第3話:宣戦布告
翌朝。
不安になりながらも会社に出社する。
岡本の事で頭がいっぱいだったのか、今日は通勤電車で寝てないぐらいだ。
とにかく。
何か言われたり、されたりしたら
「やめて下さい!社会人にもなってこんな事して恥ずかしくないんですか!?」
と怒鳴りつけてやるつもりでいた。
しかし、仕返しをされる可能性もある。
岡本が、他にクラスメイトがいないにしろ、若い男性社員を味方に付け出したら…
きっと昔以上に酷い事になるかもしれない…
今の幸せ。全部壊されるかもしれない。
婚約解消
同僚からの嫌がらせ
業務妨害
一般的に見れば大袈裟に恐怖を抱いているのかもしれないが…人間不信に陥っている綾子には本気の心配事だった。
子供の頃は単純な暴力と汚い言葉を浴びせる事しか知らないだろう。
だが、大人になればどうだろう。
お金の事、カード情報の事、仕事の事…子供の時よりいろんな物事を理解している。
それだけ知識が増えている。人を苦しめる事なんか容易に思い付くだろう。それに暴力なんて受けたら生命の危険もある。
そうしたら綾子が想像しているよりずっと最悪な事が起きるかもしれない。
けれど、綾子にとっては今在る幸せを何としても守りたかった。
自分を守る為には今ここで岡本に立ち向かわなければならない。
タイムカードを押し、自分のデスクに座る。
いつものようにパソコンと睨み合いをし、昼食をとる。
不安だったが何も起こってない。
いつも通りだった。
ちょっと拍子抜けすらしてしまう。
「綾子、お疲れ様。」
背後から聞き慣れた声がする。
婚約相手で彼氏の英雄だった。
「なんか…あった?」
英雄は綾子の顔を覗き込み、心配そうな顔をする。
「え?…ううん。何もないよ。」
綾子は一瞬見抜かれたと思い、ドキッとするが、すぐに平静を装った。
「え?いや…なんかさ…いつもと雰囲気違ってさぁ…」
英雄はポリポリ頭をかいた。
そしていつもの様に互いの仕事話、世間話、挙式の相談で休憩時間を過ごす。
そんな状態で2週間ぐらい過ぎた頃だった。
いつものように昼食をとる。
プラプラ英雄が綾子に寄ってくる。
だが、この日の英雄は、いつもと様子が違った。
綾子は少し嫌な予感を覚える。
「なぁ…ちょっときーていい?」
「え?…どうしたの?」
綾子は先程から自分を襲う寒気と胃痛で顔色がどんどん青ざめる。
英雄は周りをキョロキョロ見渡し、少し小声で
「綾子さぁ…営業の石渡マネージャーから聞いたんだけどさ…新しく入ってきた奴、いるじゃん?…同級生だって?」
綾子の心臓は凍り付いたように冷ややかな血を全身に送った…
宣戦布告。




