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火蓋を切れ!-高校防衛戦線-  作者: 電脳太郎
2/21

平日の決闘

第1話を読んで頂きありがとうございます

繰り返しお伝えしますが私が書いた訳ではありません

夕暮れの商店街に、乾いた銃声が響いた。


 弾が舗道のアスファルトを砕き、粉じんが宙を舞う。人々の悲鳴。だが、誰も逃げない。――慣れているのだ。

 紫陽高校防衛部の副部長・星野凛太郎は、路地の隅でマスケット銃を再装填していた。


「フリントが割れた……クソ、これじゃ次は撃てねえ」


 対峙していたのは、見慣れぬ制服の少年。灰色の詰襟に金の校章。銃は、前時代的なミニエー銃――それも銃床に改造が加えられ、狙撃に特化している。


「君たち、“防衛部”のつもりだろう? でも、僕たちは“進攻科”だ」


「進攻科……だと?」


 初めて聞く単語に、星野は銃口を下ろした。


 ――これは正当防衛か?

 それとも、学校の外では成立しない、ただの銃撃戦か?



 一日前、紫陽高校防衛部の部室では奇妙な通達が届いていた。


「新設校・白陵館高校より、訓練試合の申し出あり。場所は公共区域・中立指定の商店街。火器は先込め式に限る。正当防衛規定の外、ただし実弾使用許可済み」


 生徒会印付きだった。


 「防衛部同士の“訓練試合”」――つまり、合法的な撃ち合いだ。

 星野は笑ったが、カイの顔は険しかった。


「これ、誘いだ。新設校が商店街を選ぶ意味がわからない。人目がある。記録が残る」


「つまり――こっちに先に撃たせるつもりか」


「そうだ。“撃たせた”うえで、“撃ち返した”と主張できる。防衛じゃなく、完全な威圧戦術だ」


 だが断れば、こちらが弱腰と判断される。生徒会にも負い目があるのだろう。

 黒影工業の件で、校内防衛戦が何度も発生していることを、正式に報告していなかったからだ。


 「俺が行く」と星野が言った。「撃たれるのは慣れてる」


 カイは一言、「無理はするな」とだけ返した。



 ――そして今、星野は壁に隠れていた。


 対する白陵館の少年は、悠然と舗道を歩いてくる。


「君たちは、“守る”ことに慣れすぎた。だから、“撃たれる前に撃つ”判断ができない。撃たなければ、負ける」


「……勝ち負けじゃねえんだよ、俺たちは」


 星野は地面に落ちていた短銃を拾い上げた。それは商店街の骨董屋で見かけた装飾品――だが、火薬と弾が入っていることは知っていた。


「防衛ってのはな、後悔の積み重ねで成り立ってんだよ。だから俺は、撃つ」


 少年が銃口を上げた瞬間、星野は引き金を引いた。


 パンッという軽い音。

 銃弾は、相手の右肩をかすめた。血が滲み、相手の銃が地面に落ちる。


 「……判断が遅いな」


 星野がふらつく。視界の端に、別の制服の影。――もう一人、いた。


 だが次の瞬間、向こうの屋上から別の銃声。

 狙撃。――福田だ。


 姿を見せずに撃つ。防衛部が最も嫌う戦い方。

 だが、今は守るために必要だった。


 路地に響く金属音。白陵館の二人は撤退していった。



 数時間後、防衛部の部室。

 カイが無言で星野の肩の包帯を巻いていた。


「“進攻科”ってなんだよ」

「調べた。防衛部とは別に、“自衛攻性戦術研究会”ってのが、複数の私立高校に設置されてるらしい。要は、攻めるための部活だ。校外での制圧を視野に入れてる」


「ふざけてんな」

 星野は苦笑した。「でも、見たか? あいつら、怖かったよ。“正当防衛の限界”を探ってる目をしてた。あれ、もう“教育”じゃねぇ」


 カイは火縄銃を持ち上げた。

 黒ずんだ銃身、煤けた銃床。祖父の形見であり、紫陽高校の“誇り”だ。


「攻めてくるなら――守るだけじゃすまない。……こっちも、撃ち方を考えなきゃな」



 夜の校門を出ると、カイは空を見上げた。

 月が、雲の向こうでぼんやりと光っている。


 火蓋は、まだ閉じてなどいなかった。

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