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破壊の御子  作者: 無銘工房
龍驤の章
142/548

第8話 罠

 ジェボアの街の目抜き通りに面したところに、コルネリウスの屋敷があった。

 異国風の丸いドーム状の屋根を持ち、壁を真っ白な漆喰で塗り固めた白亜の大豪邸である。

 その二階の露台(テラス)に、小さなテーブルをはさんでヤコブとコルネリウスがいた。

「噂は聞かれましたか? 破壊の御子とか名乗るあの若造が、山賊を退治するために大掛かりな山狩りをやるそうですぞ」

 ニヤニヤと笑うヤコブが問いかけると、コルネリウスは冷めた口調で「噂だけは」と答えた。

 コルネリウスも、破壊の御子がシャピロ商会を通じていくつかの傭兵団に声をかけているという話は耳にしていた。しかし、大掛かりな山狩りをするだけの傭兵がすぐに集まるはずもなく、またかなりの期間にわたって山狩りをするということで、その人集めは難航しているそうだ。

「いやはや、これならばわざわざ私が山賊退治を言いふらす必要もありませんでしたな」

 コルネリウスは口では同意しながらも、あまり良い顔はしなかった。

 ヤコブが商売敵などを流言飛語でおとしめたり、苦境に落としたりするのは、いつものことである。自分もそうした汚い手を使うこともあるので、それ自体を非難するつもりはない。だが、それを臆面もなく口にするヤコブには、さすがに辟易(へきえき)する。

 そんなコルネリウスの気持ちも知らず、ヤコブは上機嫌で言葉を続けた。

「あのダリウス将軍を打ち倒したと聞いておりましたが、しょせんはまぐれであったようですな。このように山狩りをすると大声で触れ回れば、山賊どもはとっくに逃げる算段をつけている頃でしょう」

 コルネリウスは適当に相槌を打ちながらも、それには釈然としないものを感じていた。

 ヤコブが言ったように、あの破壊の御子はホルメア最高の将軍と名高いダリウス将軍をまぐれであろうと打ち破った奴である。そんな奴が、山賊たちが街の中に手の者を潜ませている可能性に気づかぬはずがない。何らかの目的があるのだろうか? いや、それすらも買いかぶりなのかもしれない。

 そんな取り留めもない考えに(ふけ)っていたコルネリウスのところに、使用人が駆け込んできた。

「だ、旦那様。大変でございます」

「何だ、騒がしい。いったい何があったというのだ?」

 客人の前での不作法な振る舞いを叱責するコルネリウスに、その使用人は頭を下げて謝罪してから耳打ちした。

 当初、眉根をしかめていたコルネリウスだったが、すぐにその目を大きく見開いた。

「……! それは本当なのか?」

「本当でございます。今、街の門のところでは大きな騒ぎとなっております。私もこの目で確認してきましたので、間違いございません」

 その使用人が言うとおり、二階の露台から見下ろせる通りでは街の人々が門へ向かって駆けていく姿がいくつもあった。

「いかがされましたかな、コルネリウス殿?」

 ヤコブの問いに、コルネリウスは半信半疑のまま答える。

「どうやら、破壊の御子が山賊どもを捕まえて来たらしい」

「何ですとっ?!」

 ヤコブは椅子を蹴立てて立ち上がった。


                 ◆◇◆◇◆


 コルネリウスとヤコブが街の門まで行くと、すでにそこは捕えられた山賊たちを一目見ようという大勢の人でごった返していた。

 多くの群衆が周りを取り囲む中では、ゾアンたちが乗る数台の幌馬車と、その後ろに荒縄で両手を数珠つなぎにされて()かれた、いかにも山賊然とした男たちがいる。

「やあ、ヤコブさんにコルネリウスさん」

 ふたりを見つけた蒼馬が闊達(かったつ)な笑みを浮かべて手を上げた。すると群衆が自然と割れ、ヤコブとコルネリスの前に道を作る。そうなってしまえば無視するわけにはいかない。周囲の群衆に圧されるようにして、ヤコブとコルネリウスは蒼馬の前に出た。

