ーー第1話:目覚めた森ーー
ブラック会社から帰る途中で気づいたら異世界!?
そのうえ俺の初期スキルはまさかの 《気配ゼロ》……いや地味すぎだろ!
と思ったら、モンスターにも気付かれない最強スキルだった件。
逃げる少女をこっそり助けたところから、
“影の英雄”としての俺の人生が動き出す。
ゆるくてちょっと緊張感もある異世界旅、始まり!
気がつくと、俺は灰色の空を見上げていた。
冷たい風が頬を刺し、周囲には巨大な樹木が立ち並んでいる。どう見ても日本じゃない。
「……ここ、どこだよ。」
最後に覚えているのは、徹夜明けでふらふら帰宅していた時、突然視界が白くなった瞬間だ。
目覚めたらもうこの世界。テンプレと言えばテンプレだ。
足元には、見慣れない紋章が光る黒い石板が落ちていた。
触れた瞬間、脳内に声が響く。
《能力鑑定──スキル:気配ゼロ》
「……え、それだけ?」
攻撃スキルも魔法もなし?
気配ゼロって、忍者でもやれってことか。
半分呆れながら森を歩き出す。
すると──巨体の狼のようなモンスターが唸り声を上げて飛び出してきた。
「やばっ……!」
身構える間もなく、そいつは俺の目の前でピタリと止まった。
まるで俺の存在が見えていないかのように、鼻をひくひくさせてから、そのまま横を素通りして森の奥へ消えていく。
「……え、スルー?」
恐る恐るスキルの説明欄を見る。
《気配ゼロ:存在感を完全に消し、敵対生物に感知されない。持続時間:常時》
「……これ、最弱どころか、めちゃくちゃ強いんじゃ……?」
そんなとき、遠くから誰かの悲鳴が聞こえた。
「誰か! 助けて!!」
振り向くと、銀髪の少女がモンスターに追われ必死で逃げている。
普通なら助けに行くなんて無謀だ。だが――俺なら、気付かれずに近づける。
「……よし、行くか。」
胸の鼓動が高鳴る。
異世界最弱だと思っていたスキルが、もしかするとこの世界で俺の武器になるかもしれない。
気配ゼロのまま、俺は少女を救うためモンスターへと踏み込んだ。
――こうして、俺の異世界生活は静かに、しかし確かに動き始めた。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
“気付かれない力”を持つ主人公が、
誰かのために手を伸ばす瞬間を描けたことを嬉しく思います。
彼が踏み出した小さな一歩が、やがて大きな運命へとつながります。
その旅路を、これからも静かに見守っていただければ幸いです。




