体も明らかではないハシャムタの言だけしかない。それに対してガラムは獣の神の前で〈尾の氏族〉が帰還した際の領域の割譲を誓っていたという状況証拠がある。
唯一の武器を奪われたオルルクだったが、何とかガラムへの疑惑を裏付ける証拠となりそうな話をひねり出す。
「族長アヌンタ様は、矢に当たって亡くなられた」
これに、この場での発言権がなく、ただ黙って協議の成り行きを聞いているしかなかったシャハタの耳がピクリと動いた。
それに気づかぬままオルルクはもっともらしい推論を必死に絞り出す。
「我らゾアンは弓矢など使わぬ。使うのは人間かエルフ。しかし、奴らにアヌンタ様を殺害する理由はあるまい。ならば、奴らと通じる《猛き牙》が殺害を依頼したと考えるのが理にかなう。いや――」
そこでオルルクはガジェタの言っていたことを思い出した。
「――〈牙の氏族〉には、弓矢を使うゾアンの戦士にあるまじき者がいるというではないか! きっと、そやつにアヌンタ様殺害を貴様が命じたのであろう!」
オルルクは「どうだ!」と言わんばかりに指を突きつけて言い放った。
これにガラムはまず肩越しに振り返ってシャハタに目を向ける。
氏族のいずれを問わず弓矢を卑怯者の武器と蔑んでいるゾアンにとって、その弓矢を使っていると人前で明らかにされるのは辱めを受けるのに等しい。
それを憂慮するガラムへシャハタは「かまいません」と無言の意志を込めて力強くうなずいて見せた。
シャハタの覚悟を見て取ったガラムはオルルクへ告げる。
「その弓矢を使う戦士ならば、ここにいる」
「な、何だとっ?!」
驚くオルルクに、シャハタはガラムに促されて名乗りを上げる。
「ゾアン十二氏族がひとつ〈牙の氏族〉、グラシャタの息子、シャハタ。字は《穿つ牙》。――おっしゃられたとおり、私が氏族で唯一の弓使いです。ですが、我が父祖の名誉と、我が誇りにかけて、アヌンタ殿の殺害を族長より命じられたことも、ましてや暗殺を実行したことなどないと誓います!」
シャハタの名乗りと宣誓に、オルルクばかりか聴衆となっていた〈尾の氏族〉の間からどよめきが上がった。それとともに上がるのは族長殺害を疑われる者への敵意と殺意、そしてそれと同じくらい強い軽蔑の念であった。
覚悟していたとはいえ向けられる軽蔑の念の強さに、それも仕方あるまいと自嘲を浮かべるシャハタを守るようにガラムは声を張り上げる。
「〈尾の氏族〉の者たちへ問う! アヌンタ殿が殺害されたとき、ここにいる《穿つ牙》の姿を見た者はいるか?! おまえたちがこの集落の周辺を警戒していなかったとは言わせん! それとも〈尾の氏族〉の戦士たちは、侵入者にも気づけぬ間抜けばかりとでも言うのかっ?!」
これに〈尾の氏族〉の戦士たちは悔しげにうなり声を洩らした。
当然、シャハタの姿を見た者がいるわけがない。しかし、それでもシャハタが殺害犯と言い張れば、それは自分らが侵入者にも気づけなかった無能と公言するようなものだ。誇りを重要視するゾアンの戦士にとって、敵対する相手を前にして自らを無能と認めることなどできようはずがなかった。
また、オルルクとしてもただ単にシャハタが〈尾の氏族〉の戦士たちに気づかれずに侵入できたとは言えない。そんなことを言えば、氏族の戦士たちを侮辱することになってしまうからだ。
かといってオルルクはシャハタが殺害犯だという主張を引っ込める訳にもいかなかった。もはや殺害の道具となったのが弓矢だったという証拠しか、オルルクの主張できる武器がなかったからだ。
言葉に窮したオルルクは、推論にもならないこじつけを主張する。
「弓矢を使う卑怯者だ! きっと、卑怯な手を使って侵入したのだろう!」
これにガラムは怒りを覚えた。
弓矢を使うシャハタが侮辱を受けるだろうことは予想していた。また、それを覚悟の上でシャハタは証言したのである。
しかし、こうして面と向かって言われては、そのシャハタの覚悟をも侮辱するものだ。
そう感じたガラムは抗議の声を上げようとする。
だが、それよりも早く声を上げる者がいた。
「おい、こら。ふざけたことを抜かすな」
ズーグである。
族長協議――しかも神前のものと宣言された上でのこの場において、いきなり「おい、こら」呼ばわりされたオルルクは目を白黒させた。
そんなオルルクへズーグは地の底から響くような重い声で告げる。
「《穿つ牙》は、この俺が戦士と認める程の男だ。その男を謂われもなく愚弄するのは、俺の戦士としての誇りを侮辱するのも同然だ。これ以上、糞みたいな言葉を吐くなら――」
ズーグはあぐらをかいた右膝の上に肘を乗せて身を乗り出すと、その片眼を剣呑に輝かせて言う。
「――戦士として、刃で是非を問うぞ」
すなわち、決闘で白黒つけようという意味だ。
殺される!
