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第108話:果たされた約束と星屑の祭り

丘の上の我が家で、私たちは、二度目の、春を、迎えていた。

私の、庭は、色とりどりの、花で、咲き乱れ、アレンの、少年団からは、初の、卒業生が、巣立っていった。レオナルドの、神学校も、その、礎を、固め、大陸中から、その、ユニークな、教えを、学ぼうと、する、若者たちが、集まり始めていた。

私たちの、人生は、穏やかで、そして、幸福な、未来へと、確かに、根を、下ろしていた。


そんな、ある日。

一通の、手紙が、届いた。

差出人は、あの、星降りの谷の、織り手見習い、エララからだった。


『――約束の、お祭りの、時が、来ました』


手紙には、そう、記されていた。

彼女たちの、織りの、技術は、見事に、復活を、遂げ、その、成果と、私たちへの、感謝を、示すための、お祭りを、開くのだという。

かつて、ライラと、そして、エララと、交わした、ささやかな、約束。

私たちは、もちろん、それを、忘れてはいなかった。


私たちの、旅は、もはや、何かを、手に入れるための、ものではない。

誰かと、交わした、約束を、果たし、育んだ、友情を、確かめに行くための、ものへと、変わっていた。

ホープウィング号は、再び、翼を、広げ、懐かしい、あの、美しい、谷へと、向かった。


谷は、私たちの、記憶にある、姿よりも、さらに、輝きを、増していた。

村の、家々の、窓には、星屑の糸で、織られた、美しい、布が、飾られ、村全体が、まるで、天の川の、一部ででもあるかのように、淡く、そして、温かく、輝いている。


私たちの、再訪は、村を、挙げての、歓迎を、受けた。

老婆ライラは、以前よりも、ずっと、元気そうで、今では、村の、子供たち、全員が、彼女の、弟子となっていた。

そして、エララは、すっかり、一人前の、織り手として、その、顔には、自信と、誇りが、満ち溢れていた。


その夜に、開かれた、「星屑の祭り」は、素朴で、しかし、何よりも、美しい、祭りだった。

村人たちが、この、一年の、成果として、織り上げた、布の、品評会。星空の下で、歌われる、古い、伝承の、歌。

私たちは、主賓として、招かれながらも、いつの間にか、その、温かい、輪の、中に、溶け込んでいた。

アレンは、村の、若者たちと、力比べをし、レオナルドは、ライラと、美食談義に、花を、咲かせている。


私は、エララと、静かに、語り合っていた。

「見てください、イザベラ様」と、彼女は、誇らしげに、言った。「私たちの、星屑の布は、今や、外の、世界とも、取引を、始めることが、できたのです。先日も、火山の、麓に住む、ドワーフの、方々から、金属の糸と、共に、織り上げてみたい、という、珍しい、注文を、受けました」


その、言葉に、私は、ハッとした。

ドワーフと、星屑の谷。

私たちが、繋いだ、点と、点が、今、私たちの、知らないところで、新しい、線となって、結ばれようとしている。

私たちが、起こした、ささやかな、奇跡は、今や、自らの、意志を、持って、この、世界に、新しい、調和の、輪を、広げ始めているのだ。


私の、本当の、仕事は、もう、終わったのだ。

いや、終わったのではない。私の、手を、離れ、この、世界、そのものが、自らの、力で、より、良い、未来を、紡ぎ始めているのだ。

その、事実に、私は、これ以上ないほどの、深い、満足感を、感じていた。


祭りが、終わり、私たちが、谷を、後にする時。

エララは、私たちに、言った。

「私たちの、物語は、続きます。だから、あなた方の、物語も、続けてください。そして、また、いつか、その、物語の、続きを、聞かせに、この谷へ、帰ってきてください」


ホープウィング号が、星の、川が、流れる、夜空へと、舞い上がる。

眼下には、温かい、光の、谷。

私の、役目は、終わった。

だが、私たちの、人生という、物語は、まだ、終わらない。

この、愛すべき、仲間たちと、共に、どこまでも、続いていくのだ。

私は、隣で、操縦桿を握る、アレンの、横顔を、見つめながら、その、幸福を、静かに、噛みしめていた。

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