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ヴァンパイア・イン・ザ・スクール  作者: 青牙 ゆうひ
ヴァンパイア・イン・ザ・スクール
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第二十一話:協力者

「何だこれは?」

 清秋が到着したのは七階、廊下の突き当たりにある院長室だ。

 五階のフロア以降は敵に遭遇する事もなく、気の抜ける程簡単にこの場所に到着できた。

 しかし清秋の目の前には前嶌源二の姿はない。

「一体誰が」

 清秋の眼前には荒れ果てた部屋が広がっていた。

 ガラスが割れていないことから、先ほどの強大な破壊によるものではないだろう。

 壁際に立てられた本棚はその中に収めた本を全て床にぶちまけ、客人用であろう皮張りのソファーやそれに合わせたテーブルなどの配置も乱れて、所々破損している。

 何者かが自分より先にこの部屋に来て争ったのだろうか?

 しかしそうなると清秋達が到着する前にはこうなっていた事になる。だが、そうなると玄関に見張りがいた事がおかしいだろう。

 彼らが自分達を中に入れないために建物の玄関前で待ち受けていたのはおかしい。操られている者に意思は無いだろうが、彼ら全員を統制していたであろう一葉は源二がここにいることことを知っていたからこそ妨害してきたはずだ。

 となるとこの部屋で争いがあったのは清秋達が建物に入った後。その後で別の誰かがこの部屋に侵入して源二との抗争後彼を連れてどこかへいったということになる。

 いや、そうなると矛盾が生じるのではないだろうか。

 この病院は先ほど清秋が進んできたとおり、七階までの一本道となったRPGダンジョンのような建物だ。

 自分達が侵入してから別の誰かがこの部屋から出て行ったのなら必ず鉢合わせするはずである。

 戦闘が終わった出魅が窓から侵入してきたという事も考えたが、窓ガラスは割られておらず、大きく開かないようになっているため煙にでもならない限り出入りは不可能。

 密室殺人ならぬ密室誘拐が起きている。

 といっても清秋は今この部屋に入ったところで現在は入り口を入ったところで立ち尽くしているだけだ。奥の机の下に源二が隠れていると言う事も考えられる。

 電気の消えた薄暗い室内は、家具が作りだす大きな影には何かが潜んでいるのではという警戒を抱かせる。

 清秋はいつでも対応できるように両手を少し構えた状態でゆっくりと部屋の奥にある木製のデスクに向かう。

 足元には本棚に収まっていた本が散らばっている。そのほとんどが医学関係の本で、開いたページからは時折リアルな解剖図などが印刷されており、清秋の警戒心が更に高まる。

 さらに専門書以外にも『不老不死』、『吸血鬼』といった単語が含まれている本も所々に見られ、専門書や小説とジャンルは様々だ。二葉の言っていた不死の研究というのは本当のようだ。

 それらの本や家具の残骸を踏まないようによけながら、清秋は源二のデスクに到着する。

 机の裏や下を見ても何者もいないし、死体もない。やはり源二はどこかに連れ去られてしまったようだ。

 と、そこで床にクリップで留められた紙の束を見つけた。

「怪物と不老不死について?」

 それは源二が研究していたであろう不老不死の研究についてのレポートだった。


――――不老不死は医学にとっての夢である。それが実現されれば今まで完治が不可能とされてきた癌や後天性免疫不全症への画期的な治療薬を作りだす事も期待されるだろう。

 当研究では伝説の存在として知られている吸血鬼、および食屍鬼の生態を研究しその代謝能力、治癒能力について検証することでその能力をヒトに付与する事を目的とする。

 始めに断わっておくが、すでに吸血鬼、食屍鬼の存在は確認されており、両者はすでに保有している。以下にその生態についての諸データを記載する。――――


 図として示された表やグラフには心拍数や血圧、清秋には分からない専門用語を羅列した言葉だのが数枚に渡って印刷されていた。

 清秋は数ページめくって流し読みをする。


――――興味深い事に彼らの生態は私達とほぼ変わりない。しかしその身体能力は非常に高く、少なくともヒトの約数十倍はあると予想される。

 さらに吸血鬼はそれぞれの個体特有の性質を備えており、私がコンタクトを得た『魅了』を有するこ体は血液を他人の体内に埋め込むことで相手の意思に関係なく操作を出来るというものである。また、この能力は血液単体でも動く事が可能である。――――


 得に重要な情報を得る事が出来ない。ほとんどが清秋自身が体験したり出魅から聞いた内容である。

 更に読み進めると『実験項』と書かれた項目を見つけた。


――――・吸血鬼の血液による生命機能を失ったヒトの蘇生

 今回、私は協力者の下、吸血鬼の血液を得る事に成功した。この血液は単体でも生命を維持しており――――


――――投与により心肺機能の再生には成功したものの、その意識ははっきりしておらず、一般のヒトと同様の思考能力を得るには至らなかった。ただし、『魅了』の吸血鬼であったためか、吸血鬼の意思を通してその人間の記憶を得る事に成功した。このことにより、殺人事件などの捜査などにも――――


――――また、生命機能を失った食屍鬼へ吸血鬼の血液を投与も行った。こちらでは、もともとの個体の生命力の強さのためか、意識のある状態での蘇生に成功しており――――


――――協力者の証言によると、投与した血液の濃さによりその操作性も増し、さらに一度吸血鬼の血液を投与するともともと存在していた血液を全て破壊し、最終的には吸血鬼になってしまうらしい。

 そのため、現在は生きた人間および食屍鬼に対する血液投与はおこなっていないが、今後進めていきたいと考えている。――――


――――・『魅了』について

 『魅了』は親である吸血鬼の血液を他の生物の血液に混ぜることで、その生命体の操作を出来る能力である。

 その操作性は混ぜた血液の濃さに比例し、その生物の体重に対する血液量によって大体の値を数値化する事ができる。

 また、単純な生物程操作は簡単で、人間の操作には多量の血液が必要となる。

 しかし、吸血鬼の血液は少量でも入ると、その生物の血液を破壊し、全てを吸血鬼化してしまうため、数日後には完全な操作が可能となる。

 ただし親でない吸血鬼が他の生物に血液を混ぜた場合、血液を混ぜた吸血鬼が操作できるのはもちろんのこと、親吸血鬼も操作が可能となる。――――


 その後も長々と吸血鬼の性質や、他に行った実験についての結果が記載されていた。

 源二がこの研究によって今回の事件を引き起こした原因であるのは間違いないだろう。

 しかし途中の文章で清秋は引っ掛かりを覚えた。

 食屍鬼への吸血鬼の血液投与というのはおそらく一葉のことだろう。

 そうなると所々で出てくるこの『協力者』なる人物は何者なのだろうか。

 文章から読み取ると、この協力者の提供した血液によって今回の研究が成り立っている。つまりは全ての死体や一葉はその協力者の指示に従うと言うことになる。

 さらに純潔の吸血鬼である事から出魅と同等の力を有することも予想されるだろう。

 そんな人物がなぜ今回一度も登場していないのか。

 その疑問はすぐに解決されることになる。

 レポートを読み進めていくと最後の数ページ前に『謝辞』という項目があり、そこに協力者の名前が記載されていたからだ。


――――この度協力頂き、血液を提供してくださった杉山浩太氏には深く礼を申し上げる――――


 その人物は一度も登場していなかったのではない。

 もうすでに登場していたのだ。


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