オルルクはとっさに、そう確信した。
竈番という重職にあるオルルクだが、あくまで管理や指揮の能力を見込まれたのであり、当人は決して優れた戦士ではない。しかし、それでも狩猟種族であるゾアンである。その本能が、このとき確実なる自身の死を警告していた。
それほどまでに苛烈なズーグの殺気だったのである。
ところが、その殺気を真っ向から叩きつけられて死を覚悟するオルルクとは異なり、祭礼台の周囲にいた〈尾の氏族〉の戦士たちはズーグの言葉を挑発と取り、憤慨した。あちらこちらから「それなら俺が相手になる!」と声が飛び交い、その中には抜き放った山刀を天へと突き上げてズーグを挑発する者まで出る。
祭礼台とその周辺は一気に騒然となった。
しかも、それは一触即発の危険なものである。
「静まれっ!!」
その騒然とした空気を打ち払う声を上げたのは、シェンガヤであった。
シェンガヤは氏族の戦士たちの注目を集めながら大きな声で言う。
「その《怒れる爪》は、決闘ともなれば私も死を覚悟して挑まねばならぬほどの勇者! おまえたちでは相手にならん!」
これを言ったのが他の誰かならば戦士たちは静まるどころかかえって反発したことだろう。しかし、シェンガヤは〈尾の氏族〉の誰もが認める最強の戦士である。そのシェンガヤに命がけで挑まねばならないと言わしめるほどの戦士など〈尾の氏族〉では考えられないことだった。
驚愕に言葉を失う氏族の戦士たちから目を離したシェンガヤは、祭礼台の上のズーグへ向けて頭を下げる。
「《怒れる爪》よ。〈尾の氏族〉すべての戦士を代表し、私が謝罪する」
続けてシェンガヤはシャハタへと目を向ける。
「私は《穿つ牙》が如何なる戦士かは知らぬ。しかし、《怒れる爪》がそこまで言うのだ。よほどの戦士なのであろう。――《穿つ牙》もまた、我が謝罪を受け取って欲しい」
シェンガヤが謝罪したことで、一応の誠意を示されたと判断したズーグはその怒りを収めたようだった。
ズーグは、けだるげな様子でシェンガヤへ手をひらひらと振り、「もう、どうでもいいわ」と言わんばかり投げ槍な態度を取る。だが、その全身の毛がいまだに逆立っているところを見ると、その胸の内では怒りがくすぶっているのが窺えた。
これにガラムは眉根を寄せる。
すでにズーグとはそれなりに長い付き合いとなったガラムだが、これほどズーグが不機嫌なところは見たことがなかった。
これまでにないズーグの様子にガラムが不安を覚えている間に、ようやくズーグの殺気から立ち直ったオルルクが祭礼台の下にいるシェンガヤを叱責する。
「《静かなる尾》よ。今のおまえは唯の戦士のひとりに過ぎぬ。この場で勝手に発言する権利はないぞ」
族長ではないシェンガヤが了承も得ずにこの場で発言するのは、それが如何なる内容であろうとも族長協議の参加者すべてに対しての非礼となる。同じ氏族の同胞であるオルルクはそれを咎めなければならないのだが、その声はむしろ遠慮を感じさせるものだった。
それはオルルク自身が、シェンガヤのおかげでズーグの怒りの矛先から逃れられたことを誰よりも実感していたからである。
そんなオルルクの叱責にシェンガヤは出過ぎたまねをしたと謝罪の言葉を述べた。
オルルクはボソボソとした弱気な声で「氏族の同胞が失礼をした」とガラムたちに謝罪してから気を取り直すように咳払いをしてから、改めて主張を繰り返す。
「私も言い過ぎたことを認め、謝罪しよう。――だが、アヌンタ様が矢で殺されたのは事実は揺るがん。人間かエルフかはわからんが、貴様が命じたのであろう!」
シャハタを名指しするのはやめたが、それでもオルルクは自説を言い張った。
これにシャハタが発言の了承を得てから「失礼ながら」と発言する。
「殺害に使われた矢を私に見せていただけませんか?」
オルルクのみならず、その場に居合わせた者たちは矢などを見てどうするのかと頭に疑問符を浮かべた。
