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火蓋を切れ!-高校防衛戦線-  作者: 電脳太郎
8/21

弾込めは体育のあとで

紫陽高校の朝は早い。というか、早すぎる。


「起立!注目!薬莢点検ッ!」


「違う違う、うち薬莢出ないから!火縄銃だから!!」


 体育教師・鳥飼とりがいは、頭のタオルを締め直しながら火縄銃を手に取る。


「今日は“武装体育”だ!お前ら、体力テスト兼・射撃演習をやるぞ!」


 生徒たちがどよめく。


「マジかよ……去年はボール投げで砲門破裂してたろ……」


「福田のフクロウくん飛んできて、成績全部“鷹”に塗り替えられたやつ?」



 鳥飼は高らかに言った。


「本日の競技:走って装填、的に命中!火薬は自己調達ッ!」


「命がけの体育祭かよ!」



一方――


 生徒会室。


「聞いたぞ……防衛部が“発砲競技”を無許可でやってるらしいな……これは許されざる“独占”だ……!」


 生徒会長・海老原えびはらは不敵に笑っていた。

 普段は静かで論理的な生徒会長。しかし、火縄銃が絡むと人格が変わる。


 「我が生徒会こそ、真の“制式部隊”であるべきなのだ!」


 (誰もそんな制度求めてないのに……)



 グラウンドでは、カイが息を切らして走っていた。


 「走って……装填ッ……撃って……また走って……!!」


 福田は横で火薬の計量ミスをして、ものすごい煙幕だけ出していた。


 「うぅっ……すまんカイ……火薬が“スモークタイプ”だったかも……」


「いやこれ“魔法陣の召喚”みたいになってるから!」


 星野はその横で、火蓋の点火にライターを使っていた。


 「文明の力ぅぅぅぅ!」



 突然、空から「ビィィィィ!」という音。


 フクロウ型偵察ドローン「フクロウくん」が、体育教師の頭上で爆発的着地。


 「ぐわぁぁあ!俺の頭が戦場だぁぁ!!」


 福田が顔を出す。


 「すまん!プログラム書き間違えた!“着地=突撃”に設定してた!」



 そして事件は起こった。


 海老原生徒会長、火縄銃を二丁持って突入。


 「聞け!諸君らの戦術に、愛と気合が足りない!」


 「いやいや待て待て、今は授業中!」


 「我が“生徒会直轄突撃部”の存在を!今こそ証明する時!」


 生徒会副会長・緒方が追ってくる。


 「会長、また抜弾忘れてます!火薬だけ入ってるから“爆竹状態”です!!」


 ――パァァン!


 海老原の銃から爆音とともに飛んできたのは……


 紙吹雪。



 全員、静かになる。


 風に舞う紙吹雪の中で、海老原が叫ぶ。


 「これが“平和への射撃”だッ!!」


 鳥飼がつぶやいた。


 「ある意味、一番当たってるな……」



 午後の授業は急きょ「倫理」に差し替えられた。

 誰も撃たずに、みんなで「戦う意味」について語り合った。


 福田がぽつりと言った。


 「……でも私、あの紙吹雪、ちょっと感動したよ」


 星野が続けた。


 「撃つだけじゃないっての、たまには悪くねぇな」


 カイは少し笑って、うなずいた。


 「弾込めるの、後でもいい時もあるな」

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