「お約束どおり、山賊たちを捕まえてきました」

 ふたりを前にしてニッコリと微笑んだ蒼馬が、幌馬車につながれた山賊たちを指し示した。それに鼻白みながらもヤコブは叫ぶ。

「そ、そんなはずがあるものか! 本当に、そいつらは山賊なのか?!」

 そこいらの流民か何かを捕らえて山賊だと偽っているのだろうと言わんばかりの口調である。しかし、そこに横合いからひょっこりとヨアシュが顔を出す。

「この者たちは山賊で間違いございません。そのことはシャピロ商会が保証いたしましょう」

 シャピロ商会が、すぐばれるような嘘に加担するわけがない。そうなると、この捕縛された者たちは山賊と思って間違いないだろう。

「し、しかし、どうやってっ?!」

 これまで何度も山賊たちを捕縛しようとし、そのいずれも失敗に終わっていたのだ。いったいどのような奇策を用いたのかと問えば、蒼馬はあっさりと答えた。

「荷物の代わりにゾアンのみんなを乗せた偽の隊商を作っておびき寄せただけですよ」

 いくら優秀な狩人であるゾアンといえど、どこにいるともわからない山賊たちをたった三十人ばかりで見つけ出すのは困難だ。それならば山賊の方から出てきてもらえばいい。そのために蒼馬は、メナヘムに借りた空の幌馬車数台にゾアンたちを乗せ、ジェボアの商人ギルドの旗を掲げて街道を往復させたのである。

「そんな馬鹿なことがあるか!」

 しかし、ヤコブは一言のもとに否定する。何しろ、空の幌馬車に傭兵を乗せて山賊をおびき出そうと言う手は、とっくに失敗していたものだ。

「それぐらいで捕まえられれば、とっくに捕まえている! や、やはり嘘なのだろう! そうに決まっている! それに、だいたいおまえは山狩りをすると言っていたではないか!」

 激昂するヤコブとは対照的に、蒼馬はあっけらかんと答える。

「山狩り? ああ、それは嘘です」

「う、嘘ぉ?!」

「だって、ジェボアの軍隊が三度も山狩りして失敗したのに、同じことをやるわけないじゃないですか」

「では、何のためにそのような嘘を?!」

「それは当然、山賊たちを逃がさないようにですよ」

 これまで商人ギルドが国の軍隊まで使って山狩りをしても山賊が捕まらなかったのは、どこかで情報が漏洩(ろうえい)していると見て間違いなかった。このジェボアで国の軍隊を動かすには、十人委員の採決を経て、国王への上奏(じょうそう)という形を取らなければならない。そうした時間も関与する人も増えれば、それだけ情報が漏洩する可能性が増えてしまう。

 しかも、三度も山狩りが失敗していたところを見ると、ただ情報が漏洩しただけではない。おそらくは山賊たちも内通者を作るか手の者を街に入れ、能動的に情報を集めているのだろう。

 そんなところへ山賊退治を依頼された情報をヤコブに流されてしまえば、瞬く間に山賊たちの知れるところとなる。それでは、これまでと同様に山賊たちは姿をくらませてしまうだろう。

 それでは山賊退治を達成するのは困難になる。

 わずか二十人ばかりの山賊に、ジェボアの二千人もの兵士が手を焼いたのは、ひとえに山賊たちの居場所が掴めなかったからだ。逆を言えば、山賊たちの居場所を掴むか、彼らを表に引っ張り出してしまえばわずか二十人ばかりの山賊など問題ではない。

 しかし、ヤコブに噂を流すのをやめさせるのは難しかった。そればかりか、こちらが困っていると知れば、大喜びでさらに噂を広めるだろう。

 また、その噂を否定するのも下策だ。多少なりとも街の情勢に通じている者ならば、ヤコブが蒼馬に悪意を抱いていることぐらいは耳にしているだろう。そのヤコブが山賊に聞こえるのを承知した上で、蒼馬たちに山賊退治を依頼したと吹聴(ふいちょう)しているのである。それを蒼馬が躍起になって噂を否定すれば否定するほど、かえって噂の内容を肯定するようなものだ。

