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火蓋を切れ!-高校防衛戦線-  作者: 電脳太郎
13/21

制服と鉄槍

 ――午後零時二分。


 黒影工業高校・第一防衛線、崩壊。


 最前列の柵が、正確無比な火縄銃の斉射で砕かれた。


 自衛隊高等工科学校(以下、高工校)の進撃は、止まらない。

 火線を浴びながら、彼らは歩く。いや、潰すために“歩く”ことを選んでいる。


 敵の銃撃が散発的に走るたび、二名の斥候が横へと散り、遮蔽物に身を滑らせ、銃身を逆手に握って殴打する。

 倒れた黒影の生徒は悲鳴を上げ、火縄銃を蹴り飛ばされる。だが、殺されない。


 殺されないが、勝ち目はない。



 遠くの斜面から双眼鏡で戦況を見守っていたのは、紫陽高校防衛部のカイだった。


 「……これが、自衛隊かよ」


 呆れにも似た声で呟くと、隣のマナが低く言った。


 「違う。あれは“高校生”だよ。制服着てる。けど――」


 「……動きが、完全に軍隊」


 彼らの姿には、どこにも“演習”の余白がなかった。

 一人一人の足運び、銃の保持角度、突撃の間合い……すべてが訓練され尽くしていた。



 黒影本陣、廃校舎二階。


 生徒会長・月影蓮つきかげ れんは、窓際から射撃の様子を見下ろしていた。


「まだいける……銃床で潰されるくらいなら、こっちもやるしかない!」


 叫んだ副将に、蓮は首を振った。


「もう……あれは“戦闘”じゃない」


「は?」


「俺たちは“戦術”で勝ってきた。でも、あれは……“軍事”だ」


 振り返る蓮の顔には、怒りも焦りもなかった。

 あるのは、諦観だけだった。



 廊下で火縄の炎がはじける音。

 二階に突入してきたのは、三名の高工校制圧班。


 マスクとゴーグル、防弾ベスト。そして手にはスリングショット型火薬射出銃――非致死制圧兵器。


「黒影工業高校、生徒代表・月影蓮。演習規則第七条に基づき、拘束する」


 銃を向けられ、蓮は両手を上げた。


 「わかった。俺たちは、負けた」



 その瞬間、演習地の全域に電子ホイッスルの音が響いた。


「12時14分。全戦闘行動終了。高工校、制圧任務完了」



 紫陽高校の斜面。カイは双眼鏡を下ろした。


 「……たった14分で、90人が、あの黒影を……」


 マナが頷いた。


 「これが、“軍”のやり方」


 福田が小さく呟いた。


 「俺たち……今まで何をやってたんだろうな」



 懲罰演習から三日後。

 黒影工業高校の防衛部は、活動停止。生徒会も解散。


 全国の防衛部員たちは、動画で公開された**“制圧戦映像”**を繰り返し再生した。


 再生数は三日で1200万回。

 コメント欄は凍りついていた。


 《軍人じゃねーか》《高校生が持つ火縄銃じゃねぇ》《これが戦列歩兵ってやつ?》



 一方、紫陽高校防衛部では、部室で緊急会議が開かれていた。


 カイが、真剣な表情で口を開いた。


 「このままだと、俺たちの“高校防衛”が、全部“軍事”に飲まれる。

  あの戦い方が“正義”になったら、暴力の形が変わるだけだ」


 「でも、正義じゃなかったら?」


 マナが静かに問う。


 「黒影は止めるべきだった。自衛隊以外に止められた?」


 「それは……」



 誰も、答えられなかった。



 だがその時、ドアが開き、一人の生徒が息を切らして飛び込んできた。


 「やべえニュース! ついに次の“懲罰対象”が決まったってさ!」


 「え? また……誰が?」


 「俺たちの隣県の“風凪かざなぎ商業高校”だって!

  しかも今回、高工校じゃなくて……“民間の有志連合”が出る”らしい!」


 部室内が凍りつく。


 「……懲罰を、民間で……?」


 「そいつらの中に、“元・黒影”の残党が混じってるって噂もある……」

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