表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
火蓋を切れ!-高校防衛戦線-  作者: 電脳太郎
20/21

規制と終焉

 戦いは終わった。


 黒影工業高校の残党は壊滅。紫陽高校は勝利した。だが、それは勝った者だけが背負う苦しみの始まりでもあった。



 廃工場跡・紫陽高校臨時指揮所。


 焦げ跡と破片に囲まれた瓦礫の上、カイは砲身の口を静かに撫でていた。


「これが、俺たちの“限界”だったのかもしれないな……」


 隣で黙っていたマナが、絞り出すように言った。


「砲で、人を殺した。……それでも、藤野は戻ってこない。誰も笑ってない。……これが正義なら、私はもう正義なんか信じない」



 紫陽高校の生徒たちは、敵拠点で見つけた自作の爆発物や遺体の処理に追われていた。制服は血と火薬で汚れきっていたが、目は虚ろだった。


 生徒のひとりが呟いた。


「次、誰が死ぬのかな……」


 その呟きに、誰も返事をしなかった。



 【翌日・国会】


 朝から“高校生による戦闘”が全国ニュースを騒がせていた。死亡者7名、重軽傷者61名。いずれも紫陽と黒影の生徒だった。


「これ以上、子供に銃を持たせるのか!」

「正当防衛の名の下に、殺し合いが教育の中にあるのか!」


 討論は過熱し、その日の午後には緊急閣議にて法案が提出された。



【火薬銃及び火砲等管理強化法案】

1.高校生による火薬銃・前装式砲の所持・使用を原則禁止

2.正当防衛目的の例外運用を廃止、実弾は認可制へ

3.学校防衛部制度は縮小、非戦闘的訓練に限定



 法改正の報が、紫陽高校に届いたのは2日後だった。


 校内の倉庫には、布で覆われた銃と砲がずらりと並んでいた。


「これは……どうなるの?」


 マナの問いに、顧問の山本は言った。


「国が管理する。封印措置の後、博物館行きだ」


「戦って、守って、命まで賭けて……それで、これが“危険物”扱いか……」


 マナの声は、悔しさとも、安堵ともつかないものだった。



 紫陽高校防衛部、正式に解散。


 600人の動員はこの日をもって終了し、防衛訓練制度も事実上廃止となった。



【3ヶ月後】


 校舎の屋上。風が強く吹いていた。


 カイとマナが、最後の防衛部室の鍵を閉めていた。


「カイ、今でも信じてる? あの時、撃たなかった選択が正しかったって」


「……ああ。信じてる」


「でも、死んだ人たちは……」


「だからこそ、俺たちは撃たないと決めた。誰かがその矛盾を引き受けなきゃ、何も変わらないから」


 そう言ってカイは、そっと布を開き、封印された砲身に触れた。


 その冷たさが、あの戦火の熱を思い出させた。



 マナが言った。


「終わったんじゃないよね。これが……始まりの終わりだよね」


「そうだ。だから、歩くしかない」



 火蓋は切られた。

 だが、それが“戦い”だけを意味するとは限らない。


 紫陽の生徒たちは、それぞれの日常へと帰っていった。


 そして今も、どこかで銃は静かに眠っている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