 そこで蒼馬は、ヤコブの噂を否定するのではなく少しだけ真実を歪める嘘を広めたのである。

 破壊の御子が山賊退治をするために大掛かりな山狩りをしようと、多くの傭兵たちを集めていると。

 いまだ情報伝達を人の口に頼る時代である。ヤコブの噂と、それに乗っかる形で流された蒼馬の嘘は人から人へと伝わって行くうちに、しだいにひとつの信憑性の高い情報へと変わりながら、山賊たちの耳へと届いただろう。

「それが何で、山賊たちを逃がさないことになるのだっ?!」

 自分が悪意をもって流した噂が逆に利用されたのは分かったが、それがなぜ山賊たちの逃走を防ぐのかわからないヤコブが叫ぶ。

「だって、大掛かりな山狩りですよ。準備にどれぐらいかかるかわかりません。それに、山賊たちだって逃げる準備も必要でしょうからね」

 蒼馬の答えに、ヤコブは「あっ」と声を洩らした。

 すぐにでも山狩りが行われるとあれば、山賊たちも取るものも取りあえずに逃げただろう。しかし、噂ではまだ傭兵たちを集め始めたばかりである。それならばまだまだ準備に時間がかかり、実際に山狩りが行われるのは当分先と考えるはずだ。

 それに、いくつもの傭兵団を集め、かなりの期間にわたって行われる山狩りだという。

 そうなると問題になるのが、潜伏している間の資金だ。

 当然だが、山賊たちも隠れている間も食わなくてはならない。そして、それにはそれなりの金が必要となる。しかも、山賊などという荒事をしているような連中ならば、つつましやかに倹約生活を送るはずがない。太く短くと、金遣いが荒い奴もいるだろう。そんな仲間が金に困り、いらぬ騒動を引き起こして捕縛でもされてしまえば、そこから他の仲間の情報が洩れる恐れがある。

 そうならないためにも、ある程度の金を仲間たちに持たせておかなければならない。

 山狩りは当分先だという憶測と、潜伏中の資金を稼がなければならないという問題によって、山賊たちの逃走を防いだのである。

「でも、逃げる前に、ひと稼ぎしようとした山賊も困ったでしょうね。そんな時に限って自分らの縄張りを通ろうという商人がいないんですから」

 蒼馬の言葉に、ヤコブは食って掛かる。

「そんな都合よく商人の足が途絶えるものかっ!」

 山賊たちが出没する街道は、ジェボアとボルニスをつなぐ重要な道である。そこを通る隊商が一日たりとも途絶えるわけがない。

 蒼馬はニッコリと笑うと、種明かしをする。

「だって、もうすぐ山狩りが行われて山賊たちがいなくなるというのに、そこで無理して高いお金を払って傭兵を雇ってまで街を出ようという商人がどれぐらいいます?」

 山賊が出るとなれば、それに備えなければならない。しかし、警護のために傭兵を雇おうとすれば、その費用も馬鹿にならない金額になる。それならばよほどの急ぎでなければ、山狩りが行われて山賊たちが鳴りを潜めている時にした方が得だ。また、ボルニスの街でも蒼馬の指示を受けていたマルクロニスがジェボアに向かう商人を足止めさせていたのである。

 これには、山賊たちも焦ったであろう。

 せっかく雲隠れする前のひと稼ぎをしようと思っていたのに、肝心な獲物が来ないのだ。もう少し待つか、それとも諦めて山狩りが行われる前に姿を消すべきか、山賊たちはさんざん迷ったに違いない。

「もし、そんなところに金目のものを積んでいそうなジェボアの商人ギルドの旗を掲げた隊商が通ったとしたら、どうでしょう?」

 普段ならば、山賊たちも慎重に獲物を見定めたであろう。

 しかし、街に潜ませた手の者の話では、いまだ山狩りのために傭兵団を集めている最中であるという。裏を返せば、自分らを討伐しようとする連中は、まだ街すら出ていないということだ。

