表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
火蓋を切れ!-高校防衛戦線-  作者: 電脳太郎
19/21

血と火薬と決意

 銃声が響いた。


 それは紫陽高校による先制射撃ではなかった。黒影工業高校残党による、真正面からの開幕砲だった。


 廃工場に設置された自作砲台が、紫陽の先遣隊に火を噴いた。煙と土煙が舞い上がり、無線が一斉に怒号に変わる。


「一班、崩れた! 塹壕に避難を!」

「衛生班急げ! 下肢切断、出血大量だ!」


 紫陽高校の600人が動員されたとはいえ、実戦経験のある者は防衛部の40人程度。残りの大多数は、日々部活に打ち込む普通の高校生だった。



「これが……戦争かよ……!」


 バスケ部の片桐は、銃を抱えたままその場にへたり込んだ。


 その背後で、マナが怒鳴る。


「顔を上げろ! あんたは“市民”じゃない。今ここでは“防衛員”なんだ!」


「でも、でも俺、こんな殺し合いに参加したくて来たんじゃ……!」


 マナは一瞬だけ目を伏せたが、すぐに叫んだ。


「だったら、撃たなくていい。でも、隣の奴が撃たれる前に、構えて立ってくれ! それが“防衛”だ!」



 一方、黒影残党の陣地では、死んだような目をした少年兵たちが、銃を握っていた。


「俺らには戻る場所なんてねえ……紫陽が来たら撃つ。それだけだ」


「死んでもいい。けど、誰かを連れてく」


 彼らの目は虚ろで、怒りというより“諦め”に近かった。


 だがその絶望は、紫陽の砲撃部隊によって崩された。


「発射準備——装填よし、導火線点火!」


 山本顧問が率いる砲撃班が、砲身3門を一斉に火を噴かせた。


 先込め式砲は遅く、面倒で、射程も短い。


 けれど魂を込めて撃つには、十分すぎる重みがある。



 その後、両陣営は市街地に入り乱れ、前装銃と即席バリケードによるゲリラ戦に突入する。


 部室の裏、駐輪場、コンビニ跡地。あらゆる場所が戦場となった。


 そして、ついに悲劇が起きる。



「藤野が撃たれた! 胸部……だめだ、もう……!」


 紫陽高校3年、防衛部副部長・藤野。


 敵の側面射撃を受け、血まみれの状態で地面に崩れ落ちた。


「撃て……! 撃てよ……あいつらを……!」


 最後の言葉を残して、藤野は動かなくなった。



 その瞬間。


 マナは叫んだ。


「殺してやる……! 私が、私が引き金を引く!」


 だが、カイがそれを止めた。


「やめろ。あいつは“撃て”とは言ったが、“殺せ”とは言ってない」


「藤野は死んだのよ!」


「だからこそ、お前が壊れる必要はない!」



 その背後で、福田が淡々と命令を下す。


「前方の廃倉庫に集中砲火。撃て。死人が出た。ならこれは、防衛ではなく制圧だ」


 砲撃班が一斉に発射。


 屋根が吹き飛び、黒影の指揮拠点が炎に包まれる。



 夜が更け、紫陽の生徒たちは疲れ切った身体で敵拠点を制圧し、捕虜を縛り上げた。


 廃工場の地面には黒影の制服を着た少年たちの死体と、紫陽の戦死者が並んでいた。


「……終わったのか?」


「いや……“始まった”んだ」


 カイが呟く。


「明日から、“俺たちが戦った責任”が始まる」



 その夜、臨時国会では火薬銃の使用制限強化案が議題に上っていた。


「高校生が実弾を持ち、命を落とす状況を是とするのか?」

「紫陽は市民を守った! だが、それが正義とは限らない!」


 議場が揺れる中、銃声のない新しい戦いが始まろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