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ヴァンパイア・イン・ザ・スクール  作者: 青牙 ゆうひ
ヴァンパイア・イン・ザ・スクール
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第十五話:いつもの場所で

 二葉を見つけるのはそう難しいことではなかった。

 時刻は午後七時半、昨日と同じベンチに二彼女は腰かけていた。

 スポットライトのように彼女を照らす街灯は電球が切れかけているのかチカチカと危うい光を発している。その明かりの下で体育座りをしている二葉はいつも以上に一層小さく見え、電灯の明かりが消えると一緒に消えてしまうのではないかとう不安を清秋に抱かせた。

 学校からノンストップで走ってきたが、ここでさらに力を込めて二葉の近くに駆け寄る。

「清秋さん?」

 その声にはいつもより元気がなかったものの、そこまで落ち込んでいないようで清秋を少し安心させた。

「どうしてここに?」

「いや、よくわからないけど、今までここでしか会った事がなかったからもしかしたらって思って」

「違う場所にするべきでした」

 少し頬を膨らませてムスッとする。

 そこで会話が途切れた。

 出魅の言われるがままに部室を飛び出してきたものの、見つけてから何を話せばいいのかなど全く考えてない。

「私のお父さんは、昔は優しかったんです」

 考えあぐねている内に二葉から会話を切りだしてくれた。

「私が小学校低学年の頃はお母さんとお姉ちゃんと四人家族でした。結構中はよかったんじゃないかと思います。お父さんも病院の院長で忙しい身でしたが時々時間を作って遊びに連れて行ってくれたり、夏休みには海に旅行に行ったりもしました。あの頃が私の中で一番……、いえ家族で一番楽しかった時間だったと思います」

 視線を少し上に向けてその方向に映った過去の映像を見るように宙を見つめる。

「あの時もそんな楽しい休日の確か日曜日。四人で買い物に行った帰りでした。運転手はお父さん、助手席にお母さん、その後ろにお姉ちゃんで右側に私。

 もう数十分で家に付く場所、青になった信号を確認して私達の乗った車がちょうど交差点の真ん中に差しかかった時、車に突然衝撃がきて……

 一瞬の出来事で、私は何が起こったのか分かりませんでした。気付いた時には車はひっくりかえっていて、車の左半分は完全に拉げていました。

 トラックの信号無視による左側からの衝突。後から聞いた話ではそのトラックの運転手は居眠り運転だったらしいですが、そんな事は私に関係ありません。

 お母さんは事故の直前にトラックに気付いたようで、一瞬の間に右側のお父さんをかばったらしいです。お母さんも食屍鬼でしたから普通の人よりかは力も体力もあったんですが、どうやら車体が潰れないようにするのは半分が限界だったらしくて、右側にいた私とお父さんは助かりました」

 それで母親は命を落としたのだろう。しかし今の話だと何かおかしくないだろうか。

「でもお姉さんは? 今日の昼間は生きてたよね」

「お姉ちゃんはお母さんと一緒にあの時死んだはずです。トラックからの盾になったお母さんとはちがって身体の損傷は少なかったんですが、変形した車体で胸を潰されて死んだのは医者である父も確認しました。

 話を戻すと、父はその時から少し変になりました。日常的に私と接する時などはあまり変化ないんですけど、今までより帰ってくるのが明らかに遅く、数日泊まってくることもしばしば。私から聞いても答えてくれないし、何かを隠してるみたいでした。でもお父さんも寂しいのかと思ってあんまり詮索はしませんでした」

 話過ぎて少し疲れたのか、昔を思い出して悲しみがよみがえってきたのか、そこで少し間を置いた。

「でもこの前、珍しく酔っぱらって帰ってきたんです。普段からお酒には弱くてあまり飲む方ではなかったのであそこまで酔ったお父さんは初めて見ました。しかもなにかいい事でもあったのか上機嫌で。『ようやく見つけた』とか『ついに成功する』とか言ってました」

「見つけたって何を?」

「わかりません。でもお母さんが死ぬ前から探してたらしくて、多分研究と関係してたのかも」

「研究って、二葉ちゃんのお父さんって医者だったよね?」

「はい。でも大学を卒業したあとも母校と共同研究をしていまして、お母さんや私たち姉妹も協力していました。といっても血液を提供したり運動能力を測定したりと簡単なもので人体実験みたいなものはありませんでしたが」

 二葉の母親は食屍鬼、そしてその娘である二葉のとその姉は人間と食屍鬼の血を引き継いだハーフだったはずだ。となると彼ら彼女の父親が研究していたのは人類以外の知的生物の研究か何かだろうか。

 いや、大学という研究機関でそんな研究を行えるはずがない。

「お父さんは一体何の研究をしてたの?」

「不死の研究」

 清秋の質問に対して二葉は目線を戻し、清秋を真っ直ぐ見つめて真面目な顔で言った。

 その言葉があまりに予想外だったため二人の間に沈黙が漂う。

 まるで暗闇が性質を持ったのではないかと錯覚するほどの沈黙。

「どういう……」

 ようやく声を絞り出したものの、それはうまく文章にならなかった。

「そのままの意味です。人類はどこまで生きられるのか。不老長寿は何千年も研究されていたことです。

 お父さんは表向きで医者をする反面で研究をしていました。お母さんと出会ったのもその研究の繋がりらしいです。最初は食屍鬼であるお母さんが研究対象だったらしいですが、次第に恋仲になっていったということを聞いたことがあります」

 そんな研究が現代で行われていたことに清秋は驚いた。

 たしかに現代医学の発展は目覚ましい程だが、それはあくまでも科学技術、医療技術といった観点からであって、怪物の生命力を利用するなどというオカルト染みた方法など聞いたことがない。

 よく話を聞くと、最近の癌研究やips細胞の発見とも深く関係しているらしい。

「私にわかるのは不死関係する何かだということぐらいで、実際に何を見つけたのかは……、でもお姉ちゃんが生き返ったのは何か関係があるのかも」

 どうやら彼女の知っている情報はこれだけのようだ。それに、話している間に二葉も落ち着いてきたらしい。

 ちらりと公園の外に眼を向けると、杉山が車を着けて待っているのが見えた。ハザードランプを点灯させていつでも発進できる状態。

 時計を確認すると、三十分程話しこんでいたらしい。先に向かった出魅は待ちくたびれていることだろう。

「じゃあ僕は病院に向かうけど、二葉ちゃんはどうする? 出魅さんから連れてくるようには言われてるけど、僕は無理に連れていかなくてもいいと思ってる」

「行きます」

 最初から答えが決まっていたのかは分からないが、二葉は即答だった。

「行って真実を確かめます。お父さんを問い詰めないといけませんし。それにもう一人、お姉ちゃんも来てるかもしれませんしね」

 真っすぐ清秋に向けられる眼には力が籠っており、そこにはいつも通りの生き生きとした活力がみなぎっているように感じられた。

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