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第40話:希望の光と動力炉の扉

アレンの放つ黄金の光が、影の怪物シャドウに確かなダメージを与えた。それを見た私は、即座に、この新たな敵に対する、唯一にして絶対の攻略法を組み立てた。


「レオナルド! あなたは直接的な攻撃ではなく、防御と回復に専念し、わたくしたちの精神が、魔王の残滓に飲まれないように、聖なる祈りを続けてくださいまし!」

「は、はい! 承知いたしました!」


「アレン! あなたは、ただ斬るのではない! あなたのその光で、この地に満ちる悲しみも、絶望も、全て焼き払うのです! あなたは、希望の光そのものとなりなさい!」


そして、私は、彼の「魂の錨」として、アレンのすぐ側に立った。


「あなたは、一人ではありません。わたくしが、ここにいますわ」


その言葉が、引き金だった。

レオナルドが、澄んだ声で、神聖な祈りの言葉を詠唱し始める。その声は、さざ波のように広がり、私たちの周囲に、見えない清浄な結界を作り上げていく。魔王の残滓がもたらす、精神的な重圧が、和らいでいくのが分かった。


そして、アレン。

私の存在を、その支えを、魂で感じ取った彼は、迷いを完全に振り払った。

彼は大剣を振るう。そのたびに放たれる黄金色の光の斬撃は、もはや単なる物理攻撃ではなかった。それは、この地に溜まった数千年の絶望を浄化し、悲しみを癒す、希望の光そのものだった。


ジュウウウッ!という音と共に、シャドウの群れが、光に触れたそばから、次々と浄化され、消滅していく。それは、戦闘というよりは、闇を払う、厳かで神聖な「儀式」のようだった。


どれほどの時間、そうしていたのだろうか。

最後のシャドウが光の中に消え去った時、私たちの目の前には、巨大な円筒形の建造物が、その威容を現していた。都市の全エネルギーを管理していたという、「中央動力炉」だ。


その入り口は、巨大な円形の金属扉で、固く、固く閉ざされていた。扉の表面には、複雑な古代文字と、魔術回路のようなものが、びっしりと刻まれている。


「これは……強力な、封印のようですわね」


私が扉に近づき、その構造を調べると、すぐにその仕掛けの意図を理解した。


「このロックを解除するには、『二つの相反するエネルギー』を、同時に供給する必要があるようです。おそらくは、『神聖』と『闘争』。あるいは、『創造』と『破壊』。……なるほど。この扉は、神聖な力を持つ者と、強大な戦闘力を持つ者が協力しなければ、決して開かないように設計されている。レガリアを守るための、最後のセキュリティですわね」


私は、振り返り、二人の仲間に指示を出した。


「レオナルドは、右側にある、こちらの供給口に。アレンは、左側の供給口に。わたくしの合図で、同時に、それぞれの最大の力を注ぎ込んでくださいまし!」

「はい!」

「おうよ!」


レオナルドが、右の供給口に手をかざす。その手からは、穏やかで、清らかで、生命を育む「創造」の神聖エネルギーが、光となって溢れ出した。

アレンが、左の供給口に拳を当てる。その拳からは、力強く、激しく燃え盛る、「破壊」と「闘争」の黄金のオーラが、奔流となってほとばしった。


二つの相反するエネルギーが、扉の内部へと流れ込んでいく。扉が、ギシギシと悲鳴のような音を立て始めた。


「今よ!」


私の合図で、二人は、さらに力を込める。

創造と破壊。神聖と闘争。その二つの力が、扉の内部で完璧な均衡を保った、その瞬間。


ゴゴゴゴゴゴ……!


数千年間、誰の侵入も拒み続けてきた重厚な金属扉が、地響きのような音を立てて、ゆっくりと、内側へと開いていった。


扉の向こうに広がっていたのは、下へと続く、暗く、長い、螺旋階段だった。

その闇の奥から、私たちは、感じていた。

膨大で、しかし、暴走することなく安定した、強大なエネルギーの気配。

そして、その中心に鎮座する、最初のレガリア……「力のレガリア」の、力強い鼓動を。


しかし、それと同時に、これまで対峙したどの番人とも違う、さらに強力で、威厳に満ちた「守護者」の気配が、その闇の底から、私たちを静かに見据えているのも、分かっていた。


「行きましょう」


私は、ゴクリと喉を鳴らす仲間たちを振り返り、言った。


「最初の『鍵』を、手に入れるために」


私たちは、覚悟を決めて、頷き合う。

そして、中央動力炉の深部、最初のレガリアが眠る、最後の試練の舞台へと、その歩を進めていったのだった。

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