 早く潜伏中の資金を手に入れたいという焦り。そして、まだ敵は来ないという油断。

 山賊たちには襲うという選択肢しかなかった。

 しかし、その隊商に載せられていたのは、ガラムやズーグに率いられた勇猛なゾアンの戦士たちとハーピュアンである。

 そうとは知らずに隊商を襲いに山賊たちが姿を現せば、後は簡単だ。

 広大な平原で何日も追跡して獲物をしとめる狩猟の技術と、馬よりも俊敏な足を持つゾアンから逃れられる人間はいない。また、偵察機のように上空から追跡してくるハーピュアンを振り切れる人間もいない。

 かくして山賊たちはひとり残さず殺されるか捕縛されたのである。

「ただ罠を張っても、切り株に兎がぶつかるのを待つようなもの。それよりも、相手が罠にかからざるを得ない状況を作ることこそが重要なんです」

 そう得意げに語っていた蒼馬の袖が、小さく引っ張られる。蒼馬がそちらに目を向けると、そこには袖をつまむシェムルの姿があった。

「どうかしたの、シェムル?」

「切り株に兎がぶつかるとは、何のことだ?」

 今さらながら、蒼馬はこの世界に「待ちぼうけ」の話がわかるはずがないことに気づく。「えーと……偶然切り株にぶつかって死んだ兎を見た農民が、まじめに働くより兎が死ぬのを待っていた方が得だなって考えて、畑仕事をやめて切り株をずっと見守るんだけど、結局は二度と兎はこなくて畑もダメになっちゃったって話」

「そんな間抜けな兎が本当にいたのか?」

「え? たぶんいたんじゃないのかな? あれ? でも、逸話だから創作なのかな?」

 それまで理路整然と策を説明していた時と、シェムルの素朴な疑問の前にしどろもどろになっている姿の落差に、ヤコブとコルネリウスは唖然としてしまった。

 その気の抜けた空気に、やや慌てたヨアシュが大げさな身振りで蒼馬を称賛する。

「いやぁ、さすがはソーマ様。あのダリウス将軍すら打ち破った智謀をもってすれば、山賊など物の数ではございませんね!」

 周囲にいるジェボアの人々に蒼馬の力を喧伝(けんげん)し、彼と友誼(ゆうぎ)を結んだ方が街の有益だと思わせる風潮を作るためである。

 それに気を取り戻したコルネリウスは、心の中で小さく舌打ちを洩らした。

 あたかも破壊の御子が山賊たちの行動をすべて見抜いたような口振りだが、そうではあるまい。そのようなことが人の身でできるわけがない。おそらくは、二重三重の構えでいたはずだ。

 そのコルネリウスの予想のとおり、蒼馬は他にも手を打っていた。

 たとえば、ボルニスとジェボアの街の人の出入りの監視である。

 もし、山狩りを恐れた山賊たちがすぐに潜伏しようと思えば、余所者でも不審がられない大きな街――ボルニスかジェボアの街しかない。そこでボルニスの街を出た記録がない怪しい集団がジェボアに入ってこないか、逆にジェボアの記録にない怪しい集団がボルニスに入っていないのか、双方の街での人の出入りの情報を照らし合わせていたのだ。

 しかし、それができるのも蒼馬がこの時代では最速の伝達手段である早馬ですら比較するのもおこがましい最速の種族ハーピュアンを従えていたからこそである。

 また、山狩りのために多くの傭兵たちを集めているという噂も、脱走兵である山賊たちにとって潜伏するための格好の隠れ蓑になると思わせ、取り込むためのものだ。

 蒼馬はあえて語りはしなかったが、囮の隊商が失敗したときに備え、幾重(いくえ)にも策を巡らしていたのである。

 蒼馬がすべてを見抜いたわけではないと察したコルネリウスだが、それで蒼馬を侮るわけではなかった。むしろ、あの若さの青年が、これほどの策を張り巡らせたことに感嘆すら覚えていたのである。

