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第9話:発覚

※今回は英雄視点の話です。

テレビの音で綾子はようやく目を覚ました。

コタツに入りテレビ見ながら、おそらく母の差入れのリンゴを頬張る英雄に気付く。


「…!あれ…まさか…ああっ!!」


やっと起きた…


英雄は振り向きニタニタしながら

「おはよう。今、何時だい?」



「ごっ…!ごめんっ!!すぐ着替える!!」


英雄は慌てる綾子に

「ゆっくりでいーよ。俺リンゴ食ってるから!」

と優しい笑顔。


英雄は綾子が隣の部屋に入った音を聞いて表情を変える。

綾子が慌てて顔を洗ったりしている…

お義母さんに怒られている…


英雄は、段ボール箱に戻した日記の信じられない内容を思い出す。


てっきり…子供らしいかわいい日記になっているんだろう。遅刻の罰でちょっと冗談でからかってやろうと思って…ほんの出来心で見てしまった。

そういや彼女は…いつもなんとなく感じていたが…自嘲癖があった。


もっと自信もてばいいのに…何も知らなかった俺はいつもそう思っていた。


今…とても冗談で書いたとは思えない日記を見て…理由がやっとわかった。


「英雄。ごめん!用意出来たよ!」

綾子が慌てて戻って来る。


いつも通りにしていよう。

英雄はゆっくり微笑んで

「んじゃあ、式場行くかぁ!」

と車のキーを出す。

義母に

「ご馳走さま」

と挨拶し、綾子を乗せて車を走らせる。


式場で招待状の相談と衣装合わせを済ませ、早めの夕食を取る。


綾子は俺が日記を読んだなんて全く気付いていない感じだ。


騙してるみたいで気が引ける。


今思えば…岡本の話をした時…ちょっと怯えた顔をしてた。


俺は馬鹿だ。


どうして気付かなかった?


モヤモヤする。


隠し事をされてる気分にもなってくる。


俺にもよくわからないが…


いつもは駅で別れるが、俺はいつの間にか綾子の言葉を待っていた。


俺から聞ける内容じゃあない。


解ってる。


でも…


あえて駅前を通過する。

綾子の口から聞きたい。


英雄がイライラしたような雰囲気を出しているのに綾子も気付く。


「あれ?駅過ぎちゃってない?どうしたの?」


ダメだ…。


どうしても見なかった事に出来なさそう。


俺が日記の話をしたら…綾子を傷つけるのは判ってる。


でも…


顔が引きつる。


「…許せないな。」


英雄はそう呟き、近くの店の駐車場に車を停めた。

何の事か気付かず綾子はキョトンとしている。


英雄は自分の複雑な感情に耐えられなかった。


「綾子。ごめん。…俺、今朝お前の部屋にあった日記見ちゃった。」


「…!!」


綾子はやっぱりショックを受けたようだ。


一瞬にして顔色が変わった。


鈍い俺ですらすぐ判る


英雄は綾子から目を逸らさないまま


「許せないな!…岡本って奴もその仲間も!…でも…」


英雄は少し辛そうに

「お前にもショックだったよ…!どうして打ち明けてくれなかった!?……俺、信用されてない…?…俺、そんなに頼りない?…」


綾子は何も言えずに震えている。


目には大量の涙が溜まっている。


ああ…感情、ぶつけてしまった…俺が傷を抉っている。かなり余計な事を言って傷を抉っている。


綾子はやっと搾り出したような小さくかすれた声で


「…ごめんね…嫌われたくなかった…」

と、呟き大量に涙を落した。


泣かしてる…


自己嫌悪。

英雄は力無く俯いた。

冷静になってくる。

よくよく考えると、こんな事打ち明けるのも綾子次第なのに…


子供か?俺は…




無言状態が続く。




暖房が効いてるのに体が冷たくて空気が重苦しい。


そんな空気を破るように英雄はゆっくり顔を上げて綾子を見た。


「…なんか…さ。上手く言えないけどさ…。お前が傷ついてきた事、とても他人事になんか思えない。…俺も同じ事やられたような気持ちになってる…」


英雄は綾子の震えの止まらない手を包むように強く握った


「俺…勝手な事言ってるね…ごめん。でも…お前の事判って良かったなんて言ったら…怒る…?」


綾子は顔を上げて首を横に振る

「ごめんね。…こんなに心配してくれてるのに…英雄の事、ちゃんと信用してるよ。だから…今度から何かあったらちゃんと全部話すね…ありがとう…なんかさ…恥ずかしいっていうか…情けなくて…ごめん…」


少しずつ綾子の表情が柔らかくなってきている。

良かった。

英雄も綾子の頭を撫でて

「もう…無理すんなよ…何かあったらすぐ言えよ…それに情けなくなんかないよ。今まで引きずりながらも、ここまで生きてきたんだし。俺がエラソーに言える事じゃないけどさ…」


綾子は首を振る。


英雄も、モヤモヤした感情が晴れてくる。

少しずつ笑顔になってくる。


「じゃあ…約束な。傷は分け合おう。頼りないけど俺はお前の事をちゃんと理解するから。…だから…もう後ろ向きになるな…なっ?なっ?」


綾子は泣き腫らした顔で精一杯大きく頷いて笑った。


良かった…打ち解けれた…


綾子を送った後。

英雄は一人車の中で明日からの事を考えていた。

変に岡本に干渉するのは良くないな…


でも…確か…岡本って…!


英雄は先日、人伝に聞いた噂を思い出す。


まぁ…どっちにしろ…綾子が嫌な思いしたら助けてあげれればそれでいいか…


英雄は険しい表情をした。



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