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第81話:広がる波紋と成長の証

陽の落ちない街、エセルバーグでの、不思議な、しかし、心温まる、出会いを、後に、私たちの、一年間の、旅も、いよいよ、終盤へと、差し掛かっていた。

ホープウィング号は、広大な、未知の、海を、越え、再び、見慣れた、大陸、ガレリア連邦の、海岸線の上空へと、戻ってきた。

船上には、祭りを、間近に控えた、心地よい、期待の、空気が、満ちていた。


「いやー、長かったような、短かったような、旅だったな!」

「歌う山脈も、陽の落ちない街も、実に、素晴らしい、体験でした。特に、食事は……!」


アレンと、レオナルドが、この、一年弱の、冒険の、思い出を、楽しそうに、語り合っている。

私たちが、ポート・ソレイユの、上空を、通過しようとした時、私は、眼下に、一つの、見慣れない、建物を、発見した。

活気ある、港の、一等地に、建てられた、新しい、事務所。その、看板に、掲げられていたのは、槌と、歯車を、模した、アイアンロック鉱山協同組合の、紋章だった。


「まあ……。あの子たち、随分と、商売を、拡大させたようですわね」


好奇心を、抑えきれず、私たちは、予定を、少しだけ、変更し、ポート・ソレイユに、立ち寄ることにした。

アイアンロックの、事務所を、訪ねると、そこにいたのは、組合長の、ゲルドさんではなかった。

私たちを、出迎えたのは、かつて、国境の、宿場町で、出会った、あの、抜け目のない、少年。情報屋の、フィンだった。


「……イリスの、お嬢さん!? アレックの、兄貴に、聖者様まで!」


彼は、数年の、時を経て、すっかり、精悍な、青年に、成長していた。その、瞳の、賢しい、輝きは、変わらないが、身なりは、立派な、ギルドの、職員そのものだ。

彼は、私たちとの、再会に、心の底から、驚き、そして、喜んでくれた。


フィンの、話によると、こうだ。

アイアンロックは、私の、助言通り、交易において、情報の、重要性を、痛感し、ガレリアで、最も、腕の立つ、情報屋として、彼を、スカウトしたのだという。

フィンは、その、卓越した、情報収集能力と、交渉術を、武器に、アイアンロックの、右腕として、活躍。ポート・ソレイユとの、対等な、交易路を、確立し、今では、この、大都市の、支部長を、任されるまでに、出世していた。


「あんたたちが、作ってくれた、流れだよ」


フィンは、少し、照れくさそうに、言った。


「あんたたちが、アイアンロックで、起こした、革命。あれが、ガレリア中の、小さな、町や、ギルドに、勇気を、与えたんだ。公正な、取引で、弱い者でも、立ち上がれるんだってな。俺は、その、手伝いをしてるだけさ」


私たちの、行動が、私たちの、知らない場所で、さらに、大きな、善い、波紋を、広げていた。その、事実に、私の、胸は、熱くなった。


「そういえば」と、フィンが、思い出したように、言った。「面白い、ニュースがあるぜ。あんたたちが、昔、渡った、あの、国境の、関所。強欲な、検問長の、ゴードンがいた、あの場所さ」

「ええ、覚えていますわ」

「アイアンロックとの、交易が、活発になって、あの、関所が、重要な、拠点になったんだ。そしたら、ゴードンの、汚職と、無能ぶりが、大問題になってな。商人同盟からの、圧力もあって、あいつ、あっけなく、クビになったのさ。今じゃ、真面目な、文官が、責任者になって、関所は、クリーンで、スムーズになったって、評判だぜ」


その、小さな、しかし、何よりも、痛快な、知らせ。

私たちが、蒔いた、種が、悪党という、雑草さえも、駆逐していたのだ。


私たちは、立派に、成長した、旧友に、別れを告げ、旅の、最終目的地へと、再び、翼を、広げた。

眼下に広がるのは、緑豊かで、平和な、ガレリアの、大地。

私たちが、愛し、守り、そして、ほんの少しだけ、変えることができた、世界。


アイアンロックは、もう、目と鼻の先だ。

アレンが、楽しそうに、操縦桿を握り、レオナルドは、祭りでの、ご馳走の、メニューを、真剣に、考えている。

私は、ただ、穏やかな、気持ちで、その、光景を、眺めていた。

約束の、祭りが、私たちを、待っている。

温かい、故郷での、幸せな、 homecoming が、もう、すぐ、そこに、あった。

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