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火蓋を切れ!-高校防衛戦線-  作者: 電脳太郎
9/21

合宿は火薬の香り

 梅雨が明け、蝉が鳴き始めたある日。紫陽高校の防衛部部室に、分厚い封筒が届いた。


「えーっと……“全国高等学校防衛部合同戦技合宿”への招待状……?」


 読み上げた福田が、額に汗を浮かべる。


「去年、爆発で中止になったやつじゃん」


「そのせいで参加校の半分が“謎の休校”になったという、あれな……」


 だがカイは静かにうなずいた。


「これは……新しい“戦場”だ」



 参加校は、全国各地の合法火器戦技部を持つ強豪校ばかり。

 東北の山奥からは、木製バリケード戦術に長けた「稜風高校」。

 関東からは、精密前装射撃部隊で知られる「狙岳学園」。

 九州の「炎龍学園」は、火薬芸術部と称される派手な爆煙演出で有名。

 そして昨年、一度も交戦記録を残さず全勝したという謎の学校――晴栄館。



「合宿ってことは、集団生活すんの?」


「共同炊事に、弾込め訓練、夜間演習……らしい」


「絶対どっかの学校が実弾で飯炊きするって!」



 迎えた合宿初日。

 開会式の会場は、廃工場跡地を改装した“武装訓練センター”。


「よぉ、紫陽高校。初参加だって?」


 声をかけてきたのは、炎龍学園の代表――髪を赤く染め、腰には金の前装銃。


「俺らのモットーは“撃つ前に火を見せろ”。つまり“演出第一主義”だ」


「……なんで背中から火柱出てるの?」


「導火線式の自己紹介、知らんの?」



 開会式では晴栄館の部長が壇上に立ち、無言で一礼しただけで拍手喝采が起きた。


「……あの人、一言もしゃべってないぞ?」


「去年の合宿で、一発も撃たずに全員気絶させたらしい」


「それ“武道漫画のボス”じゃん……」



 午後のスケジュール:“交流演習”


 要は模擬戦である。

 グループに分かれ、廃ビル内で制圧戦を行うという。


「ようし、火蓋を――って、福田?」


 カイが振り返ると、福田は腰にクマよけスプレーを装備していた。


「だって怖いもん……実弾出すのって……」


「いや、もうそのクマの方が怖いわ」



 演習中、突如起きた爆発音。


 フクロウくんが自動起動し、煙の中を高速飛行。


 「敵影確認、接敵警報、敵影確認、フクロウ爆発するまであと3秒」


「おい!爆発予告すんな!」


 煙の中から現れたのは――晴栄館の部長。


 無言で、銃を掲げ、構える。


 (来る……!)


 だが、次の瞬間。


 ――パァンッ。


 発砲音ではなかった。


 音だけの、空撃ちだった。


 部長は微笑み、静かに言った。


 「心が撃ててない銃は、ただの金属だよ」


 (……な、なんだ今の……説得力が重い……!!)



 その夜、防衛部の面々は寝袋の中で語り合った。


「なあ……俺たち、戦うだけが目的じゃないよな」


「うん……でも火薬がないと飯炊けないし……」


「いやそれは別の話……」


 カイは夜空を見上げた。


「明日、もう一度だけ、“撃たない戦い”ってやつをやってみたい」


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