それにシャハタは説明する。
「一口に矢と言っても、作る者や使う者によって矢は細部に微妙な特徴が出ます。それを見れば、誰がアヌンタ様を射たのかわかるかも知れません」
もちろん、証拠とならないように普段使っているものとは違う矢を使った可能性もある。だが、失敗が許されない暗殺だからこそ、必殺を期するためにも使い慣れた矢を使っている可能性の方が大きいとシャハタは考えた。
だが、そう説明したものの弓矢については門外漢のゾアンたちにはちんぷんかんぷんである。
とにかく、殺害に用いられた矢を見れば、使い手がわかるかも知れない。そう言っているのだけはわかった。
「いいだろう! ――誰か矢を持ってこい!」
そう声を張り上げたオルルクの後ろ半分の言葉は、氏族の同胞へ向けたものだった。程なくして〈尾の氏族〉のひとりが筒状に丸めた獣皮の束を持ってくる。
「見よ! これがアヌンタ様を殺害した凶器だ!」
受け取った獣皮を目の前に転がすようにして開くと、その中から大事な証拠として保管されていた二本の矢があらわになった。
「我らゾアンは、このようなものは使わん! 人間かエルフのいずれかであろう!」
どうだ、と言わんばかりにオルルクは高姿勢になった。
しかし、矢を目にした途端、シャハタは眉をひそめる。
「直接に手に取らせていただいてもよろしいでしょうか?」
そう断りを入れるシャハタにオルルクは「よかろう」と言ってから、さらに続けて言う。
「知っているだろうが、矢の先には毒が塗ってあった。自分で毒に中って死なぬようにな」
おまえらが毒を使うように指示したのだから知っているだろうと言わんばかりのオルルクの侮蔑混じりの言葉である。
しかし、シャハタはそれに怒りを覚えるよりも、ガジェタへの哀れみを覚えていた。
ゾアンにとって卑怯者の武器と呼ばれる弓矢を使い、あまつさえそれに毒を塗るところまで落ちていながらも、自身が蒼馬を殺害するときの山刀には毒を用いなかった。
それは、ガジェタの中で最後の最後に残されたゾアンの誇りだったのかも知れない。
そんなことを想いながら直接に矢を手に取らせてもらったシャハタはその矢を様々な角度から眺めたり、手のひらに乗せて転がしたり、指で弾いたりした。
そうしているうちにひそめられていたシャハタの眉が、しだいに吊り上がっていく。
そして、牙を剥いて歯を噛み締めたシャハタの口から声が洩れる。
「……何だ、これは?」
ただならぬシャハタの様子に、皆は耳をそばだてた。
そこへシャハタがいきなり吠える。
「ふざけるな! これが矢なものか! こんな重心もまともに取れていないものが使い物になるわけない! 矢羽根もただ鳥の羽を突っ込んだだけじゃないか! これでは目の前の獲物に当てることもできるものか! 人間でもエルフでもいい! 多少でも弓矢を使う者を捕まえて訊くがいい! きっと誰もが口を揃えて言うはずだ! こんなの矢とすら呼べないと!」
ものすごい剣幕でまくし立てるシャハタに圧倒されながらもオルルクは反論する。
「だ、だが、実際にアヌンタ様はこの矢で射貫かれていたのだぞ!」
「そんなの、こうやったに決まっている!」
そう言うなりシャハタは手にした矢を引っ掴むと、それを大きく振り上げた。
シャハタの突如の行動に、オルルクは身をのけぞらせ、ガラムとズーグは片膝を立てて立ち上がろうとする。
ガンッと激しい音が鳴り響いた。
祭礼台の上は、打って変わって水を打ったようにシンッと静まり返る。誰もが驚きに見開いた目を一点へと注いでいた。
そこでは、シャハタが力任せに床板へ打ち付けた矢が、衝撃の余韻でわずかに震えながら突き立っていたのである。
先週末はワクチンの副反応で死んでたので更新できなかったよ(´・ω・`)ショボーン
というわけで急遽今日更新したよヽ(`д´)ノ




