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第二話 『オムライスと我が青春』

「という訳で今日からここが雪春くんも住むことになる岩崎家です。畏まらなくていいから自分の家だと思っていいからね」

 駅から徒歩で10分ほどの場所に音羽さんの家はあった。入試や合格発表のときにはバタバタしていたので結局音羽さんの家には来れず仕舞いだった。

音羽さんの家は両親が仕事の関係で2年前から海外で暮らしている。本当なら音羽さんも連れていく予定だったそうなのだが日本を離れたくないとのことでこっちで一人暮らしをしているらしい。

「判りました。あ、スイマセンちゃんと挨拶してませんでした。改めてこれから3年間、よろしくお願いします」

「そんなの気にしなくていいのに。こちらこそよろしくね」

「ほらほら、音羽ちゃんもユキも早く入ろうよー。今日はユキの部屋の大掃除だから忙しくなるよー」

 引越し初日だから荷物整理という言い方のが正しい気もするんだけどまぁ似たようなものか。俺はそんなどうでもいいことを考えていた。

 家の中に入り、部屋に案内された後はとりあえず部屋の整理は後回しにして3人で少し早めの昼食を取ることになった。

「よーし、今日からはユキが一緒だから今までよりも気合入れて作らなくちゃね」

「ちょっと絵璃、それいつも手を抜いてるってこと?」

「そんなことは無いけど。ちゃんと普通に作ってるよ?今日からはユキへの愛情を込めて作るからもっと美味しくなるんだよ」

「色々と言いたいけれど、絵璃の料理が美味しいのは本当だから不問としておくわ。私じゃ簡単なものしか作れないし」

 二人の話を聞く限り料理は基本的に姉ちゃんが作ってる様子だ。

父親が居なくなってから母親も働きに出ていた為、小学校高学年頃には姉ちゃんが家の家事を任されていた。そのおかげで一通りの家事は完璧にこなすことが出来る。

「さーて気合入れて作るよー!二人は何か食べたいものはある?」

『『オムライス!!!』』

 ついつい叫んでしまった。が隣を見ると音羽さんもとてもいい笑顔で叫んでいた。

絵璃姉ちゃんのオムライスは他の誰が作るのより美味しい。姉ちゃんの得意料理だ。音羽さんもやはり姉ちゃんのオムライスはお気に入りの様子

「二人ともオムライス好きだもんねー。そういうと思って材料はちゃんと用意してあるよー。ちょっと待っててねー」

そういって絵璃姉ちゃんは料理へと取り掛かった。

「音羽さんもオムライス好きなんですか?」

「うーん。オムライスっていうか絵璃のは特別美味しいからね。よく作ってもらってるよ」

「音羽さん自身は料理とかはあまりされないんですか?料理とか上手そうですけど」

「私は基本的に食べる専門で。恥ずかしながら家事とかは苦手なのよね」

 意外だ。音羽さんは何でも卒なくこなせそうな印象を持っていた。

「そうなんですか。それじゃあ家事は姉ちゃんがほとんどやってたりですか?」

「最初は交代でやってたんだけどね。私がやる前に絵璃ちゃんがやってくれるからつい任せきりになっちゃったの」

「実家でも家事は仕方なくやってるんじゃなくて結構好きでやってるみたいな印象ありましたからね」

そんな感じで姉ちゃんの話を軽くしていたら姉ちゃんが出来た料理を運んできた。

「お待たせー!ご注文のオムライスお持ちいたしましたー」

「おっ、待ってました!」

皿にきれいに乗せられたオムライス。そしてケチャップで書かれたそれぞれの名前。

姉ちゃんの作るオムライスにはいつもケチャップで皆の名前が書いてある。そして何故かいつも俺のにだけハートマークが一緒に描かれている。

もう気にならなくなったとはいえさすがに少し恥ずかしい。

「それじゃあ皆で手を合わせてー」

『『『いただきーまーす』』』



久しぶりに食べた絵璃姉ちゃんのオムライスはやっぱり絶品だった。

一年しかたってないけどやはりこの味が一番しっくりくる。

これが食べれるだけでもこっちへ来たかいがあるってものだ。ってそれはさすがに言い過ぎか



「さてと昼ごはんも食べたし、荷物整理しておかないとな」

学校に用事があるということで音羽さんは昼ごはんの後でかけてしまった。

荷物整理といってもそれほどの量があるわけでは無いので二人でも十分出来る。

「お姉ちゃんも手伝うよー、まずはユキくんの教育に悪いHな本やDVDをちゃんと掃除しておかないとね」

「な、いきなり何を言ってるんだよ姉ちゃん。そんな本持ってるわけないだろ。ハハハ」

「そーだよね。ユキくんが見られて困るような本なんて持ってるわけないよねー」

 そう言いながら漫画本が大量に入ったダンボールを迷いなく開ける我が姉。……終わった

あのダンボールには上段には漫画が敷き詰められているが上3段以降は秘蔵のお宝本が入れてある。

それを見通していたかのように漫画だけ置いて残りの本を全て持っていってしまった。

「それじゃあ、この本とそこのCDケースに入ってるDVDはお姉ちゃんが捨てておいてあげるねー?」

「…………はい」

 まさかCDケースに入れたDVDまで見破られているとは思わなかった。姉ちゃんはあのケース、まだ確認すらしていないのに……

やはり姉ちゃんには俺のことは全てお見通しのようだ…………さらば我が秘蔵のお宝たちよ……

遠くへ引っ越す俺にと友人達がくれた激レア本や働くお姉さんシリーズのDVDも混じっていたのだが諦めるしかない。

姉ちゃんが俺に甘いとは言ってもさすがに持っていかないでくれと言うだけの勇気は俺にはない。

「……部屋の大掃除って……こういうことか」

そうして俺のお宝たちは消えてしまった。さらば我が青春。今までお世話になりました。お前達のことは、忘れないぞ

おれは涙を拭きつつ心の中で感謝の言葉と別れを告げておいた。





 そんなこんなで俺の引越し初日は終わった。荷物整理の後は夕食と風呂を済ませ、引越し作業で疲れも溜まってるので早めに寝ることにした。

絵璃姉ちゃんは言うまでもなく、音羽さんもいい人だし、これから3人で上手くやっていけそうだ。

明日は午後から入学説明会がある。保護者と行く人も居るがあいにくウチは絵璃姉ちゃんも音羽さんも学校で用事があるとのことで一人で行くことになっている。

まぁ一人で行くことに問題は無いはずだ。教科書とかも配られるらしいから荷物が多くならないといいけどな。

 もしかしたら、なっちゃんも室江高に入ってるかもしれない。まぁ、会えたとしても俺のことなんておぼえて無いだろうな。

そんな事を考えながら俺は眠りについた。

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