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火蓋を切れ!-高校防衛戦線-  作者: 電脳太郎
17/21

砲声、血に濡れる

 それは、あまりにも突然だった。


 砲撃による死者が、ついに出た。


 舞台は静岡県・星陵工業高校。防衛部が模擬演習の最中、隣接する羽島農業高校の防衛部と小競り合いに発展。状況は緊迫し、ついには砲が火を噴いた。


「砲弾が羽島農業の防衛部陣地に着弾し、男子生徒2名が重体、1名が即死」


 ニュース速報が流れた直後、紫陽高校防衛部の部室は沈黙に包まれた。



「……これで、終わったな」


 福田が呟いた。


「終わってねぇ。むしろ、これからだ」


 カイが言い切る。


「うちは“撃たなかった側”として、この事態に向き合う責任がある」



 翌日。


 国会では武防法改正をめぐる臨時審議が始まっていた。


「前装式砲の合法化は早計だったのではないか?」


「高校生が大砲を扱うなど、常軌を逸している!」


「だが、制度を撤廃すれば“武装を失った学校”が狙われる。防衛の空白を作ってはならない!」


 世論は真っ二つに割れた。



 一方、紫陽高校には文部防衛省の視察が入った。


 砲の管理体制、運用履歴、訓練記録。


 山本顧問が資料を提出する中、カイとマナは副官に呼び出された。


「“砲は撃たない”という方針が、他校に影響を与えた可能性についてどうお考えか?」


 マナが食い気味に反論する。


「うちは撃たないことで命を守ってきた。撃たなかったことが悪いって言うんですか?」


 「いや、誤解しないでくれ」と副官は手を挙げた。


「我々は、今後も砲を所持し続ける学校が**“撃たずに守る”意思を持てるか**を問いたいのだ」



 その日の夜。


 マナが校庭で“守砲”を撫でていた。


 砲身は変わらず冷たく、静かだった。


「こいつがいつか……誰かを殺す日が来るのかな」


「来るかもな。でも、それを選ぶのは“人”だ」


 背後でカイが言う。


「砲はただの道具だ。けど、“撃たない覚悟”がある限り、俺たちは守れる」


 マナは小さく頷いた。


「じゃあ、撃つ覚悟も、捨てないようにしないとね」



 3日後、羽島農業高校で亡くなった**小島啓介くん(17)**の葬儀が行われた。


 紫陽高校防衛部からはカイとマナが参列し、黙祷した。


 彼の両親は、焼香の場でこう言った。


「息子は、防衛部で“絶対に撃たない”と決めていました。だけど、撃たれました」


「……どうか、“同じような子”が、次に死なないようにしてやってください」



 その言葉を胸に、紫陽高校防衛部は“守砲”の銘板を削り直した。


 旧:「守」

 新:「悼」


 カイは言う。


「この砲は、撃たずに死んだ彼のために、“撃つことで誰かを守る覚悟”を持ち続ける。それが、俺たちの答えだ」



 砲声が止んだ街に、静かな意志だけが残っていた。

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