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火蓋を切れ!-高校防衛戦線-  作者: 電脳太郎
14/21

火蓋の向こうへ

「敵部隊、総勢約50名。装備は旧式マズルローダーをベースにした改造銃、手製の爆発物、旧陸軍式の白兵訓練を受けた者も複数確認されています」


 報告書を読み上げるのは、陸上自衛隊高等工科学校の生徒、三年の沢渡 さわたり・りく


 その報告を聞く紫陽高校防衛部部長・カイは、目を細めた。


「民間有志連合って聞いてたけど……ただの素人集団じゃないな」


「いえ、彼らは意図的に“元・黒影”を吸収しています。つまり、再起を図る暴徒と見て差し支えないでしょう」


 場所は風凪商業高校の図書館を改装した臨時戦略本部。

 地元の警察は“高校間の演習”という理由で介入を拒否したため、自衛隊高工校と紫陽高校が共同で防衛線を構築することになった。



 午後3時。作戦開始3時間前。


 紫陽高校の福田が、鉄製の盾を磨きながらぼやいた。


「まさかさ……自衛隊と肩並べる日が来るとはな。俺ら、ただの火縄マニアの集団だったのに」


 「火縄マニアでも、やる時はやるって見せてやれ」


 マナがライフリング入りのミニ火縄銃を抱えて言う。

 彼女の顔には不安よりも覚悟が滲んでいた。


 カイは、自衛隊側の沢渡と地図を囲んでいた。


 「正面から撃ち合えば向こうが上。こっちは地形を使って時間を稼ぐしかない」


 沢渡が頷く。


 「了解。高工校は正面突破阻止、紫陽高校には左右の斜面での撹乱をお願いします」


 「一つ、条件がある」


 「?」


 「絶対に“殺すな”。防衛部として、それだけは譲れない」


 沢渡の目がわずかに見開かれる。


 だが、すぐに頷いた。


 「……承知しました。軍人ではなく、“高校生”として行動します」



 午後6時。夕陽が沈む。


 風凪商業の正門から500メートル手前、木々の間に影がうごめく。


 「……来たな」


 沢渡が手信号を送ると、20名の高工校生徒が静かに銃を構えた。


 銃口に火縄を装填し、火打石を鳴らす。


 カイたち紫陽高校は、右手の尾根に布陣。

 福田とマナはそれぞれ5名の部員を率い、側面攻撃のタイミングを見計らっていた。



 突如、山の奥で破裂音が響く。


 「前方、敵の奇襲! 投擲火薬!」


 風が唸り、木々が揺れる。煙の中から現れたのは、ガスマスクを付けた民間武装の一団。


 その先頭にいたのは、かつて黒影工業の“切り込み隊長”だった赤嶺 鬼一郎あかみね・きいちろう


 「行けぇぇえぇっ! 高工も紫陽も、まとめて踏み潰せ!!」



 しかしその直後。


 ——ゴンッ! バチバチッ!!


 高工校の火縄斉射が、正確に敵の足元を撃ち抜く。


 煙と土埃に包まれた中、赤嶺が絶叫する。


 「殺せぇぇぇっ!! 俺たちは“戦争”してんだよッ!!」



 その瞬間、右手の尾根で閃光弾が炸裂。


 「今だ!」


 マナの号令と同時に、紫陽高校の火縄銃隊が両側面からの斉射を開始。


 鉄丸弾は木々を貫き、暴徒の陣形を乱す。


 カイは前方の指揮台から叫んだ。


 「ここは高校だ! ここでお前らの戦争ごっこは終わりだ!」



 挟撃された暴徒は次々に銃を捨てて逃げ出し、残った者も制圧された。


 赤嶺は抵抗しようとするが、沢渡の制圧斥候に銃床で叩き伏せられる。


 「反撃しない者には手を出すな! 制圧だけでいい!」


 その声に応え、高工校も紫陽高校も、一人も殺さなかった。



 午後7時、防衛完了。


 風凪商業高校は無事だった。



 帰りのバスの中、カイはぼんやりと夕闇を見つめていた。


 「結局、俺たちも戦った。軍と一緒に……」


 マナが肩を預けながら呟いた。


 「でも、私たちは人を殺さなかった。あれが“防衛”だよ」


 福田が帽子を目深にかぶりながら笑った。


 「火縄マニア万歳、だな……」



 そして翌朝。


 SNS「撃連」のトップには、ある画像が貼られていた。


 高工校と紫陽高校、肩を並べて立つ写真。


 その下に、短い一文が添えられていた。


 >「火蓋は、守るために切る。」

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