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第97話:雪解けと、最後の旅路

アイアンロックでの、初めての冬は、穏やかに、そして、温かく、過ぎていった。

私たちは、町の人々と共に、冬の、到来を祝う、ささやかな、祭りを、楽しみ、暖炉の、前で、多くの、夜を、語り明かした。

その、静かな、時間の中で、私は、来るべき、最後の旅のための、準備を、進めていた。

オルダス卿が、残した、謎かけ。『空と、大地が、交わる、眠れる、巨人の、地』。

私は、ドワーフの、神話、古代の、船乗りが、残した、海図、そして、エルドリアの、古文書。その、全てを、照らし合わせ、ついに、その、場所を、特定した。

遥か、北の、果て。

霧と、氷に、閉ざされた、伝説の、島嶼地帯、『大地の骸』。そこが、私たちの、最後の、目的地となるだろう。


やがて、長い、冬が、終わり、山々の、雪が、解け、柔らかな、春の、日差しが、丘の上の、我が家を、照らし始めた、ある日。

私たちは、旅立ちの、準備を、整えた。

今回の、旅立ちは、これまでの、どの、旅とも、違っていた。

それは、逃亡でも、使命でも、誰かに、与えられた、義務でもない。

ただ、自分たちの、物語に、完全な、終止符を、打つための、私たち自身が、選び取った、旅だった。


町の人々との、別れも、もはや、涙はなかった。

「いってらっしゃい!」

「気をつけてな!」

「最高の、土産話を、待ってるぜ!」

ゲルドさんたちの、温かい、声援を、背に、私たちは、ホープウィング号へと、乗り込んだ。

帰るべき、場所が、ある。その、事実が、私たちの、心を、何よりも、強くしてくれた。


ホープウィング号は、北を、目指した。

見慣れた、緑豊かな、大地は、やがて、氷の海と、巨大な、氷河が、支配する、白銀の、世界へと、その姿を、変えていく。

夜空には、美しい、オーロラが、舞い踊っていた。


私たちは、語り合った。

アルビオンを、逃げ出した、あの、最初の、夜のことを。

どれほど、心細く、そして、絶望的だったか。

それに、比べれば、今の、私たちは、何と、幸福なのだろう。

私たちは、この、旅路の、長さを、そして、その、尊さを、改めて、噛みしめていた。


そして、数週間の、飛行の後、私たちは、ついに、その、伝説の、海域へと、たどり着いた。

そこは、私の、想像を、超えた、荘厳な、場所だった。

霧の、海の中から、天を、突くように、突き出しているのは、島ではない。

太古の、時代に、生きていたという、想像を、絶するほど、巨大な、生物たちの、「骨」。

伝説の、「眠れる巨人」の、正体だった。

そして、「空と、大地が、交わる」という、言葉の通り、魔法の、霧が、あまりに、濃密で、まるで、雲の、天井が、大地を、覆っているかのようだった。


私たちは、霧を、抜け、その、巨人の、骨で、できた、島々の中で、最も、大きな、島へと、ホープウィング号を、着陸させた。

そこは、時間が、止まったかのような、静寂と、古代の、中立的な、魔力に、満ちた、場所だった。


私たちは、見た。

島の、中央。巨大な、肋骨が、作り出す、天然の、聖堂のような、その、空間の、中で。

一つの、水晶が、淡い、光を、脈打たせているのを。

「共鳴の水晶」。


だが、私たちが、それに、近づこうとした、その時。

水晶の、周りの、霧が、まるで、意志を、持ったかのように、渦を巻き、一つの、巨大な、姿を、形作り始めた。

それは、機械でも、亡霊でもない。

この、古代の、地を、永劫の、時から、守り続けてきた、霧と、岩で、できた、大地の、精霊そのもの。


最後の、試練。

それは、人間の、文明が、遺したものではない。

この、世界、そのものが、私たちに、問いかける、最後の、問いだった。

古の、守護者が、その、永い、眠りから、覚め、静かに、私たちを、見据えていた。

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