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第106話:最初の収穫と、永遠の約束

丘の上の我が家で、私たちが、暮らし始めてから、一年が、経とうとしていた。

私の、庭の、ハーブが、豊かな、香りを、放ち、最初の、収穫の、時を、迎えた、秋の日。

私は、一つの、計画を、立てた。

私たちの、新しい、人生の、始まりと、この、一年間の、実りを、祝うための、ささやかな、「収穫祭」を、この、丘の上の、家で、開こう、と。


それは、国を、挙げての、祭りではない。

ただ、私たちの、大切な、友人たちだけを、招いた、小さな、小さな、宴。

ゲルドさんたち、アイアンロックの、長老たち。空飛ぶ少年、レオ。星屑の谷からは、ライラの、一番弟子となった、少女、エララ。招待状を、送ると、誰もが、喜んで、駆けつけてくれた。


祭りの、準備は、それ自体が、一つの、幸福な、時間だった。

レオナルドは、私の、庭で、採れた、ハーブと、町の、新鮮な、野菜を、使い、この日のための、特別な、メニューを、作り上げる。

アレンと、彼の、少年団の、子供たちは、裏庭に、宴のための、テーブルと、椅子を、手作りで、組み上げていく。

そして私は、この、温かい、宴が、全ての、客人の、心に、残るよう、心を、込めて、その、全てを、準備した。かつて、国の、運命を、左右する、策略を、練っていた、私の、頭脳は、今や、世界一、幸福な、宴を、演出するために、使われていた。


祭りの日。

私たちの、家は、様々な、場所から、集まった、友人たちの、笑顔と、笑い声に、包まれた。

レオが、空の、冒険譚を、語れば、エララが、星屑の谷の、新しい、織物を、披露する。ゲルドさんが、豪快に、エールを、飲み干せば、アレンが、それ以上の、勢いで、肉を、頬張る。

この、丘の上の、家は、もはや、ただの、私たちの、家ではない。新しい、時代の中で、育まれた、友情の、交差点、そのものだった。


やがて、夕日が、山々を、黄金色に、染め、空に、一番星が、輝き始めた頃。

私は、ゴブレットを、手に、立ち上がった。


「一年、前」


私は、集まってくれた、友人たちの、顔を、見渡し、語り始めた。


「この、家は、まだ、存在しない、一つの、約束に、すぎませんでした。ですが、今日、この家は、かけがえのない、友人たちと、その、笑い声に、満ちています。世界を、救う、わたくしたちの、壮大な、旅は、終わりました。ですが、幸福な、人生を、築き、友情を、育み、この、愛すべき、世界で、美しいものを、作り上げていくという、本当の、旅は、まだ、始まったばかりなのだと、今、実感しています」


私は、ゴブレットを、高く、掲げた。


「――私たちの、我が家と、そして、これから、訪れる、数えきれないほどの、平和な、年月に、乾杯」


「「「乾杯!」」」


皆の、声が、一つになった。


宴が、終わり、友人たちが、それぞれの、家路へと、着いた後。

私たちは、三人で、庭に、灯した、焚き火の、残り火を、静かに、眺めていた。

家の、中からは、幸福な、宴の、温かい、余韻が、漂ってくる。


その、静寂の中で、アレンが、私の、手を、そっと、握った。

彼は、少し、照れくさそうに、しかし、どこまでも、真剣な、目で、私を、見つめて、言った。


「なあ、イザベラ。今日、すっげえ、楽しかったな。みんなが、ここに、集まってくれて。俺たちの、家に」

「……ええ。本当に」

「俺さ、こうしたいんだ。毎年、毎年、こうして、みんなで、集まりたい。ずっと、永遠に。……あんたと、一緒に」


それは、気の利いた、言葉ではない。

だが、彼の、魂の、全てが、込められた、何よりも、誠実な、誓いの、言葉だった。

私の、心から、幸福の、涙が、溢れ出した。


私は、彼の、手を、強く、握り返した。


「ええ、アレン」


私の声は、幸せに、震えていた。


「ええ。……永遠に」


私たちの、未来が、完全に、一つになった、瞬間だった。

悪役令嬢の、物語は、ここで、終わる。

そして、ここから、始まるのだ。

ただの、イザベ-ラと、アレンの、どこまでも、続く、愛の、物語が。

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