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第14話:共通点

※引き続き、岡本が主人公の話です。

高橋主任は相変わらずマイペースな運転をしている。



俺は冷や汗をかく


この男…本当平静を保ってるけど…

彼女…って事は…



過去の事も知っているんだろうか…!?


赤信号で車が止まる


高橋主任は頭をかきながら


(わっ…)


俺と目が合う


「岡本君ってさ、タバコ吸う人?」


はい…?


「いえ、吸わないです。」


高橋主任は拝むようなジェスチャーをして、


「煙とか苦手だったら悪いんだけどさ〜吸って良い?」


「はい…」



高橋主任は

「ごめんね〜!」

と言いながら既に火をつけていた。



ちょっと拍子抜けしてしまう。

もしかして…知らないのか…?


知っているとしたら…間違いなく俺にキレるだろう。


俺が考えを巡らせている時。


高橋主任は窓を開けて


「そんでさ…昔の事聞いたんだ。」


イキナリ話を戻す


…!!


「あっ…!町田…さんに……」


聞きたいけど聞けない事を先に言われると余計恐ろしい。



冷や汗が首すじや額に滲む。


「ああ。」



しばらく沈黙が走る


先に出たのは高橋主任だった。


「さっきの食堂でのやり取りも聞いてた。」


「……!」



なんだこの拷問みたいな空間は…!?


高橋主任は2本目のタバコに火をつける


俺は素直に認める。

逃げ場がない。


…いや、逃げるつもりはない。



「…悪い事…いや、取り返しのつかない事をしたと思ってます……ごめんなさいじゃ謝り切れない事ぐらい解ってます…」

俺は背筋に走る寒気に必死に耐えているのか、無意識に握り拳を作っている。両手は力を込め過ぎてるみたいで震えていた。

すっかり血の気の引いて冷えきった背中に罪悪感という刃物を突き付けられている感じだ…


以前に2回…

この感覚を体験している。


町田と再会した時…


それと………




高橋主任はしばらく黙って俺の様子を見ていた。


「ふう…。」


溜め息をついている。

怒りを鎮めているのだろうか…?




ようやく高橋主任は口を開いた。


「これ以上責めないよ。…」


………!


「…すみません…」


また沈黙が走る。




高橋主任の表情は徐々に曇って来ているみたいだ。


そりゃ怒るに決まってる。

俺はこの人の大切な人を罪もないのに執拗に苦しめた。


子供だったからって言い訳が出来る訳がない。



高橋主任は、まるで体の奥底からわき上がる何かをこらえているように見える。


相当怒ってたんだろう


少しずつハンドルを持つ手が震えてる。


こんなに怒りながらも俺をこれ以上責めないと言ってくれた。


俺は本当に小さい。


そして大人げない。


この人は大人だな……


俺は不十分なまま、そのまま大人になり、



…………

俺自身の大切な人を






………







なくしてしまった!!!



頭をかきむしりたくなる衝動にかられる。


その時。


イキナリ、高橋主任はまた拝むようなジェスチャーをして


「岡本君!ごめん!コンビニ寄っていい?」


…はい!?


「さっきから腹痛くてさ〜我慢してたんだよ〜何時に到着予定だっけ?」

…腹痛?!


「…14時です。まだ時間ありますし…」


高橋主任は苦しそうに

「うあー…マジ痛え…ごめんなぁ〜」



この人…


マイペースだなぁ…



焦っているのか車の運転がどんどん荒くなる


「ちょっ…!ちょっと…!!たっ…高橋主任!?」

ドウゥゥン…

キキキキッ!

ガーーーッ!



「おらぁ!!どいてくれーっ!!」


反対車線へ、かなり無理に曲がりコンビニに停車する。


「岡本君!ちょっと待ってて!!」


そう言い高橋主任はダッシュでコンビニに突っ込むように走って行く。


「…はっ…ははっ…」


ちょっと笑ってしまう。


さっきまで高橋主任に怯えてたのに。


高橋主任って…なんか不思議な人だな…




数分後



高橋主任は顔を赤くしながら戻ってくる。


「いや〜危なかった〜」

「良かったですね。大事に至らなくて…」


高橋主任は頭をかきながら


「あと数ミリの状況だったなぁ〜アハハ!」


そしてイキナリ怖いぐらい真面目な顔をして、


「町田に絶っ対!に言うなよ!!」


「いっ…言いませんよ!」


てゆうか…言えませんよ…


また高橋主任は笑いながら車を走らせる。


「岡本君は突っ込むのうまいね〜」


「…あ!いや、突っ込んでるわけじゃ…」


「誉められた事ない?」

「…ないです」

…ボケもツッコミも誉められた事ないです。


この癖は…やっぱり友喜と居るからだろうか。


あれ?


そういえば…



久しぶりだ…



…この感覚。


友喜以外とこんなに話してて楽しいのは…!



本当に久しぶりだ…



高橋主任は相変わらず鼻歌を歌いながら運転をしている。



「ところでさ〜」

高橋主任からきりだす。

「岡本君、似てるねぇ」

誰に?

「誰に…ですか?」


「町田!」


「ええっ!?」


似てるのかな?

外見ではないだろう。当たり前だけど。


じゃあ…性格?


今の俺の性格じゃあ…可哀相だろう…


高橋主任は笑いながら


「気を許すと…イイ顔する。」


「…!?」


高橋主任は今度は何の断りもなくタバコに火をつけた。


「…あいつ、俺が苦手だったんだって。」


初めから仲が良かった訳じゃないのかな…?


「なんで…ですか?」


「どーやらさ…男性が苦手みたいで。」


昔の記憶か…


「初対面なのにだぞ!挨拶がてらに話しかけたらイキナリ半泣き!!」


「…そりゃ…主任、余計な事言いまくってるから…」


…あ!つい突っ込んじゃった!!


でも高橋主任は聞いてなかったみたいだ。


ホッ…


「俺ついムキになってさ…何かと接点作って、彼女に話しかけまくった。」


高橋主任は頭をかきながら


「そしたら…少しずつあいつの考え方わかってきてさ…」



「あいつ…人見知りとかじゃないんだよ〜」


高橋主任は少し悲しそうな顔をする。


「人嫌い。」


それは…!!


「それは…俺達のせいです…昔、集団で酷い事してましたから…」


すると高橋主任は急に真面目な顔をする。


「じゃあ…君も?」


「はい…俺もいじめていました…」


高橋主任は首を横に振る。

そうじゃないっていう風に。


「君も…人嫌いだろ?」



!!!


そういう意味か!!


「………」


俺は言葉がまた出なくなってしまった。


喉に引っ掛かる。


そして強制的に飲み込まれる。



いつもそうだ。



きっと話せば楽になるだろう。

俺に同情する人も居るかもしれない。



でも…



俺の『風邪ひいた心』はそれを許してくれない。



沈黙が走る。


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