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第91話:砂漠の都と確率を超えた心

海人の都での、夢のような一夜を後にし、私たちは、全く趣の異なる、次の目的地へと、翼を進めていた。

広大な、砂漠の、その中心。そこに、蜃気楼のように、浮かぶ、巨大な、歓楽都市。「幸運の都」フォーチュナ。

その街は、昼も、夜も、きらびやかな、光と、音楽に、満ち、世界中の、富と、欲望が、渦巻く、巨大な、カジノ都市だった。


「なんだか、すげえ、楽しそうな場所だな!」

「いけません、アレン殿! このような、金と、欲に、まみれた、不健全な場所に、長居は、無用ですぞ!」


アレンと、レオナルドが、正反対の、反応を、見せる中、私は、ただ、好奇心に、満たされていた。人間心理と、確率論で、作り上げられた、この、巨大な、システム。それは、私にとって、最高の、研究対象だった。


私たちが、街に、到着した時、街は、年に、一度の、「大フォーチュナ大会」の、熱気に、包まれていた。

優勝賞品は、街の、支配者、「ディーラー」が、所有するという、伝説の、宝具。『無限幸運のゴブレット』。

その、芸術品のような、美しさに、私たちは、それを、私たちの、家の、コレクションに、加えることを、決めた。


大会は、腕力ではなく、運と、知恵を、競う、様々な、ゲームで、構成されていた。

意外なことに、アレンは、その、単純明快な、性格で、ポーカーや、ダイスといった、駆け引きの、ゲームで、連戦連勝を、重ねていった。彼の、曇りのない、笑顔の、ブラフは、百戦錬磨の、ギャンブラーたちにも、全く、読むことが、できなかったのだ。

レオナルドもまた、イカサマ師に、憤慨し、参加。その、鉄壁の、ポーカーフェイスと、相手の、心の、動揺を、読み取る、能力で、あれよあれよと、勝ち進んでいく。

そして私は、二人の、後ろで、対戦相手の、癖を、見抜き、確率を、計算し、最適な、戦略を、授ける、完璧な、司令塔の、役割を、果たしていた。


そして、ついに、アレンは、大会の、決勝の、テーブルへと、たどり着いた。

最後の、相手は、この街の、支配者、仮面をつけた、謎の男、「ディーラー」その人だった。


最後の一戦。

ディーラーは、まるで、超能力者のように、アレンの、手札を、完全に、読み切り、彼を、追い詰めていく。

(……まずいわ。彼は、人の心を、読む、魔術を、使っている……!)

私が、それに、気づいた時、アレンは、もはや、絶体絶命の、窮地に、立たされていた。


私は、最後の、賭けに、出た。

「調和のレガリア」の、力を通し、アレンの、魂にだけ、届く、一つの、メッセージを、送る。

それは、戦略ではない。ただ、一言。

『――あなたの、心を、信じて』


その、メッセージを、受け取った、アレンは、ふっと、息を、吐いた。

彼は、確率も、戦略も、全てを、捨てた。

そして、ただ、笑った。

いつもの、太陽のような、笑顔で。

彼は、自らの、全ての、チップを、テーブルの、中央へと、押し出したのだ。

あまりに、無謀で、非論理的な、オールイン。


その、純粋な、魂の、一手に、鉄壁の、仮面を、つけていた、ディーラーが、初めて、動揺した。

彼には、読めない。この、勇者の、あまりに、真っ直ぐな、心が。

一瞬の、迷い。その、迷いが、彼の、完璧な、判断を、狂わせた。

彼は、アレンの、賭けに、乗った。


結果は、アレンの、奇跡的な、勝利だった。

誰もが、あり得ないと、思った、確率の、その、向こう側を、彼は、その、心一つで、掴み取ったのだ。


「……見事だ」


ディーラーは、その、仮面を、外した。

現れたのは、悪人ではない。ただ、完璧な、論理の、世界に、退屈しきっていた、一人の、男の、素顔だった。


「君は、ゲームではなく、その、心で、勝負を、した。忘れていたよ。運命とは、時に、計算を、超えた、場所にこそ、宿るのだということを」


彼は、晴れやかな、顔で、『無限幸運のゴブレット』を、アレンに、手渡した。

私たちは、また、一つ、宝物を、手に入れた。

それは、確率を、超えた、心が、勝ち取った、輝かしい、勝利の、証だった。

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