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拍手掲載SS こうぶつについて

 

「それは昨日も食べてなかったか?」


勇者様の指摘に、私は袋を開ける手を止めた。む、違いますよ。これはこだわりがあるから、ちゃんと主張しておかなくちゃね!

「昨日のはアストロベリーでニガすっぱ甘い味のクッキーです。こっちはチュウトロベリーで、まったりとした味のクッキーです! 色がちょっと違うでしょう?」

味はかなりの違いなんだけれども、見た目ではあんまり分からない。間違えて食べた時のダメージは倍なんだけどね!

「ああ、確かに良く見たら組成が違う」

組成って、素材のことですか? よくわかんないけど、違うのが分かってくれたらしい。

「一ついかがですか?」

差し出してみるけど、勇者様はあっさりと首を振った。

「気持ちだけ受け取っておく」

私は一口クッキーをかじりながら考える。大体、甘いものを勧めたときには断られるなあ。これってつまり、

「勇者様は辛党ですね!」

と閃いたのだ! 思いっきり指摘してみるけど、

「そうでもない」

とあっさりと切り捨てられました。ですよねー。

「じゃあ食べ物の好みは一体なんですか?」

勇者様は少しだけ考えた様子で、

「水」

と答えました。

それは食べ物なんですか!

いや、食べ物? むしろ飲み物? 確かに、水が好きな人もいるけど! でもここでせっかく返事してくれたのに否定するのもどうだろう! むしろ、勇者様は水がとっても大好き? なら、人の好みにケチをつけるのもいけないよね。この場合、どう答えたらいいんだ!

ぐるぐる考えちゃうあまりに固まって唸る私。

「水は鉱物でしょう」

それまでもくもくと太陽の位置から方位を割り出していた神官様が横からつっこみました。

コウブツだけにね! って、それは冗談ですか神官様! これも反応に悩むな! 勇者様と二人、神官様を見て沈黙を保つ。神官様は逆に不思議そうに首をかしげた。あ、ギャグじゃなかったんだね!

そのとき、陸馬さんがポーと鳴いた。あ、餌の時間ですね。

乾燥させた草を陸馬さんの口元に持っていくと、大きな歯でもそもそと食べる。

陸馬さんのつぶらな瞳が、まだまだ足りないと訴えかけます。足元の草をちぎって大丈夫な種類か神官様に聞いてから、陸馬さんの前にドサドサと置く。

ちょっと手が青臭くなったから拭いて、クッキーの時間の再開です! 私を見て、勇者様が何か言いたそうにしている。

 うっ。

 ニガすっぱ甘い方を間違えて食べた。

「そっちは苦いやつだと思う」

 御指摘は、お早めに! ですよ、勇者様!



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