 そんなコルネリウスの隣で、ヤコブは屈辱にブルブルと身体を震わせていた。相手を(おとしい)れようと思ってしたことが、かえって相手を助けることになったと言うのがなおさら腹立たしい。

「そうだ。ヤコブさんに、お願いがあるんです」

 そんなヤコブに、蒼馬に目でうながされたシェムルが一枚の紙を渡す。

「道中、山賊たちから聞き出しておいた内通者の名前です。ジェボアの動向を知らせる代わりに山賊から金品を受け取っていたそうです。この人たちの捕縛や処罰をお願いできませんか?」

 なぜわざわざ私がやらなければならないのだと言わんばかりの表情のヤコブだったが、受け取った名簿を開いたとたんギョッと目を()く。それから名簿を誰かに見られては大変とばかりに、急いで自分の(ふところ)にねじ込んだ。

「お願いできますでしょうか?」

 蒼馬が重ねて尋ねると、ヤコブは顎の下の肉をたぷたぷと揺らしながら激しく首を上下に振る。

「た、確かに(うけたまわ)りました! ――それでは私は、急ぎますので、これで!」

 ドタドタと足音を荒げて立ち去るヤコブの後ろ姿に、コルネリウスはおおよそのことを察した。

 おそらくは山賊たちが白状した内通者の中に、ヤコブの身内か使用人の名前があったのだろう。これまで商人ギルドに加盟する商人たちを襲っていた山賊の内通者が身内にいたと知られれば、ヤコブは破滅である。破壊の御子は、あえて内通者の捕縛や処分をヤコブにゆだねることで、それを不問にしたのだ。

 これで大きな借りができたヤコブは、少なくとも当面の間は破壊の御子に向けていた剣を引かざるを得ないだろう。

 コルネリウスは、ひそかにため息を洩らした。

 同じようにため息を洩らしていたのは、ヨアシュである。

 今回のヤコブへの処置は甘いとヨアシュは思っていた。ヤコブの性格なら、しばらくはおとなしくはしているだろうが、身内に内通者がいたという証拠をすべて隠蔽(いんぺい)すれば、再び臆面もなく蒼馬を非難し始めるに決まっている。そうなるよりかは今すぐに内通者の存在を明らかにしてヤコブを失墜させた方が良かったのだ。

 その方が他の十人委員たちへの見せしめになるし、おまえたちのところにも内通者がいたんだぞと臭わせるだけで他の十人委員は誰も逆らえなくなってしまう。そうした方が、蒼馬にとっては有益だったはずだ。

 それぐらいは蒼馬も察しているはずなのに、それをやらない。もしくは、できない。

 いずれにしても、せっかくの好機をみすみす逃してしまったのは間違いないと、ヨアシュは考えていた。

 シェムルと笑いを交わす蒼馬の姿からは無理難題を解決できた喜びと、十人委員との交渉が好転するであろう期待が見て取れる。だが、ヨアシュはそう簡単にはいくまいと思っていた。

 なぜならば、蒼馬が知らず、そしてヨアシュが口にできないある事情がジェボアにあったからだ。

 はてさて、どうなるものかとヨアシュが思案していると、そこに遅ればせながら蒼馬が山賊を捕縛したことを聞きつけたメナヘムがやってきた。

 苦虫を噛み潰したような顔になるコルネリウスとは対照的に、余裕のある笑みを浮かべて会釈したメナヘムは、周囲にいる人々に言い聞かせるように、はっきりとした大きな声で言う。

「コルネリウス殿。ソーマ様は、こうしてギルドの者たちをさんざん苦しめていた山賊たちを退治してくれたのです。正式に十人委員の会合にお呼びし、感謝の意を示すべきではないでしょうか?」

 メナヘムの提案に、コルネリウスはただうなずくしかできなかった。

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